『自分:第1章』
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『夜出勤』
数日後。
ユウがバイト休みの日。
夜、屋上に、弟と一緒にタバコ吸いに来た。
帰った後、コンビニでビール買って海行った。
暇やったから何気に公衆から店長に電話した。
話の流れで古いビルの屋上に居る事を言った。
そしたら、そんな処じゃ寝れもせんし風邪も引く。
事務所おいでって、迎えに来てくれることになった。
いろいろ聞かれたから、家庭環境や施設に居たこととか、簡単に少しだけ話した。
『風俗しよる子に良くあるパターンやろ?』って聞いたら『ほんまやなぁ。でも、辛いなぁ...』って言われた。
なんか、優しさのこもった言葉やなぁって感じたから、零那も優しい気持ちになった。
2人しか居らん静かな事務所に電話が鳴り響いた。
大阪のお客さんからだった。
夜は居らんやろうし、朝一予約をダメ元でかけて来たらしい。
でも、店長が『居ますよ』って言った。
アンダーナビの出勤表も編集してないのに。
そりゃ行け言われたら行くけど。
知ってるお客さんやし。
準備してホテルに向かった。
『ホンマにまた来てくれる思わなんだ』
『また呼ぶ言うたやん。夜出てるんは知らんかったけどなぁ』
『ホンマたまたま!夜出勤初めてやし!』
『マジでっ!ラッキー♪』
『零那もまた逢えて嬉しい♪』
『何時まで居れるん?』
『それは、お客さんの色んな都合で決めて下さい。お任せします』
『泊まり有りなん?』
『え゛っ!!それは店側がどうするかの判断だと思うけど、お金カナリかかりますよ!勿体無いし!』
『金は問題ないねん』
『...お金持ち?』
『社長やらしてもぉてます♪こぉみえて30越えてるし。それに金握る嫁も居らんしな♪』
『社長=ハゲオヤジって概念が...』
『ははははは♪今の時代、社長やか誰でもなろ思たら簡単やで!存続さすだけのチカラがあるかどうかが大事やねん。運もあるしな!』
暫く話しに夢中なってて電話忘れてた。
店長の方から着信が。
泊まり料金とか聞いたら前例が無いから考えさしてって。
翌日の何時迄か聞いたら、前と同じで昼1時に帰るから、希望は15時間...
店長がお客さんと直接電話で料金やら何やら話した。
零那と電話変わって『大丈夫なんか?』って心配してくれた。
『安心して寝て下さい。事故されたら困りますから』って電話を切った。
『仕事!!』って感じでもなく、大金貰うのは申し訳ない。
この人は涼しい顔で難無く札を数える。
思わず『無駄遣いやで!』って本音が零れた...
『誰がどぉ思ても俺にとって意味が在ることは無駄じゃない』
『...でも、零那なんかに』
『あ~っ!腹減ってんねん俺!付き合ってや!飲んで飲んで!!』
零那の言葉をわざと遮った。
何か意図があって呼んだ?
あらゆる分野の話しをしてくれた。
その殆どは難しくて、馬鹿な零那には解らんかった。
それでも、説明が上手な話し方のおかげで、零那自身が賢くなれたような錯覚に陥った。
経験や知識、惜しみなく話してくれた。
こんな人、滅多に居らんやろなぁって思った。
でも、この人の目的は、零那の過去を、人生を...知る事だった。
『初めて逢った瞬間、この子の笑顔の下には闇が渦巻いてるって感じた。暗い子とか、そぉゆんじゃなくて。ただ、俺には何となく伝わった。心の叫び的な何かが。其れが何なんか知りたかった。俺が役に立ちたかった。』
まさか初めて逢った日に見抜かれてたとは考えもせなんだ。
それに、零那は誰かに役に立ちたいとか思われるほどの人間や無い。
何とも言い難い心境だった。
嬉しくないワケじゃない。
すごく有り難い想いやなって感じたのは事実。
ただ、嬉しいけど怖かった。
零那なんかの為に15時間...
大金払えるこの人が...
ウリ時代の何十万とは比べもんにならん。
重みが違い過ぎる。
この人は零那みたいな奴と関わったらあかんタイプの人間やし...。
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