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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十九章
  静かな夜

ところ変わって長尾勢にて残った詩乃と鞠。詩乃は泣いていたのか、その声で起きてしまった鞠。

「それより、詩乃ちゃんは大丈夫?お腹痛いの?」

「いえ、一真様の事を考えていたら・・・・。お恥ずかしい所をお見せしてしまいました」

「気にしないでいいの。詩乃ちゃんのそういう所、鞠、好きなの」

「そうですか・・・・?」

「うん。鞠、そういう気持ちって、良く分かんないから。・・・・ちょっと羨ましい」

「一真様のことはお好きなのでは?」

「一真は好きだよ。大好き。ぎゅってされると嬉しいし、一緒にいたら自然にお顔がニコニコになっちゃうの。でも、こうやって離れてるのも、必要な事だからって考えちゃうから・・・・寂しいって、良く分かんないの」

「ああ・・・・その気持ち、よく分かります」

「そうなの?」

「ええ。私も一真隊に入る前・・・・美濃にいた頃は、そうでしたから。あらゆる事を自分の感情に入れず。必要な事、必要な流れをただひたすら考えて、ひたすらに最善の一手を打ち続ける。それがあの頃の竹中半兵衛でしたから」

「そうだったの・・・・」

「ええ。失礼を承知でお伺いしますが、義元公が田楽狭間で久遠様に討たれた時・・・・鞠さんはその報を受けても、一度も泣かなかったのではありませんか?」

「なんで分かったの!?鞠、その話ってした?」

「いいえ。ただ、昔の私であれば泣かない・・・・いや、泣き方が分からないだろうと思っただけです。・・・・義元公は上洛を望み、志半ばながらも自らの意志を貫いて亡くなられたのですから。武人の最期としては、無念ながらも、良い最期と言えるでしょうし」

「うん・・・・鞠もそう思ったの。だから残念だったなぁとは思ったけど、涙は出てこなかったの。泰能や他のみんなの時もそうだったの・・・・。みんなは、自分の役目を果たしたんだって」

「では・・・・もし、一真様がそうなったら?」

「・・・・分かんないの。それに、一真の背中は鞠が守っているから・・・・一真が死ぬ時は、もう鞠はいないと思うの。でもねそれは鞠みたいに人の子の場合なの。一真は神様なの。だからもし鞠が死にそうになっても、一真が蘇らせてくれるの」

「そうですか・・・・。それに忘れていました。一真様が神様だって事を。例え死にそうになっても蘇る御方、一真様は不老不死だと仰っていました」

「鞠もいつか、詩乃みたいになれるかな・・・・?」

「・・・・鞠さんは、まだ経験が足りていないだけだと思いますよ」

「けいけん・・・・」

「今よりもっと、ご自身の一真様の事が好きな気持ちを理解できたら・・・・すぐに離れているのが寂しくてたまんなくなりますよ」

「ほんと?」

「同じ道を通って来た私が保証します。・・・・むしろ、私は鞠さんのように、一真様を守れると言い切れたり、素直に色々なことを言える所が羨ましいですが」

「鞠は考えた事をしてるだけなの。一真、そういうのを詩乃がしても・・・・きっと、嫌がらないと思うの」

「頭では分かっているのですがね。実行するのは、ひねくれ者の私ではなかなか・・・・」

「詩乃ひねくれ者なんかじゃないの。すっごく可愛いの」

「一真様と同じことをおっしゃる・・・・」

「鞠も少しずつ変わってきているの・・・・。きっと、一真や詩乃やみんなが、いろんな事を教えてくれるからなの」

「でしたら、すぐに私のようになってしまいますよ」

「ほんとに?」

「・・・・良い事ばかりではありませんが」

「それでもいいの。楽しみなの・・・・。ねえ、詩乃。今日は一緒に寝ていい?鞠、詩乃ともっとお話したい」

「ええ。・・・・私も鞠さんのお話、もっと聞かせて頂きたいです」

ということがあった鞠と詩乃であった。二人が一緒に寝て話をしているときに、前線基地である神社では。

「ん?どうした。雫」

あの後、一度トレミーに戻り隊員を選んでいた。今回は男性隊員は一真隊に崖登りの指導をしてもらうこと。女性隊員はISを身に纏って登っている最中に攻撃をされないように護衛をしてもらう。あと任務が終わった男性隊員を女性隊員が抱っこをしてトレミーに戻るようにしようとしているので、トレミー内にいるブラック・シャーク隊の中で、独身の者を選ぼうと思っている。実はというと、女性隊員の内100名は俺の妻だが、残りの100名は独身か、男性隊員と付き合っているとのこと。その中からロッククライミングと懸垂下降が得意な者を選んだ。そして選んだらその者たちを呼んで今回の任務内容を話してから解散になった。そしてトレミーから戻ると今に至る。


「あ、一真様・・・・」

「何をしているんだ。早く寝た方がいいぞ」

静かに月を見ていた雫。今回は詩乃がいないからプレッシャーなのか?でも一真隊に入る前は播州の知者として知られていたから、こういう場面はあったはず。

「ちょっと・・・・詩乃のこと、考えていまして」

「詩乃?それがどうかしたか」

「一真様は御存じですか?詩乃が一真様がこういった任務に就いたとき、夜にいつもこっそり泣いているのを」

「・・・・まあ知っているな」

寂しい思いをしているのは分かっていることだけど、いつも一緒というわけにはいかない。俺は自ら前線に立つ男だ、死ぬなんてことは考えた事ない。第一防弾と防刃のを着ているからな。でも、この間の潜入のときも泣いていたと聞いた。一緒にいた守護霊にな。

「武士の妻ですから、そういうものだと理解はしていると言っていました。そうならないよう万策整え、それでも駄目だった時の覚悟も出来ていると・・・・」

「一つ訂正するが妻ではなく恋人な。まだ正式に妻としては迎えてはいない。それに俺は軍人であり、神でもある。だから死なないと思っていると思うが理解に苦しむだろうな」

詩乃は策を講じる立場。彼女の采配が一つ間違えば、一真隊の多くの兵が無駄死になる。でも、今までの事を考えれば間違った采配はなかった。

「そういえばそうでしたね。まだ恋人というのを忘れていました。新参の私でも、綾那ちゃんや鞠ちゃんのように剣の腕を磨いておけば、もっと一真様と一緒にいられたのかな・・・・って思うくらいですから」

「悪いな、雫」

「構いません。私はこうして、一真様とお話出来ていますし・・・・。以前、一真様も仰っていましたよね?詩乃と私、一人では足りない・・・・二人の力が必要になると。今が、その時なのだと思いますから」

「まあそうかもしれないけどな。俺の妻たちも寂しい思いをさせているが、皆は寂しいと思っていないと聞いた。いつでも心は繋がっているとな。それに詩乃は気付いていないと思うけど、詩乃の悲しい気持ちは繋がっているから分かるのさ。まあ今はこういうことしか言えないが、いつもありがとな雫」

俺は妻たちが安心しているから存分に戦える。それは心と心が繋がっているからだと思う。それに今ここにいる雫や詩乃も黙って支えているから、戦えるからだ。

「ふふっ。そう言って頂けるだけで、十分です。でも、詩乃や鞠ちゃんが戻ってきたら、二人にも言ってあげて下さいね」

「ああ。任務が終わったらそうするつもりだ。もっと一緒にいられる時間をな」

その時間は操ってはいけない時間だ。一緒に居られる時間を長くするには、俺に応えてくれる想いに応えられるようにしなきゃなと。じゃないと、奏と結婚していないし、拠点にいる妻たちとも結婚はしていない。だけど、これは俺の任務だからだ。それを理解しているから、妻たちを置いて来ても寂しさは感じないけど。

「今日はお話出来て、嬉しかったです。明日からの作戦もありますので『そろそろ寝ろだろ?』やはり分かりますか」

「そりゃそうだ。俺は司令官だからな、船での仕事もあるし、部下との会話も楽しむのも司令官の仕事だ。そしてこの任務が終わったら一緒に寝ような」

「はい。そのときは・・・・たくさん可愛がってくださいませ」

そう言って、雫はふわりと柔らかな微笑みを浮かべた。

「この任務が終わればな」

「あ、今のお話、詩乃には内緒ですよ!」

「分かっているさ。それじゃおやすみ」

と言って、俺は寝所に行ったけどな。詩乃が泣いているのも全部知っていることだが、ここはあえて知らないフリをしていた。あと心の声も聞こえるから、隠しても無駄だけど自分から言ってくれるまでは言わないようにしている。さてと明日は久々に軍人らしい事をしようではないか。 
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