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美しき異形達

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第二十五話 幻と現実その一

                  美しき異形達
               第二十五話  幻と現実
 菫は日曜の朝早く起きた、だが。
 起きてすぐにだ、菫よりも幾分か背が高くショートヘアの明るい顔立ちに大きなはっきりとした目を持っている青のパジャマの女にこう声をかけられた。
「おはよう、菫」
「あっ、お姉ちゃん」
「あっ、じゃないでしょ」
 すぐにだ、菫はこう返された。
「朝はね」
「おはよう、からよね」
「そう、挨拶第一よ」
「お姉ちゃんの仕事は特にそうよね」
「サービス業だからね」
 それ故にとだ、菫の姉は妹に笑って返した。
「それもね」
「当然よね」
「そうよ、じゃあ」
「おはよう、お姉ちゃん」
 菫はあらためて姉に挨拶をした。
「今日も元気ね」
「この通りね」
 笑って返す姉だった。
「元気よ」
「それは何よりね」
「ええ、それでだけれど」
「それで?」
「もうお父さんとお母さん外に出たから」
 このことをだ、姉は菫に告げた。
「今さっきね」
「そういえば今日は」
「そう、文曲さんのところに二人で言ってるのよ」
「お付き合いで京都まで行くのよね」
「歌舞伎を観にね」
 それでもう外に出たというのだ。
「行ったわ」
「そうだったわね」
「うちの家のお仕事はお茶だから」
 つまり茶道の師範の家だというのだ。
「あと華道と日舞もね」
「色々やってるお家だから」
「そうした縁だからね」
「桜ちゃんのお家の人達とお付き合いして」
「そうよ、そういえば最近あんた」
「ええ、桜ちゃんと仲いいのよ」
 実際にそうなっているとだ、菫は姉に話した。話をしながら自分の紫のパジャマを見る。ひらひらとしている。
「結構一緒にいるわ」
「そうらしいわね、私もそう聞いてるわ」
「文曲さんから」
「あちらのお父さんからお聞きしたわ、旦那さんからね」
「そうなのね」
「そうよ、まあ誰とでも仲いいに越したことはないけれど」
 それでもだと言う姉だった。
「特に教えさせもらっている、それも代々のお家の人と仲がいいのはね」
「いいことね」
「お馴染みの人はいいものよ」
 茶道や華道にとってもというのだ。
「というか仲が悪いとね」
「いいことはないわよね」
「誰とでもそうよ」
 仲が悪いことはというのだ。
「仲がいいことはそれだけでいいのよ」
「そういうものね」
「そう、だからあんたも桜ちゃんと仲がいいことはね」
「いいことなのね」
「悪い筈ないわ」
「そういうことよね。ただ」
 ここで菫は姉にこう返した。
「お姉ちゃん今桜ちゃんって言ったけれど」
「ええ、言ったわよ」
 まさにそうだと返す姉だった、二人でリビングのテーブルに朝食を出しながら話をしている、家の中は基本和風だが洋風のものもある。 
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