美しき異形達
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第二十五話 幻と現実その七
「あそこって鯉だよな」
「カープ?」
「ああ、最初にあのチーム連想したよ」
薊は江田島と聞いてまずこのチームをイメージした、実際に。
「あそこな」
「カープね」
「寮にも広島の娘いるけれどさ」
「そうそう、宇野ちゃんね」
裕香も広島出身の寮生と聞いて言う。
「軽音楽部の」
「あの娘小さくて可愛いよな」
「結構胸もあるしね」
「酔うとあっちの言葉出るよな」
「広島弁がね」
「あのじゃけえ言葉って独特でさ」
薊は首を捻りつつ話していく。
「あたし最初びっくりしたよ」
「そんなに?」
「ああ、ヤクザ屋さんみたいでさ」
「それって東映の映画の影響じゃないの?」
向日葵は薊が広島弁を聞いてそうした任侠映画のことを連想すると聞いてだ、それでそうなったのではないかというのだ。
「仁義なきとか」
「あとバッド何とかとかな」
「あの不良漫画ね」
「どっちも広島弁だけれど」
「実際はね」
それは、というのだ。
「広島イコールヤクザ屋さんじゃないから」
「そうだよな、やっぱり」
「確かに多いらしいけれどね」
「多いのかよ」
「呉が港町で人足斡旋があったから」
その人足斡旋をしていたのがヤクザだったのだ。この仕事は昔からそうした世界の人間が仕切っていたんである。
「それでなのよ」
「ヤクザ屋さん多いのか」
「そうなの、あそこはね」
「暴走族の人もかい?」
その不良漫画である、不良漫画であるが人が次々と死ぬ恐ろしい作品だ。
「あの人達も」
「あれはね」
何というかと返す向日葵だった。
「まあいると思うけれど」
「三千もメンバーがいるグループなんてないか」
「それどんなグループなの」
三千人という規模を聞いてだ、菖蒲が冷静に突っ込みを入れた。
「暴力団の組織でも結構な規模だけれど」
「やっぱりそうだよな」
「ええ、普通ないわ」
「ないよな、そんな暴走族のグループ」
「少なくとも神戸にはないわ」
そうした規模の暴走族の組織はというのだ。
「神戸にも暴走族はあるけれど」
「横須賀よりも少ないよな」
「横須賀はやはり」
桜は横須賀の暴走族についてだ、薊について尋ねた。
「暴走族の方が」
「毎週金曜とか土曜の夜になると出るよ」
「そして走っておられるのですね」
「そうなんだよ、爆音が聴こえるからすぐにわかるよ」
バイクのそれがというのだ。
「あと昼はさ」
「お昼は」
「右翼が出るよ」
「そちらの方がですか」
「うん、出るんだよ」
昼は昼でだというのだ。
「これがさ」
「やはり海上自衛隊の基地があるから」
「その縁でさ」
「右翼の方が出て来られるんですね」
「見てる分には何もないよ」
右翼も暴走族もだというのだ。
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