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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十一章
  典厩との会談

一夜が明けた今日。深夜まで酒を飲んでいたが、二日酔いにはならずに済んだ。一応酒を飲んだあとに、二日酔いにならないようなドリンクを飲んだけど。それにしても娘が生まれてたなんてな。これで織斑ファミリーは俺と奏、優斗と新たに深雪が加わった。千冬も姓は織斑だけど、俺より1つか2つ年下で戸籍を持っていなかったからか、兄妹で結婚という形になったんだけど。あとは他の者たちは姓は織斑ではない。結婚しても姓名はそのままだ。とまあそんな感じで今上段の間にいるんだが。今回は武者溜まりの中ではなく、広間が見える場所に姿を揃えていた。ちなみに俺は美空の隣にいる。俺の妾になったからだ。なので、皆とは違い一番高い位置にいるんだけど。

「あんまり緊張しないのね」

「まあな。神界での会議でも上座だったり、一番上の席だったりだったから」

「そういえば一真は神々の頂点だったわよね。それも創造神だっけ」

「そういうことだ。秋子たちも俺がここに座ってもいいのだろう?」

「はい。一真さんは相応の立場のお方、という事ですよ」

「そうっすよ、今のままでいてくれたら助かるっす。落ち着かない感じだと偉そうには見えないっす、あとそれだと柘榴たちがみっともないっすから。今のままで胸を張るっすよ」

まあ美空の恋人、未来の夫になった以上それ相応の態度を見せないといけないというのは分かっていた。それに偉そうにするのは、拠点でもそうだったし。あとここからの景色も見納めだからよく見ておかなきゃな。今上段の間に並んでいるのは、秋子たち越後の中枢と、一真隊の仲間だけだ。もちろん森の親子も参加させている。本来ならこういう場は出ないのがお約束だが、俺の頼みだとNOとは言えないようで出てもらった。まあ各務もいるから大丈夫だろうよ。美濃や二条、小谷での連合軍全体の表情と比べれば、人数が少ないからか寂しい感じはする。でもこれが今の越後だ。

「一応言っておくけど、ここもあなたの国なんだからね」

「分かっているよ」

ここからの光景も、俺がこれから背負う物の一つなのだろうけどどうなんだろうな。拠点に戻ったらここは俺の物ではないし。

「甲斐国武田家臣、武田典厩殿、ご入室」

松葉の合図で、広間に続く扉が開く。俺も今は美空の恋人としては恥ずかしくない振る舞いをしようと思ったが、別にいいかと思った。

「おはようでやがります!昨日のお返事を伝えくさりやがれです!」

上段の間に入ってきた典厩の表情は、荒っぽい口調とは裏腹に、明るく堂々としたものだった。昨日も監視カメラからの映像で見てたが、こうやって正面から見ると健康的で可愛らしい。黙っていればの話になるが」

「・・・・伝えるけどさ。あんた、その喋り方、ほんとに何とかならないの?」

「ほえ?夕霧の喋りがおかしいとか、そんな訳あるはずないでやがりますよ?」

「・・・・・はあ」

小さくため息を吐く美空に不思議そうに首を傾げながら、典厩は改めて腰を下ろした。まあ美空のその気持ちは分からなくもないけど。あれだな、現代で言うなら標準語に直せと言っても方言や関西弁が出てしまうのと同じくらいなのかね。

「・・・・・・して、こちらにいらっしゃりやがるのは?」

「ああ。紹介が遅れたけれど、私の恋人よ」

「・・・・は?」

「一真、名乗りなさい。もちろん神の名前もね」

「はいはい。俺の名は織斑一真だ。そちらで掴んでる情報では阿弥陀如来の化身とか言われているそうだが、化身ではなく正真正銘俺は神だ。立ち位置は創造神、全てを創ったと言われている神である。あと先日、美空と恋人の契りを結んだ者でもある。見知りおけ」

「はぁ・・・・っ!?」

流石の典厩も、俺の名乗りに些か茫然としている。まあそうだよな、化身ではなく本物の神でもあり美空の恋人になったのだから。昨日身柄を寄越せと言った奴が、次の日には美空の隣で恋人=未来の良人と言って座っているからな。

「そんな情報、こちらの草の誰も仕入れてやがりませんぞ・・・・!?一二三も知らぬとは、いつの間に・・・・。それと阿弥陀如来の化身ではなく本物の神様でやがりますか!そのような情報も一切入ってやがないし、創造神って一番偉い神ではりやがりませぬか。こりゃ一歩間違えれば神の怒りを買うところでやがりましたか」

「あら。天下に知らぬ事なしと言われる武田にも、知らない事があるものなのね~。あと神の怒りは昨日買う直前だったわよ~。何せ昨日の書状を聞かせたら甲斐を滅ぼしに行くと言ってたし~」

「むむむ・・・・・・・・・・」

使者としての威厳もあるんだろうな。難しい顔をしながらも何とか背筋を伸ばしている典厩だったが、美空があと少しで甲斐は滅ぼしに行くという事でさらに難しい顔になっていたけど。あと冷や汗が出ている。それとは対照的に、美空は昨日とうってかわって機嫌の良い顔をしている。これが美空がしたかった事らしいな。まあ、今の美空に出来る精一杯の仕返しなんだろうな。

「しかし、織斑一真様といえば・・・・田楽狭間の天人と呼ばれやがる、あの織斑一真様でやがりますよな?」

「そうだな。まあそう呼ばれている事もある」

「光璃がご所望の、如来の化身だか使いだか言う者だけど、実際は神様よ。そして私の恋人、未来の良人になる者だから、丁重に扱いなさい。一真以外は見えていないだろうけど、他の神々も見ているから」

「むむむ・・・・・ふむー・・・・・」

本当はかなり気になるんだろう。典厩はその場に座ったままだが、俺を上から下まで見回していたが、俺の目が光ったら見るのをやめた。あと秋子たちと一真隊のメンツも俺の目が光ったからなのか、少し驚いた表情をしている。あと他の神々が見ているのは本当だ。俺の傍には護法五神がいるし、神界と冥界で神仏が見ている。まあ流石に上段の間に上がって見る、なんて事は出来ないようなもんだ。美空としては、そこも計算に入れて俺をここに座らせたんだろうな。

「むー」

さっき目が光ったから見るのをやめていたが、またじっと見ていた。今度は目を光らせないようにしたけど。何かあれだな、IS世界の外史での気分だな。女子高の中に男子を一名入れたからの理由だけで見られる状態だな。動物園で例えるとパンダの気分だ。

「・・・・お兄さん、なんかフツーでやがりますね。ほんとに田楽狭間の天人でやがりますか?あと神様なら証拠を見せてほしいでやがります」

「しょうがないから見せるか。本来なら人間相手に見せる姿ではないからな。・・・・大天使化」

と立ち上がってから大天使化をして見せた。目を瞑り髪と服が金色に変わり目を開けたら青と緑になっていた。ついでに6対12枚の翼も出したけど。あと我の側にいた護法五神の姿も見えるようにした。

「これが神の姿よ。一真の側にいるのは護法五神。一真と会うまでは私の妹だったのだけど、今は一真の妻の一人よ。あとついでに禁裏の妾御免状も持っているわよ」

「むむむむむむ・・・・・。姉上はどうしやがるのでしょう、化身ではなく本物の神様相手とは。御免状はともかく、長尾の恋人にまで収まっているとは・・・・むむむ・・・・」

よっぽど意表を突かれたのか、それとも何か思う所があったのか、夕霧は何やらぶつぶつと呟いている。あと大天使化は見世物ではないので、元の姿に戻った。翼だけは広げているし、たまに動かしているけど。あと護法五神は見えたままにしてある。

「何がむむむよ。こっちはそっちの提案通り、一真を用意してあげた訳だけど?手紙の内容はさすがに知ってるわよね?」

「いやまあ、確かに・・・・ですが・・・・良いのでやがりますか?」

「何が?」

「夕霧が言うのも何でやがりますが、この騒ぎが、でやがります。恋人になったあと、まだそれほど日も経ってないでやがりましょう?」

「ええ」

美空の返事はごく軽いもの。まさか昨日の今日とはさすがに言えないもんな。あと愛妾とはいえ、未来の妻になる者でもあるし。

「・・・・でも、私の恋人を寄越せと言ったのはあんたの姉様でしょうが」

「そうでやがりますが・・・・」

その辺りを気にしてくれるという事は、典厩は根は別に悪い子ではなさそうだけど。ただ、口調が凄く特殊すぎるな。

「まあ、私としては一真を渡せなんてふざけた書状は突っぱねて、武田衆なんか蹴散らしてやってもよかったんだけど」

「・・・・決めたのは一真様でやがりますか?あと書状を聞いて甲斐を滅ぼそうとしたのは本当でやがりますか?」

「俺は提案しただけであって決めたのは美空だ。あとそれについては本当の事だ、俺の妻や恋人たちに感謝するんだな。あと一歩で甲斐ごと滅ぼしていたからな。まあ大切な越後の地を俺達の都合で踏み荒らされるのは御免だ。どこへなりと連れて行くがいい」

「むぅ・・・・見上げた心意気でやがりますな。あと昨日の書状については姉の代わりとして謝りやがるです。ごめんでやがります」

「まあ昨日の事についてはもう怒ってないからいいけど。二つほど聞かせてほしいんだが、いいかな?」

「何でやがりますか?」

「まず一つ目。俺を甲斐に連れていってどうすんの?」

「さあ?」

「さあっておい。分かんねえにかよ!」

「姉上が連れてこいと言いやがりましたから、夕霧はそれを実行するだけでやがりますからな」

堂々と答える典厩の様子に、詩乃や一葉、柘榴たちも表情一つ変えない。変な表情になりそうだったのは俺と周りにいる護法五神だけだ。まあこの時代の将としては変な事を言っているわけでもないのであろう。武人としてはそれも一つの道かもしれんが、俺は神や軍人であって武士ではない。だから変な表情になりそうだったのをこらえた訳だ。

「もう一つは何でやがりますか?」

「俺には美空以外にも妾、恋人がいるんだが。甲斐に行く時は同行させてもらいたいんだが」

「確かに、離ればなれというのは、ちょこっとだけ忍びないでやがりますな。ですが、美空様は流石にダメでやがりますよ?」

「分かってるわよ」

「で、その妾殿とやらはどちらでやがりますか?」

「うむ。あそこにいる・・・・」

そう言って、俺は広間の一角・・・・秋子たち長尾勢と向かい合う位置に座っていた一葉達を指してみせる。

「ふむ。で、どちらでやがる?」

「だから、そこにいるだろ」

「ここにいらっしゃるのは分かるでやがります。ですから、ここにいるどなたが妾殿でやがりますか」

「あのなぁ、どなたって言われても全員なのだが」

「はああ!?こんなにいやがるですか!?」

「越後にいるのは」

「これが全部じゃないでやがりますかー!?」

「まあ、そういうことだ」

「なんとぉ~・・・・美空様ちょっと良いでやがるか?」

「・・・・何よ」

「大きなお世話かもしれないでやがりますが、なんでこんなのを未来の良人にしたでやがります?」

「わ・・・・私の勝手でしょ」

「・・・・ワケが分からないでやがります」

こんなので悪かったなこんなので。まあ典厩は信じられないという表情というか呆れていたという表情を浮かべた典厩。で、哀れみを込めた目をこちらに向ける。

「(ねえねえ。雀たち、いつお兄ちゃんの恋人になったの?)」

「(仲間や部下というより、そうしておいた方が話が通しやすいでしょう?ここはハニーに合せて下さいまし。いいですわよね?桐琴さんにちんくしゃ)」

「(分かっておる。だから一真はわざわざワシらをこの場にいてくれと頼んだわけか。その方が話が進みやすくていいのう。各務もそう言っているからガキも我慢せい)」

「(分かっているよ。これも一真の策なんだろうよ)」

「(それならいいんだけどね。それに雀も別に嫌じゃないから、・・・・ちょっとびっくりしたけど」

「・・・・・(コクッ)」

なんかあちらで何か話し合っているようだけどまあいいか。どうせ仲間たちは全員俺の妾にする予定だったから。

「で、どうなんだ」

「うむむ・・・・。確かに忍びないとは言いやがりましたが、これはちょっと多すぎでやがりますよ。この半分・・・・いや、それでも多いでやがりますな。四、五人に絞って、あとは離縁しやがれですよ」

「そんなの無理に決まっているだろ」

何かしらの縁があって俺の彼女になってくれたわけではない。そんな俺の彼女たちに離縁なんてありえない選択だな。

「けど、この人数はいくら何でも無理でやがりますよ。ただでさえ一真様は、数名の部下で城を落とすのが得意でやがりますのに・・・・」

「どこで聞いたんだ、そんな話」

「織斑入れば落ちにけるかな。有名でやがりますよ?」

ふーん。春日山の事をどこまで知っているかは知らんが、その前の事については武田家の情報網なら知っていて当たり前なのか。あのとき城落としたときは、トレミーからは間者がいるなんて知らんが。

「なら離縁がいいから数だけ絞って、越後に置いていきやがれです。それがこっちの精一杯の譲歩でやがります」

「ふむ・・・・」

詩乃や雫の方をちらりと見ると、二人も渋々といった様子で小さく頷いた。

「夕霧が居たら話しにくい恋人の話題でもありやがりましょうから、夕霧は一度退席してあげやがりましょう」

「気が利くじゃない。・・・・なら、まとまったらもう一度呼びに行かせるわ。・・・・松葉」

「・・・・(コクッ)」

典厩が去ったあと俺はドライグからの質問を受けていた。いつの間にそんなに増えたのかとか、奏には報告したのかとか。パソコンに全部登録してるから心配すんなと言っておいた。あと俺に娘ができたことについては祝福してくれた。あとずっと寝ていたサマエルも寝言でおめでとと言っていた。そういえばサマエルを起こすの忘れていたけどあとで起こすか。 
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