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アイドルでも女の子

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第三章

「流石に話は出てないから」
「半ズボンですね」
「DVDの撮影も兼ねてるから」
 写真集と一緒に出るそれもだ。
「しっかり動いてね」
「元気よくですね」
「美奈世ちゃんの明るく溌剌としたところ見せるから」
 その写真集やDVDでだ。
「宜しく頼むわよ」
「そうさせてもらいます」
「そういうことでね」
「はい、じゃあ」
「また明日ね」
 こうも言う妙子だった、そして実際にだ。
 美奈世は写真集の撮影でも明るかった、そしてそれが終わってからだ。
 すぐに学校に向かう、高校のことは忘れていなかった。
 その美奈世はある日だ、歌番組の収録の前に楽屋で漫画を読みながらうっとりとした顔になって妙子にこんなことを言ったのだった。
「いいですよね」
「いいって何が?」
「はい、今私ベルサイユのばら読んでますけれど」
「また随分懐かしい漫画読んでるわね」
 ベルサイユのばらと聞いてだ、まずはこう返した妙子だった、妙子はメモを見て美奈世のこれからの仕事の予定をチェックしていた。
「それはまた」
「お母さんに面白いって言われまして」
「それで読んでるのね」
「いや、本当に面白いですね」
「名作って言われてるしね」
「オスカル様素敵です」
 うっとりとした言葉だった、実に。
「私こうした人に憧れます」
「男装の麗人に」
「そりゃ男の人にも憧れますけれど」
 それでも、というのだ。
「こうした人にも」
「憧れるのね」
「最高ですよ、オスカル様」
 こうも言う美奈世だった。
「こうした人が本当にいたら」
「女の子ってあれよね」
「あれっていいますと」
「そうした人に憧れるわよね」
 オスカルの様な、というのだ。
「男装の麗人にね」
「きりっとしていて責任感があって」
「生真面目で清廉でね」
「貴族で悲しさもあって」
「本当に素敵よね、オスカルは」
「私こうした人にお会いしたいです」
 目をきらきらとさせてだ、こうも言った美奈世だった。既にステージ衣装であるピンク色のひらひらとしたそれを着てだ、メイクも済ませている。
 そのまさにアイドルといった服でだ、こう言うのだ。
「オスカル様みたいな人に」
「そう言われてもね」
 美奈世の今の言葉には苦笑いになってだ、妙子は彼女に言った。
「オスカルは実在人物じゃないし」
「本当はいなかったんですよね」
「その漫画登場人物の殆どが実在人物だけれどね」
 オスカルの家まで実在していた、その設定の細かさも凄い。
「オスカルはいなかったのよ」
「そうですよね」
「だからオスカルに会いたいって言ってもね」
「会えないですよね」
「それは無理よ」
「そうですよね、けれど」
 それでもと言う美奈世だった、無理とはわかっていても言うのだった。
「是非共」
「そこまで憧れてるのね」
「格好よ過ぎですから」
「そう言ってもね」
「やっぱり無理ですよね」
「そこまでオスカルに会いたいのならね」
 妙子はこのことは笑って言った、軽く。
「宝塚観に行ったら?」
「宝塚ですか」
「宝塚だったら普通よ」
 その男装の麗人もというのだ。 
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