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第四章
第四章
「気にしないでくれ」
「そうですか」
「では行こう」
姪をその見合いの場所に促す。
「相手も待っているからな」
「はい、それでは」
こうして向かう二人だった。そして和樹もだ。
彼もまた立派なスーツを着ている。そのスーツは。
「ベルサーチだな」
「はい」
部長に言われ頷く。彼の言うならば一張羅である。それを着て来たのだ。彼もまた見合いがどういう場所かわかっていたのである。
「これでいいですよね」
「上出来だ。よく似合っている」
部長もその彼を見て話した。
「見事なものだ」
「そうですか。それでは」
「行くとしよう。しかし」
「しかし?」
「その姿ならだ」
部長も社長と同じことを言うのであった。
「彼女も素直になるな」
「素直?」
社内きっての切れ者と言われる彼だ。その言葉に気付かない筈がない。すぐに部長に対して言ってきたのであった。やはり彼も鋭い。
「といいますと」
「何でもない。ただ」
「ただ?」
「行くとしよう」
こう言うのであった。
「それでは」
「はい、わかりました」
こうして二人で向かうのであった。和樹は和室に入った。畳の立派な部屋でそこに入れば木のかぐわしい香りがする。その香りの中を進み奥の部屋に入るとであった。
「あっ・・・・・・」
「えっ・・・・・・」
二人共唖然となった。そこにいたのは。
「社長、遅れてすいません」
「いや、いい」
社長もいた。そのうえで部長に言うのである。
「我々も今来たところだ」
「左様ですか」
「そしてだ」
部長は彼にさらに言ってきた。
「早速はじめるとしよう」
「そうですね。それでは」
こうして二人はそのまま見合うのだった。和樹は席に座る。部長もだ。日本のその台を挟んでそのうえで向かい合う。和樹は彼女の顔を見ていた。
そしてひとみも彼の顔をだ。無言で見ていた。
だが彼等は何も言わない。ただ見合うだけだ。そして社長と部長はお互いで少し話をしてだ。そのうえで二人に対して言うのであった。
「それではだ」
「我々はだ」
「えっ」
「どちらへ」
「邪魔者はこれで立ち去る」
「そうさせてもらう」
こう言って早速席を立つのであった。
「それではだ」
「これで」
「ですがそれは」
「あの、それは」
二人はその目に狼狽の色を見せる。二人だけにして欲しくない、そうした感情が明らかにさえなっていた。だからこその目であった。
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