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妹みたいで

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第一章


第一章

                      妹みたいで
 若槻遥は草加幸平と同じ大学に通っている。しかも同じ学部で同じ学年である。しかも歳まで一緒という何処までも同じ立場である。
 幸平は鋭い目をしていて眉も細くしっかりとしている。目つきは険しいものにさえ見える。黒い髪を短くしており上の部分だけやや伸ばしている。背は百八十を超えている。
 それに対して遥は茶色の髪を後ろで束ねポニーテールにしている。顔ははっきりとしたものである大きい目の光も確かだ。背は一六〇位ですらりとした身体をしている。
 実は二人の付き合いは長い。大学だけではない。
「ねえ」
「何だよ」
 ある日同じ講堂にいる時にだ。遥の方から幸平に声をかけてきた。
「聞いた?江見ってね」
「江見?」
「江見よ。前田江見」
「前田っていったら」
「ほら、一年の時のクラスメイトだった」
 遥は笑いながら彼に言ってきた。
「覚えてるわよね」
「それは小学校一年の時の話か?」
 幸平はここでやっと思い出した。小学校と中学校の時の同級生である。
「確か」
「そうよ。思い出した?」
「その前田か」
「そうなのよ。あの娘のこと覚えてるわよね」
「殆ど」
 これが返答だった。
「覚えてないんだけれどな」
「何よ、同じクラスだったのに?」
「小学校一年の時だろ?」
 幸平はたまりかねた顔で遥に返した。
「それと二年で」
「二年も一緒にいた相手のこと忘れるなんて薄情ね」
「薄情も何もそんな昔のこと覚えているものか」
 たまりかねた顔でまた言葉を返す。
「十数年も前の話を」
「私は覚えてるわよ」
 遥は笑って幸平に告げる。
「ちゃんとね」
「俺は覚えてない」
 幸平はたまりかねた顔で返す。
「何でそんな昔のことを覚えているんだ」
「覚えているわよ。それでだけれどね」
「ああ。それで?」
「江見が結婚するのよ」
 そうするというのである。
「来年の六月にね」
「六月か」
「凄いわよね。もう結婚するのよ」
 遥は目を輝かせて語る。それはまさに夢見る顔になっている。
「二十歳でね」
「早いっていったら早いか」
 幸平もその話を聞いて述べた。
「それは」
「そうでしょ。それでだけれどね」
「ああ、それで」
「あんたも式に出るの?」
 遥はにこりと笑って幸平に尋ねてきた。
「それでどうするの?」
「何で俺が出るんだ?」
 幸平はその目を思いきりいぶかしめさせていた。
「何でなんだ、一体」
「だから同じクラスだったじゃない」
「十数年前だぞ」
「それでも同じクラスだったじゃない。だから出ないの?」
「出ないって言ったらどうなるんだ?」
「あんたって冷たいわね」
 こう言ってきた遥だった。
「随分と」
「そういう問題か?」
 また怪訝な顔で返す幸平だった。
 
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