美しき異形達
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第二十五話 幻と現実その十五
「少なくとも私はこの霧の中にいるけれどね」
「それはわかる」
「わかっていてもよね」
「探してみせる」
これが怪人の返事だった。
「そして貴様を倒す」
「そういうことね」
菫は霧の中で言った、そうして。
そのまま霧の中に気配を消した、その彼女に。
怪人はだ、気を必死に探った。気は増えておりしかもそれぞれが動いていた。だがその中でだった。怪人は。
後ろから来る気にとりわけ強いものを感じた、そしてだった。
その気にだ、身体を全て反転させてそのうえで触手を集中させて攻撃を仕掛けた、毒即ち電流もここぞとばかり放った。
感覚があった、確かに捉え。
攻撃を仕掛けた、しかし。
その攻撃を仕掛けた場所の気はだ、消えていた。
そして攻撃を仕掛け背を向けていると。
そこにだ、一撃が来た。その一撃が。
薙刀のそれだった、それでだった。
怪人は致命傷を受けた、菫の星の符号が紫の色で出て。
そして倒されてだ、菫はその怪人を見て言った。
「やったわね」
「抜かったか」
「言ったでしょ、私の力はね」
「ただ目だけに仕掛けるものではないのだったな」
「そう、他の感覚にもね」
「第六感までにもだな」
「仕掛けるものなのよ」
即ち幻を見せるというのだ、第六感にまで。
「そうなったのよ」
「最初は視覚だけだったな」
目だけに仕掛ける、普通の幻だったと指摘する怪人だった。
「そうだったな」
「それをね」
「強くなりか」
「変えたのよ」
六感全てに仕掛けるものに、というのだ。
「だから貴方もね」
「惑わされそうしてだな」
「敗れたのよ」
「見事な一撃だった」
まずはだ、怪人は菫の薙刀のそれを褒めた。
「俺を一撃で倒しただけはある」
「薙刀の修行も怠っていないわよ」
「そしてだ」
ここでさらに言うのだった。
「その力がだ」
「幻のこれがよね」
「それ以上に見事だった」
「そう言ってくれるのね」
「事実だからな、ではだ」
ここまで話すとだ、怪人の身体は。
これまでの怪人達彼の同胞がそうであった様にその身体の端から灰にしていってだ、そうして徐々にだった。
その姿を灰として消した、後に残ったのは菫と菖蒲だけだった。
霧はもう完全に晴れていた、二人は列車の屋根の上に立っていた。菖蒲はその中で菫に対して言った。
「お見事だったわ」
「有り難う」
「菫ちゃんの力も強くなってるわね」
「六感全てに仕掛けるものになってるからね」
「それはかなり大きな武器よ」
「目に仕掛けるだけじゃないからね」
「目は確かに重要よ」
その六感の中でもだ。
「誰もがまず見ようとするから」
「生きているのならね」
見えている状況ならばだ、これは本能でするものだ。
しかしだ、それがというのだ。
「けれどね、目だけではないわ」
「あいつが、怪人が言ってたよね」
「他の五感もあるわ」
第六感を含めてだ。
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