サラリーマンの願い
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第二章
「後ビル=ゲイツとかな」
「冗談でも出来るか」
「そんなこと出来るかよ」
「何が夢は大きくだ」
「大き過ぎるっての」
「到底な」
「出来る訳ねえだろ」
「出来る願いな」
彼等が出来るそれはというと。
「個人のこと位だからな」
「一個のパンとか一杯のワインとか」
「昔はそういうの出して魂手に入れてたからな」
「そうしていたからな」
「とりあえずだよ」
ここで一人の悪魔が言った、曲がった角に蝙蝠の翼に先が三角になった尻尾と手に持っている大きなフォーク。典型的な下級悪魔の姿だ。
名前をリドルというこの悪魔がだ、仲間達にこう言った。
「適当なおっさんにな」
「声をかけてな」
「それでか」
「ああ、やってみるさ」
こう仲間達に言うのだった。
「しょぼくれたおっさんならな」
「俺達でも適えられる願いか」
「そうした願いを持ってるんだな」
「そうだろうからな」
だからだというのだ。
「ちょっとその辺りの適当なおっさんに声をかけてみるぜ」
「そうか、じゃあ俺達も御前のそれ見てな」
「それからどうするか決めるぜ」
「日本の誰に狙いを定めるのかな」
「それをな」
「そうするか、じゃあ俺は試しに行ってみるぜ」
日本のその辺りのおじさんにというのだ。
「そうするぜ」
「頑張れよ、じゃあな」
「見守ってるぜ」
他の悪魔達は彼に声をかけて送り出した、そしてだった。
リドルはとりあえず夜の街で日本の不良と彼が思ったコンビニの駐車場でたむろしている若者の格好になってだ、丁渡コンビニから出て来たよれよれのスーツを着た痩せて眼鏡をかけた中年の男に声をかけた。
痩せているのだが腹は出ていてしかも髪の毛のツヤはない。尚且つ何気に薄くなろうとしている、そして痩せた顔は俯き加減でしかも目の光は弱い。リドルから見ても何か不安を感じずにはいられない様子だ。
だがこの相手ならと思いだ、リドルはその彼、どう見ても一介のサラリーマンのところに向かって彼に声をかけた。
「おっさん、ちょっといいかい?」
「何ですか?」
サラリーマンは力のない声で応えてきた。
「一体」
「今さ、願いとかあるかい?」
悪魔であることを隠してざっくばらんにだ、リドルは彼に尋ねた。
「あったら俺に教えてくれるかい?」
「願いですか」
弱い声でだ、サラリーマンは彼に応えた。
「結構ありますが宜しいですか?」
「ああ、どんなのだよ」
「幾つかあるのですが」
「幾つあってもいいぜ、言ってくれよ」
幾つもあるのならその中に彼が契約で適えられるものもある、リドルは心の中でそう思ってにやりとなった。
それでだ、サラリーマンにさらに問うた。
「何でも聞かせてくれよ」
「はい、最近ですね」
「最近?」
「お給料が減りまして」
その暗い顔での言葉だ。
「一割程」
「一割か」
「それにです」
彼はリドルにさらに言った。
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