魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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無印編
共同戦線
前書き
いつの間にか週間ランキングで15位、日間ランキングで14位になっていてびっくりしました!!
子供たちを送り届けた後、クロノとエイミィは観測室でなのはとフェイトの戦闘の解析を行っていた。
「凄いやー!!どっちもAAAクラスの魔導師だよ!!」
「ああ・・・」
「こっちの白い服の女の子はクロノ君の好みっぽい可愛い女の子だし・・・」
「エイミィ!!そんなことはどうでもいいんだよ!!」
「魔力の平均値を見ても、白い娘の方で127万、黒い娘で143万。最大発揮値はその3倍以上。クロノ君より魔力だけなら上回っちゃってるね!!」
「魔法は魔力値の大きさだけじゃない。状況に合わせた応用力と、的確な判断力だろう」
「それはもちろん。信頼してるよ。アースラの切り札だもん、クロノ君は」
二人が話していると、扉が開き、リンディと剛がやってきた。
「あ。艦長、警部」
「あら?二人のデータね」
「ほう?さすがは次元世界最大の司法組織。なかなかの設備だな」
二人の視線がモニターに映し出された二人の少女に向けられた。
「それにしても、凄い才能ね」
「はい。なのはちゃんは将来有望ですね」
「そうかね?」
肯定的な意見の中、剛が疑問を投げかけた。
「何か問題でも?」
「彼女の保有する魔力量、魔法を扱う才能は確かに凄いものだ。しかし、彼女のそのセンスがあまりにも戦闘に傾きすぎている。生まれついての戦士だ。さすがは士郎殿の娘だと言えばそれまでだが・・・」
「確かに、魔法を知って短時間でこれほどの魔法戦闘ができるようになったセンスは凄いが、何が問題なんだ?」
「あまりにも戦闘に特化しすぎている。このまま、あの少女が成長し、戦いしかできない人間になってほしくないと言う、単なる親心だよ」
「ああ、そういうことですか」
なのはたちの話がひとまず落ち着き、今後の捜査について話し出す彼ら。
「そう言えば、ふと思ったのだが・・・」
「どうしたんです?」
ふと、剛がクロノに質問した。
「クロノ執務官。君はなぜ執務官に?」
「どういうことです?」
「執務官は狭き門だと聞く。10歳にも満たぬ君がそれを目指したのには確固たる目標があったんじゃないかと思ってね」
「僕は14歳だ!!」
「・・・・・・・え?」
珍しく、剛が呆けていた。
クロノの後ろでリンディとエイミィが必死に笑いを堪えているのは愛嬌だろう。
「そ、そうか。すまなかったな」
「まあ。良く勘違いされるからいいのですが・・・・そうですね、きっかけは、11年前の父の死です。父が死んで以来、ただ我武者羅にその背中を追いかけて、気が付いたら執務官になっていたってところですかね」
「立派な父だったろね」
「僕の誇りです・・・・・・・そういう貴方は、なぜ警察官に?」
今度はクロノが聞き返す。
「私は君の様な高尚な理由などない。強いて理由を上げるなら、警察でしか雇ってくれなかっただけだ」
「「「?」」」
意外な事実に、一同は首を傾げた。
「少し昔話をしよう。私の実家である守宮家は昔から優秀な結界魔導師が生まれる名門でな、その筋では有名な一族だったんだ」
「結界魔導師の名門ですか?」
エイミィが聞き返す。
結界魔導師の名門と言う言葉にピンと来なかったようである。
次元世界は簡単な封鎖結界以外に結界魔法はそう種類がなく、管理局でも戦闘補助員に数名いればいい程度なので、そんなに重宝されない為である。
「まあな。その中でも、私は宗家の嫡子、つまりは跡取り息子として生まれたんだ」
「え?でも、貴方には・・・」
「そう。私は宗家の人間でありながらリンカーコアを持たない。そのため私は『出来損ない』の烙印を押された。そのため、今でも実家とは疎遠でね」
「警察として立派に働いていてもですか?」
「この世界の魔導師の一族、特に古くからの名家は秘密主義の傾向が顕著だ。一族の魔法の技術と知識を門外不出の秘伝として守ってきた。だから、名家の魔導師は、家柄ごとに極めた魔法の系統が大きく異なる。要するに特化型が多いんだ。だから、その跡取りに求められるのは、その一族が追及した魔導を受け継ぎ、次代に残すこと。それができない時点で私は『出来損ない』なのさ。まあ、歴史の浅い名家でないところはそのような傾向もないのだがね」
「そんな・・・・」
「だが、一族のトップが必ずしもすぐれた術者である必要はない。頭首に求められる素養は一族をまとめるカリスマ性と他の組織との交渉能力だからね。私の父は私に一族内での居場所を与えるために、私を幼いころから厳しく育てた。立派な頭首になるようにね。一族の中には当然、不満たらたらの人間も当然いたが、頭首の決定に渋々従っていると言った感じだったな。もちろん、陰口は絶えなかったが」
「ちょっと待ってください。さっき実家とは疎遠って言ってませんでした?」
「そうだ。一人の人間の登場によって父の目論見は無意味になった・・・・・それが私の妹だ」
「妹?」
「次期守宮家当主守宮禊。私の祖父が妾に産ませた子の娘で、実際にはハトコぐらい離れているかな?彼女の両親の死が切っ掛けになって、彼女の存在が一族に知られ、引き取られた。そして、彼女の才能は一族内でも群を抜いてトップクラスだった。そうなれば、今まで渋々従っていた連中も黙っていなかった。ある日、私は彼女を祭り上げようとする一族の人間の手によって殺されかけた。そして、父は私を守るために、私を亡き母の親友に預けた・・・・これが、今でも疎遠の理由だよ」
「それからどうして警察に?自分を殺し損ねた人たちを逮捕するため?」
「彼らはすでに父によって粛清された。私が警察を目指した理由は、妹さ」
「え?」
予想外の理由に言葉を失うリンディ。
「私は家を出る前に妹と約束したのだ。『どこにいても、兄が必ずお前を助けに行く』とね」
「妹さんを恨んではいなかったのですか?」
「全く。彼女は紛れもない私の家族だ。何を恨むことがある?」
「そうですね。愚問でした」
「その約束を果たすために、私は魔法業界に関わり続けなければならなかった。だから、私は魔法業界に関わる組織に就職した。この世界の魔法組織は主に3つの種類に分類される。一つは魔導師の仕事の斡旋をする魔法組合、一つは非営利団体の魔法協会、最後の一つは国家機関の魔法共団だ。だが、大半の魔法が科学技術で代用できるこの時代、それでも、なお魔導師の需要があるのは、結界や封印などと言った、まだ魔法でしか成しえることができないことがあるためだ。要するに、魔導師とは専門職なのだよ。だから、そもそもリンカーコアすら持たない私は組合では門前払い、だから共団の、それも警察くらいでしか雇ってくれなかったのだよ。戦闘行為は最も科学技術で代用できるものの代名詞だからね」
その言葉に一同は納得できなかった。
質量兵器が禁止され、『安全でクリーンな技術』である魔法が中心の世界に生きてきた彼らにとって、『戦闘は魔導師でなければならない』と言う認識が強いためである。
高い資質をもつ魔導師なら未成年でも積極的にスカウトする彼らには、『魔法が使えないから警察(つまり彼らにとっての管理局)しか雇ってくれない』と言う状況そのものが理解できないのだ。
「ふむ。これが文化の違いと言うやつか?納得できないと言った表情だな?」
「ええ・・・・まあ・・・」
「まあ、私はユーノくんからミッドの歴史はある程度教えてもらったから君たちの心情は理解しているつもりだが、君たちはそうでもないみたいだね」
「歴史ですか?」
「文化の違いを理解する近道は歴史を知ることだ。いいだろう、この世界の魔法の歴史をサラッと教えてあげよう」
「お願いします。私たちにはその手の知識が不足しているようなので・・・」
そして、剛は説明を始める。
「古の時代、まだ魔法でしか成しえぬことの方が大多数の時代では、魔法は多大な恩恵をもたらした。そして、魔導師はその技術と知識で王族などと言った時の権力者に取り入ることで繁栄していったのだ」
「魔導師自らがトップになることはなかったの?」
「あっただろうが、恐らくその大多数は滅びているだろう」
「どうしてですか?」
「どんな名君が治めている国であろうと200~300年も経てば、自然と滅び、新しい国に生まれ変わる。では、そうなると以前の国の王たちはどうなると思う?」
「どうなるのですか?」
「いつの時代も同じ、一族郎党すべて皆殺しさ」
「「「!?」」」
「歴史的に見ればよくあることさ。逆に建国から2000年もの間、過去の王族が生き残り続けている国なんて日本くらいさ。噂では天皇家には神代の頃より秘伝される大魔法があるらしいが、今はどうでもいいな。今でも生き残っている名家はそうやって矢面に立たずに甘い汁をすすり続け、宿り木が滅べば、別の国に移動し、また同じようにその国の王族に取り入って繁栄し続ける。さっき、今と昔では魔法を秘匿する理由が違うと言ったが、昔の理由はまさにこれ、『知識の占有』だ。一族にとって、魔法の知識は一族の象徴であり莫大な価値を誇る知的財産なのだからな」
「へぇー」
エイミィが感心したように頷いた。
「だが、科学の台頭により、魔法の絶対性が崩れると、多くの名家が衰退の道を辿って行った。そうすれば、今までのように一族だけでその存続を維持することは難しくなっていった。故に、今までの秘密主義から徐々に時代に適合した形に変わっていったのさ」
「時代に適合?」
「例えば、組合もその一つだ。一族だけでその存続を維持するのではなく、外部の人間も招き入れて、仕事を斡旋し、その収益で繁栄する。現在の組合の中で規模の大きなものとなると、大抵が母体となった名家が存在し、その一族の頭首が組合のトップとなるのが習わしとなっている」
「と言うことは、守宮家も?」
「ああ。『封杖院』と呼ばれる組合を経営している。日本の三大組合の一つで封印や結界を得意とする魔導師が多く集まっている。さっき言った通り、古くからの名家は特化型が多いから、それが母体となった組合は所属する魔導師の得意分野が偏っていることが多い」
「組合毎の個性が強いってこと?」
「そうとも言えるな。それに、変わったのは名家だけではない。魔法社会も大きく変化した」
「どんな風に?」
「それまで、魔法を学ぶには親から子へ、師から弟子へと言った形でしか継承されなかった。しかし、かつての名家の衰退や情報技術の発達によって秘密を完全に保つことが難しくなり、素人魔導師が急増してきたため、『徹底した秘匿』から『学ぶ意志のある者同士での共有』と言った形に変わっていった。今では魔法を教える学校もあるくらいだ」
「魔法学校ですか?」
「そうだ。しかし、今現在の魔法は必要不可欠な技術ではないから、ほとんど『伝統芸能』に近い感覚で学んでいるものが多い。要するに、彼らは『衰退していく技術』を世に残していく為にそれを学んでいる。君たちの認識では魔導師が戦闘職に近い感じなんだろうが、あいにくこの世界では戦闘ができる魔導師などハッキリ言ってそんなに多くない。それと、ついでに言っておくが、魔法の知識が共有され始めた現在でも、名家の秘密主義はまだ強く残っているため、ある程度一族の魔法が公表されても、その秘奥中の秘奥は決して明かさない。だから、魔法業界では相手の魔法の秘密を無理に探ることはマナー違反とされているので注意してくれ」
一通り説明し終えたところで、ちょうどいい時間になってしまい龍一を待たせている剛はそのまま帰ってしまった。
翌日、アースラにユーノから通信で管理局に協力したいと言う旨の通信が入ってきた。
どうやら、なのはの両親は許可したようである。
これはある意味彼女の家庭環境に問題がある。
高町家は『自分で決めたことに責任を持って行うのであれば、基本的には干渉しない』と言ったいい意味での放任主義であった。
また、彼女は過去に、士郎の怪我や店の経営の問題によって長期間一人ぼっちで放置されていたことがあり、家族に迷惑を掛けないように『良い子』を務め続けた結果、我儘を言えない子供になってしまった。そのなのはが初めて口にした『我儘』に士郎たちが強く反発できなかったのも大きいだろう。
ユーノはなのはの魔力が有効な戦力になることを交渉材料にリンディと交渉し、リンディも『指示には絶対に従うこと』を条件に承諾した。
所変わって、艦長室ではリンディが頭を悩ませていた。
「はあ~~。まさかなのはさんの両親が許可するとはね」
「士郎殿の家は代々要人護衛を生業としてきた一族。これくらい大して危険ではないと無意識に感じているのかもしれないな」
リンディのつぶやきに、剛が答えた。
「だから、始めから封印処理を施してしまえばよいものを」
「それでは悔恨が残るだけです。私たちの目の届くところに置いておくのが一番だと判断しただけですよ。しかし、どうしましょう?彼女に何を協力させれば・・・」
「ふむ・・・・・・私にいい考えがあるのだが」
「本当ですか!?」
「ああ。こういうのではどうだろう?」
そして剛はリンディに計画を告げた。
果たしてその内容とはいかなるものであろうか?
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