エターナルトラベラー
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第八話
俺はゴーレムに放ったサンダースマッシャーで精神力を使い果たし、何とかその場からは逃れた物の、写輪眼の反動ですでに限界。
この事件の詳細は俺はこれ以上知る事は出来なかった。
何故なら俺はあの後気を失って丸一日寝ていたのだから。
ソラはそんな俺の側で看病していてくれた。
俺が目を覚ました時には既にタバサ達は出発していて後を追いかけることも出来なかった。
だから俺はアルビオンで何があったのかは知らない。
ウェールズは原作通り死んだのか、それともあのオリ主やろうが生かして匿ったりしているのかも…
タバサ達を見失った俺達は、一足先に学院へと戻る事にした。
アルビオンに出向いた所で地理に詳しくない以上合流できる確率は殆どないからね。
その後、誰一人欠けることなく学院に戻ってきた様子に俺は心底ほっとしたものだ。
だって今回も些細な事象の変化で今度はタバサ達が命の危機に陥ったのだから…
ホント勘弁してください…
こうして姫殿下からもたらされた騒動は一応の解決をえたのだった。
アルビオンがクロムウェルの手に落ち、本格的にアンリエッタ姫殿下とゲルマニア皇帝との婚儀が締結されるようだ。
最近、学院に戻ってきたルイズの手に古びた装丁の本を開いている様子をうかがうことが多くなってきた。
どうやらアンリエッタの婚儀で使う詔を考えているらしい。
つまるところ、あの本が始祖の祈祷書。
更に数日が経つとルイズはサイトを自室から追い出してしまった。
どうやら本格的に喧嘩してしまったようだ。
ルイズをたしなめるマルクスをよく見かけるが、どうにも聞き入れてくれては居ないらしい。
サイトはヴェストリの広場の片隅でテント生活を送っている。
それを見かねたキュルケがサイトを誘い宝探しに出かけていった。
マルクスも一緒について行ったようだが、今回は俺は知らん。
マルクスもゼロ戦を持ち帰ってくるつもりだろうからそうそう原作の改変などはおこなわないだろう。
シエスタの祖父の墓石の文字を読んだりはしてそうだが…
更に数日が過ぎるとなにやら学院が騒がしい。
確かめてみると、どうやらサイトたちは無事にゼロ戦を手に入れたようだ。
しかもここまでのゼロ戦を運んできた竜騎士達への運賃は、領地経営でかなり儲かっているマルクスが立て替えている。
太っ腹な事で。
学院に運び入れたゼロ戦はコルベール先生の研究室と言う名の掘っ立て小屋へと収納される。
コルベール先生の知的好奇心で興奮するさまはドクターを思い出される。
そう言えば最近会っていないな。
しばらく距離を置いていた事が幸いしたのか、ルイズとサイトはようやく仲直りしたようだ。
雨降って地固まるってやつだ。
コルベール先生の研究室の側で俺は猫になり聞き耳を立てていると、ようやくガソリンが完成したらしいという声が聞こえてきた。
そしてそのガソリンを使い一度エンジンをかけてみる事に成功。
しかしガソリンの量が絶対的に足らず、直ぐにエンスト。
最低、樽で5本はいるとコルベールに告げるサイト。
「そんなに作らねばならんのかね!まあ乗りかかった船だ!やろうじゃないか」
と、息巻くコルベール。
「僕も手伝いますよ」
なぜかサイトと共にコルベール先生の研究室に入り浸っていたマルクスが協力を申し出ていた。
「おお、四極のマルクスが手伝ってくれるなら心強い。錬金はやはり土メイジの専売特許だからね、火の私では少々辛いところだ」
「任せてください」
確かにチート能力なマルクスならすぐさま樽五本くらいなら錬金できるだろうよ。
精神力もルイズには及ばないが、俺の何倍もあるしね。
その後研究室に乱入したルイズにサイトはその場から引きづられて出て行ってしまった。
それから数日、ついにアルビオンからの宣戦布告の報告が、この魔法学院にも入ってきた。
その報告は学院長あてであり、一般学生には未だ情報は漏れては居ないが、偶然学院長室の前で聞き耳を立てていたサイトたちの耳に入り、いきりたってサイトはゼロ戦を起動して飛び立とうとしているのが見える。
「アオ?あの飛行機飛ばす気なのかな?」
中庭が慌しくなってきた様子にソラが問いかけてくる。
「アルビオン軍が攻めてきたんだ」
「戦争?」
マルクスは今回は裏方に回ったようだ。
ゼロ戦が離陸するために必要な滑走路を錬金の魔法で作り出していた。
「ああ、だけど直ぐに今来ている分の軍隊はけりがつく」
「そうなの?」
「ああ、ペンタゴンの失われた一角が蘇る」
「虚無?」
「ああ」
そんな話をソラとしているとゼロ戦を駆って上空へと飛んでいくサイト達。
「今回は後をつけないの?」
「ゼロ戦の速度には追いつけないよ」
「そうだね」
「でも一応見に行ってみる」
「わかった」
そう言って俺達はドラゴンに変身して空を駆けた。
タルブの町が視界の奥に見えてくる。
その時、視界の先で目が焼けるような光の球が爆発した。
「あれって…」
「虚無だね」
初めて見るその威力に俺は驚愕した。
アルビオン軍の船が次々と落ちていく。
あの閃光の一撃で勝敗は決したようだ。
それを確認して俺はソラに告げる。
「帰ろうか」
「うん」
アルビオンとの初戦に勝利を収めたトリステインは、アンリエッタのゲルマリア皇帝との婚約を破棄、今やアンリエッタはトリステインの女王だ。
最近メイドのシエスタが今までにまして積極的にサイトにアプローチを掛けているのを見かける。
この前の戦でゼロ戦を駆り、タルブの窮地を救った事でかなり好感度が上がったようだ。
更に数日過ぎるとルイズの態度が豹変した。
サイトにべったりして自己すら保てない様子。
惚れ薬を飲んだな…
更に数日、どうやらサイト達はラグドリアン湖へと出かけたようだ。
惚れ薬の解除薬に必須な水の精霊の涙を取りにいったのだろう。
例のごとくマルクスも一緒だ。
今回は俺達もこっそりと後をつける。
いつものようにドラゴンに変身して後をつけていると森の中にキラキラ光る鏡のような物が幾つも反射しているのを発見した。
「ん?」
「アオ?」
「何でもないよ、ソラ」
後で気づいた事だが、あれは世界の綻びだったのだろう。
その後様子を見るに、原作とほぼ変わらずサイトが水の精霊の願いを叶える代わりに水の精霊の涙を無事ゲットし、魔法学院へと帰っていった。
学院に戻り、惚れ薬を解除されたルイズは今までのことを覚えているのか、荒れに荒れていた。
その後は何事も無く、その日は就寝。
惚れ薬事件はこうして幕を下ろした。
しかし、実は原作ではアンリエッタの誘拐を阻止するイベントが発生しているはずだったのだ。
だが実際はそのイベントは起きなかった。
この事を後々後悔する事になる。
さて、明日から夏休みと言う事で、俺とソラも自領に帰る事にした。
トリスタニアに居る兄に顔を見せにいっても良いのだが、面倒だし、何より実は未だに紹介していないソラを会わせるのが面倒だったと言う事もある。
気になる点と言えば、ルイズ達がトリスタニアに向わず、ヴァリエール領へと帰る準備をしているところか。
マルクスの事は知らん。
しかし聞いた話ではミリアリア領の執政はすでにマルクスの采配で動いているらしい。
であるならこの夏休みは戻らないと自領が立ち行かないだろう。
そして今、俺達は久方ぶりにドクターのもとを尋ねている。
俺は小屋の扉を開け、中に入る。
何時ものように乱雑に散らかされた床の物を避けながらドクターを探すと部屋の奥でまた何かを研究しているドクターの姿を見つける。
「ドクター」
俺のその声にドクターは研究をやめ振り返る。
「あ、ああ君達か」
「お久しぶりですドクター」
と、ソラフィア。
「君達が魔法学院へと赴いてしまってからめっきり楽しみが減ってしまってな。思いのほかお主らとの語らいは楽しかったようだ」
ドクターがそんな柄にも無い言葉を発した。
「そんなことよりドクター、頼みがあるのですが」
「お主の頼み事は大抵無理難題な事が多いのだが、なんだね?」
「実は、例のアレ、出来てませんか?」
「アレか?まあ、出来てはいるのだが、弾の生成が困難な上に高価でな、1ダース造るのがやっとといった所だが、それでも必要か?」
「ああ。ちょっとこの前かなり腕の立つスクウェアクラスの魔法使い、それの本体では無く、偏在の1体と戦ったんだけど」
「それはまた…」
「それで、何とか勝つには勝てたんだけど、偏在相手に結局写輪眼とガンダールヴの併用でギリギリ。しかも最後は精神力切れで気絶。実質戦闘時間2分半…泣ける」
「はっはっは」
「笑い事じゃないんだけどね。だけど、これから先、またそんな相手と戦う機会があるかも知れないから…」
「杖のパワーアップを頼みたいと」
「うん」
「わかった、頼まれよう。しかし改造は直ぐに出来るが弾の生成には時間が掛かる。およそ2ヶ月、それも出来て1ダースが限界だからな」
二ヶ月かかって1ダースか…
まあ、最後の切り札が欲しいだけだし、十分か。
「それでいい」
「そうか、それで?改造はお主のソルだけで良いのか?」
「いや、ルナの方も頼みたい」
「ルナも?」
今まで会話に入ってこなかったソラがルナの事を話題に出され問いかけた。
「そ、切り札は持っておかないと」
「それじゃ先ずは杖の方の改造からだ、ほれ、ソルとルナをこっちによこせ」
ドクターに言われ俺とソラはソルと、ルナをドクターに手渡した。
「一週間ほど掛かるからな」
「わかった、とりあえず一週間後また来る」
此処での用件を済ませ、俺達はドクターの古屋を後にした。
ドラゴンに変身して飛び立つ。
杖無しでも使える変身能力…
最初は躊躇いもしていたが、ドラゴン等は空を飛べる。
ぶっちゃけかなり便利です。
俺達は久しぶりの空の散歩を楽しみつつ屋敷に戻るのだった。
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