戦国異伝
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第百八十一話 諸法度その八
「よいな」
「そうしてよいのですか」
「我等も」
「ここで拙僧が死んでも教如達もおる」
顕如は落ち着いた声で述べた。
「新欄上人のお教えさえ残ればな」
「民を救える」
「だからこそ」
「思えばこの戦国の世、間違えておったのやもな」
「間違えておったとは」
「それはどういうことでしょうか」
「戦をしたことじゃ」
それが間違えていたのではないかというのだ。
「それは間違えておったのか」
「そうでしょうか、我等は」
「間違えていたのでしょうか」
「我等は」
「そうだったのでしょうか」
「そう思えてきた」
そうではないかというのだ。
「どうもな」
「左様ですか」
「では加賀のこともですか」
「あの国を手に入れたことも」
「うむ、そう思えてきた」
どうにもというのだ。
「あの国のこともな」
「では我等は戦をすべきではなかったですか」
「一揆を起こすことも」
「戦に苦しむ民を救う為とはいえ」
「力を示し侮られぬ為にしたことも」
「そうであったやも知れぬ。しかしな」
それでもだというのだ。
「もうそれも終わりじゃな」
「国を手に入れることもですか」
「加賀のことも」
「それもですな」
「終わりですか」
「この戦で若し敗れればな」
その時はというと。
「最早一揆は起こさぬ」
「そして国を手にすることもない」
「そうしますか」
「民の心を救っていくことだけにする」
これが顕如の今の考えだった、まさに。
「これからはな」
「ですか、本願寺は」
「これからは」
「戻る、上人のお教えにな」
まさにというのだ。
「敗れればじゃがな。それに」
「それに?」
「それにとは」
「もう戦国は終わりであろう」
それもというのだ。
「戦は消えていくわ」
「そうなりますか」
「最早」
「他ならぬ織田信長がそうしておる」
「あの者がですか」
「我等と戦っている」
「天下は統一され」
そして、というのだ。
「そのうえでな」
「泰平になると」
「織田信長により」
「そうなるであろう」
こう言うのだった。
「織田信長、敵ではあるが」
「見事な者だと」
「そうお考えですか」
「会っても悪いものは感じなかった」
それも一切、というのだ。
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