旧エクリプス(ゼロの使い魔編)
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第31話 伝説
ブリミル暦6242年 フェオの月 フレイヤの週 マンの曜日
皇紀2800年 4月 4日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院
Side ジャン・コルベール
ミスタ・コルベールは先日の夜から図書館にこもりっきりになって、調べ物をしていた。ルイズが召喚した青年の左手に現れたルーンことが気になって仕方がないのである。
コルベールがいるのは、図書館の中の一区画、教師のみが閲覧を許されるフェニアのライブラリーの中であった。
「これは・・・。」
コルベールは本を抱えると、学院長室に向かって、走り出していた。
Sideout
Side オールド・オスマン
学院長室は、本塔の最上階にある。トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマンは、退屈を持て余していた。
机の引き出しより、水ギセルを取り出し、吸い始めていた。
すると、部屋の片隅で秘書の仕事をしていた、ミス・ロングビルが羽ペンを振った。水ギセルが宙を飛び、ロングビルの手元に引き寄せられた。
「年寄りの楽しみを取り上げて、楽しいかね?ミス・・・。」
「オールド・オスマン。あなたの健康を管理するのも、私くしの仕事なのですわ。」
オスマンは椅子から立ち上がるとロングビルに近づいて、後ろに立った。
「オールド・オスマン。」
「なんじゃ?ミス・・・。」
「暇だからといって、私くしのお尻を撫でるのはやめてください。」
「あ〜ひれ、はれ。」
「都合が悪くなると、ボケた振りをするのもやめてください。」
「真実はどこにあるんじゃろうか?考えたことはあるかね?ミス・・・。」
「少なくとも、私くしのスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください。」
「気を許せる友達はお前だけじゃ。モートソグニル。」
ハツカネズミはオスマンの肩によじ登り、ナッツを貰い齧っている。
「ちゅうちゅう。」
「そうか、白か。純白か。うむ。しかし、ミス・ロングビルは黒に限る。そう思わんかね。可愛いモートソグニルや。」
ロングビルは足を閉じて、スカートの裾を押さえた。
「オールド・オスマン。今度やったら、王室に報告します。」
そこへコルベールが飛び込んてきた。
「たた、大変です!」
「大変なことなど、あるものか。全ては小事じゃ。」
「ここ、これを見てください!」
「これは "始祖ブリミルの使い魔たち" ではないか。もしかして、ミス・ルイズの使い魔を調べておったのか?先日、本人が来て研究室建設の許可を貰いに来ておってな。その時にガンダールヴだと言っておった。」
コルベールはショックを受ける。徹夜してまで、調べた結果が全く無意味だった。それでも残る気力を振り絞った。
「おぅ、王室に報告しなければ・・・。」
「いらんよ。ミス・ルイズがガンダールヴを召喚するであろうことは、王室とラ・ヴァリエール公爵は知っておるよ。魔法学院にもミス・ルイズが入学する時に通達があった。ガンダールヴを召喚しても内密に処理するようにと。」
コルベールは膝から崩れ落ち、四つん這いになった。
視線はさまよっており、茫然自失の状態である。
「コッパゲルくん。」
オスマンがコルベールを呼んだ。しかも名前を間違っているが、コルベールは返答も出来ないでいた。
Sideout
Side 司・一条
司は食堂で、食事をしていた。勿論、ルイズ達と一緒である。
魔法学院のメイドのシエスタが、銀のトレイにケーキを乗せ、一つずつ貴族達に配っていく。
「なあ、ギーシュ!お前、今は誰と付き合っているんだよ!」
金色の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た、気障なメイジがいた。薔薇をシャツのポケットに挿している。周りの友人が、口々に彼を冷やかしている。
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
「付き合う?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」
その時にギーシュのポケットからガラスの小瓶が落ちた。
司は決闘イベントを知っているので、しょうがなく立ち上がり、ギーシュに声を掛けようとした。
「ポケットから小瓶が落ちましたよ。」
しかし、司が声を掛ける前に、シエスタが声を掛けてしまった。
そして、小瓶を拾うとテーブルの上に置いた。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
その小瓶の出所に気づいたギーシュの友人達が、大声で騒ぎ始めた。
「おぉ?その香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないか?」
「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
それでもギーシュは、弁明を続ける。
「ギーシュさま・・・。やはり、ミス・モンモランシーと・・・。」
ギーシュはケティと呼ばれる少女に言い訳をするが、思いっきり頬をひっぱたいて、捨て台詞を残して去っていった。
すると、遠くの席から一人の見事な巻き髪の女の子が立ち上がって、ギーシュの席までやってきた。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
「モンモランシー、誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで・・・。」
モンモランシーは、テーブルに置かれたワインの瓶を掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけた。
「嘘つき!」
と怒鳴って去っていった。
「あのレディ達は、薔薇の存在の意味を理解していないようだ。」
ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。そして、首を振りながら芝居がかった仕草で答えた。
シエスタはその場から離れようと歩きだした。
「待ちたまえ!君が軽率に、香水の瓶なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
ここで司が割って入った。
「どうもこうも、ミスタ・グラモンが悪い。ようは二股がばれて、メイドに責任転嫁しているだけだろう。」
「メイドをかばいだてするのなら決闘だ。ミス・ルイズの使い魔とて容赦はしない。」
「それでは魔法訓練場にて、決闘しよう。おれもメイジだからな。」
二人は魔法訓練場に赴いた。
訓練場には防護の魔法が掛けてあり、大きな怪我を負わないように出来ている。ここでは実戦形式の訓練が可能である。
訓練場には噂を聞きつけた生徒で溢れかえっていた。
「諸君!決闘だ!」
ギーシュが薔薇の造花を掲げた。うおーっ!と歓声が巻き起こる。
「さてと、始めるとしよう。」
司は至って冷静であった。
「僕の二つ名は青銅。青銅のギーシュだ。」
「俺は司・一条だ。何処からでも掛かってきたまえ。」
司はデルフリンガーのインテリジェントデバイスを掴むと、日本刀モードで起動した。
司は日本刀を左手で抜く。そうすると、左手に刻まれたルーン文字が光りだした。
「それではいくよ!」
ギーシュが薔薇を振った。花びらが宙を舞ったかと思うと、甲冑を着た女戦士のゴーレムが6体現れた。
「ワルキューレかかれ!」
6体のゴーレムが一斉に司に襲いかかる。
司が一閃刀を振り抜いた。
金属音もしないままに、ナイフでチーズを切るように、6体のゴーレムが上半身と下半身が別れて、崩れ落ちた。
ギーシュが気がついた時には、司の刀が首筋に当てられていた。
「勝負あったな。」
「参った。」
ギーシュは手を挙げて、降参した。
司はデルフリンガーのモードを解除して、ルイズ達の方へ歩いていった。
「流石です。司お兄さん。」
ルイズが声をかける。
「お兄ちゃん。手をぬいたでしょう。」
妹の夢が声をかける。
「あぁ、ガンダールヴの力も、身体強化魔法も使わなかった。ジジィめ、デルフリンガーを相当強化している。まるで斬鉄剣のようだ。これなら青銅どころか、鋼鉄でも簡単に切れる。」
Sideout
オスマンとコルベールは、遠見の鏡で見ていたが、一瞬でゴーレムを切り裂いたのは、ガンダールヴの力と誤解していた。
後書き
伝説の話でした。
司達兄弟は虚無も四大系統の魔法もデバイスなしでも使えます。
しかし、四大系統の火・水・土・風は、物理学に即していない為、非効率であまり使いません。
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