魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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無印編
八束神社での対決
最初のジュエルシードによる事件が終わり、そのままその日は終結・・・・とはいかなかった。
龍一が零課に皇治を引き渡したのはいいが、案の定、目覚めた皇治が大暴れしたり
事後処理のために帰ってきた剛に皇治が瞬殺されたり
龍一が『何でこんな時間にこんなところにいるんだ』と父に殴られたり
さっきの事件に龍一が関わっていたことを知ってまた父に殴られたり
詳しい話を父に聞かせたりで、結局龍一が自宅に帰ってきたのは、日付が変わる直前だった。
ちなみに、余談だが、皇治はその後も態度を改めなかったので、『このまま魔法を持たせておくのは危ない』と判断され、記憶と魔力の封印がなされた。
そんなこんながあった翌日。
「ふああ~~~~~~~~」
当然、龍一は寝不足気味であった。
成人であった前世ならともかく、日付を過ぎてからの就寝は9歳児にはキツイのだ。
「凄い欠伸ね」
「龍一くん、どうしたの?」
アリサとすずかが心配そうに話しかけてきた。
「昨日な、いろいろあって寝不足なんだよ」
「どうせゲームのしすぎでしょう」
「バニングスと一緒にするな」
「どういう意味よ、それ!?」
「二人とも夜はちゃんと寝なくちゃだめだよ」
「すずかまで!?」
そんな会話が続いていると、教室の扉が開く。
「おはよう、みんな!!」
そのには、銀髪オッドアイの残念イケメンがいた。
彼の登場にクラスの大半(主に男子)が嫌そうな顔をする。
「ごめんね、佐藤さん。今日俺が日直なのに遅れて」
あれ?
あの皇治からとんでもない発言が飛び出した。
このクラスの日直は毎日、男子と女子がともに1人ずつ出席番号順に選ばれるのだが、彼はいつもめんどくさがって適当な男子に押し付けるような人間だったはずである。
「ほら、松下くん。消しゴム落ちてたよ」
「あ、ありがとう」
誰だあれ?
いつも女子に対しては嫌な視線を、男子に対しては侮蔑の視線を向けていたあの皇治が、あんなにさわやかな笑顔で話しかけるはずがない。
ましてや、いつもの『俺の嫁』発言もなく、アリサたちへのちょっかいも出さないときた。
「ねえ?誰よアイツ?」
アリサの言葉がこの場にいる全員の反応を代弁していた。
恐らく、昨日の記憶処理の影響だろうが。
要するに、これこそが年相応の轟皇治本来の性格なのであろう。
「おはよ~~」
しばらくして、なのはが登校してきた。
「おはよう、なのは」
「おはよう、なのはちゃん」
「おっす、高町」
「そう言えば、なのはちゃん昨日の話聞いた?」
「へ?昨日って?」
「昨日の夜、あの病院の付近でトラックか何かが突っ込んだらしくて、壁が壊されちゃったんだって」
「なんでも『爆撃機が来たんじゃないか?』ってくらいの大騒ぎだったみたいよ」
「あのフェレット大丈夫かな?」
「フェレットって昨日高町からのメールにあったあのフェレット?」
「そう、その仔よ」
「え~と、それはね・・・・・」
なのはが昨日のことについて説明しだした。
「そっか。あの仔無事だったんだ」
「でも、凄い偶然だね。逃げ出したあの仔と偶然道端で会うなんて」
「にゃははは・・・(嘘はついてない、嘘はついてない。ただちょっと、ちょこっと真実をぼかしただけ・・・)」
アリサとすずかと龍一に心の中で謝りながら誤魔化すなのは。
(やれやれ、高町)
(!?)
龍一は念話でなのはに話しかけた。
なのはは驚いた様子で龍一を見る。
(龍一くんも魔法が使えたの?)
(まあな。昨日の事は父さんから聞いた)
(剛さんから?)
(ああ。だけど、もう少しましな誤魔化し方をしろよ)
(にゃはははは・・・・)
キ――――ン、コ――――ン、カ―――――ン、コ―――――ン
丁度その時、チャイムが鳴り、各々の席に戻っていった。
(それじゃあ、昨日の封印は龍一が放ったんだね?)
(そうだよ)
(『なかなかに良い封印魔法でした』)
(デバイスに褒められるとはな)
(にゃはは龍一くん、昨日はありがとうね)
今は授業中であるが、念話とマルチタスクを使い、授業を受けながら2人と1匹と1機で会話をしていた。
(でも驚いたよ。この世界に魔法技術はないって聞いてたから)
(そっちじゃどうかは知らないけど、この世界だと魔導師は徹底的に秘匿するものだからね。普通の調査しかしてないんなら、そういう認識でも仕方ないんじゃないかな?)
(うん。僕たちの世界の常識だと、魔法を秘匿しなければならないってのがそもそも考えられないな)
(そう言えば、昨日は遠目でしか見ていなかったが、高町は大丈夫だったのか?)
(うん。何ともなかったよ。・・・ねえ、ユーノくん)
(何?なのは)
(昨日のあれこれってやっぱりレイジングハートのおかげ?)
(『そうですね、大半は』)
(やっぱり高性能なんだね)
(僕には使いこなせなかったけどね)
(『しかし、残念ですが、私単体では何もできません。私はいわば『乗り物』です。乗り手がいなければ性能を発揮できません』)
(そうなんだ。わたしはレイジングハートの乗り手に、ちゃんとした魔導師になれるかな?)
(なれるよ。なのはにはたぶん僕なんかよりもずっと才能がある)
(『あなたがそれを望み、そのための努力をしてくれるなら』)
(まあ頑張れ。一つ忠告しておくけど)
(何?)
(将来、魔導師として働いていくなら、昨日のような射撃魔法だけじゃなくていろいろな魔法も使いこなせるようにならないと、どこも雇ってくれないよ)
(にゃああああああああああ!?ひどいよ龍一くん!?)
彼らの会話はそのまましばらく続いた。
放課後になり、みんなと別れたなのはは公園の剛警部のところにユーノを連れていくために、いったん家に向かっていた。
そして・・・。
「!?」
突然、何かを感じ取った。
昨日も感じた、ジュエルシードの反応である。
(ユーノくん!?これって?)
(間違いない、ジュエルシードだ!!)
確信したなのはは一目散に、反応のする方向に走り出した。
(駄目だよ、なのは!!僕か龍一が行くまで待って!!でなければ、剛警部のところに向かうんだ!!)
(公園まで向かっている時間なんてないよ!!人や生き物が巻き込まれちゃうかもしれない!!)
反応に向かって走っていたなのははやがて神社の境内にたどり着いた。
そこではリードを持った女性が倒れ、犬のような巨大な獣に襲われようとしていた。
「レイジングハート!!」
『はい』
「これから努力して経験積んでいくよ。だから教えて、どうすればいいか」
『全力にて承ります』
「レイジングハート、セ――ト、ア―――――ップ!!」
なのははバリアジャケットとデバイスを展開し、プロテクションを張って女性を守った。
「ぐ、ぐるるるるるるる」
獣が吠えて力を増すが、なのはの膨大な魔力によるプロテクションはびくともしない。
「ディバインシュート」
左手から魔法弾を打ち出し、獣を吹き飛ばす。
だが、獣にはあまり聞いていないらしく、直ぐに起き上った。
「利いてない!?」
『更に大威力攻撃を推奨します』
「どうすれば!?」
『私を両手で握りしめ、先端を相手に向けてください』
「こ、こう?」
なのははレイジングハートを両手で握りしめ、先端を獣に向けた。
『カノンモード』
先端が魔法の杖のような円形から、ロケット砲のようなU字型に変わり、魔力の翼を広げ、トリガーが出現した。
乙女チックな魔法の杖ではなく、どこからどう見ても完全に武器である。
『ロックオンと同時にトリガーを引いてください』
「うん!!」
目の前にモニターが現れ、照準がロックオンされた。
「ディバインバスター」
トリガーを引き、砲撃が放たれる。
「ぐがあああああああああああ!!」
獣の方も口から魔力砲を放ち、相殺しようとするが、なのはの方が威力が高いらしく、打ち負けてしまった。
「ジュエルシード、封印!!」
倒れた獣に封印を施そうとするが、獣の方は背中から翼を生やして逃げよとする。
「ああ、逃げちゃう!!」
『空を飛ぶイメージを思い描いてください』
「う、うん!!」
レイジングハートの言葉に、直ぐに空を飛ぶ自分をイメージする。
『アクセルフィン』
なのはの靴に桃色の翼が生え、空を駆ける。
「待って~~~~~」
獣を追いかけるなのは。
すると・・・・。
「ふっ!!」
獣の背後に、人影が現れ、獣の翼を切り裂いた。
「あ!?警部さん!?」
それは剛であった。
その手には直刀の短刀が握られている。
その銘を『鬼切』と言い、対化物用の極めて強力な概念武装で、今回の事件の為に、朝一で零課課長に許可申請してきた武装である。
「なのはちゃん!!どうして私のところのすぐ来なかった!?」
「だって!!早くしないと、他の人が巻き込まれちゃうから!!」
「そういうのは警察の仕事だ!!子供は大人しくしていろ!!」
二人が言い争っている間に、獣の翼が再生し、再び逃げようとするが・・・。
ヒュガッ!!
一本の矢が獣を貫いた。
「この矢、もしかして龍一くん?」
なのはが驚いている隙に、剛が獣に近づき、獣の四肢を切り裂いた。
「け、警部~~~~~~」
その時、神社に向かって、20代前半くらいの若い青年が近づいてきた。
「小林!!私が抑えている間に封印処理を!!」
「は、はい!!」
小林と言われた青年は獣に近づいて封印処理を施す。
獣は元の子犬に戻った。
「なのは!!大丈夫だった!?」
しばらくして、龍一とユーノが合流した。
そこには・・・・。
「まったく、君はどれだけ危険なことをしたのか分かっているのかね!?」
「す、すみません・・・」
剛に説教されているなのはがいた。
「なのは?」
「ああなった父さんの説教は長いぞ・・・」
その説教はしばらく続いた。
「あうううううううううう」
「お疲れ様」
ようやく剛の説教が終わって解放されたなのははすっかり涙目であった。
「そう言えば、父さんやけに早かったね」
公園までの距離的に龍一たちよりも遅れてくるはずだと思っていた龍一がそう尋ねる。
「ああ、なのはちゃんたちの放課後まで時間があったから、ちょっとこの付近まで来ていたのだよ。ほら、もう大丈夫だよ!!おいで!!」
そういうと、龍一は神社の隅の方に手招きする。
「く~~ん」
すると、奥から1匹の子狐が出てきた。
子狐は剛の元まで走ってくるとそのまま飛びつき、顔をこすりつけてきた。
「きゃ~~~~~~可愛い!!」
「巫女さんの話では、この仔は久遠て言う名前らしい」
「久遠ちゃんなの!!わたしにも抱かせてください!!」
なのはが久遠に手を差し出すが、久遠は逃げるように剛に身を寄せてきた。
「あれ?」
「この仔は人見知りが激しいらしくてな、私も2週間かけてようやく懐いてくれたのだ」
「あうううううう。残念なの・・・」
なのはは心底残念そうであった。
「ユーノ。このままだとマスコットポジション久遠に取られるぞ」
「僕マスコット扱い!?」
警察たちが事後処理で慌ただしく動いているなかで、何ともほのぼのとした空間であった。
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