Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜
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サーヴァント
前書き
10月は色々と予定が入っていてなかなか更新できなかったんですがようやくできました。
今回は少し短めな感じです。
セイバーの言葉に慎二のサーヴァントは鼻で笑った。
「生憎私にはそんなプライドなんてもんは存在しないんでねぇ。アンタがなんで慎二の言葉にムキになるかは分からないけど、ただ言えるのが…」
サーヴァントはもう一つの銃をセイバーに向ける。しかし、セイバーには下手な攻撃はまるで意味を成さない。撃つだけ無駄なのは分かるのだが、まだ油断はできない。相手だって訳もなく銃を構えたりしないのだから。
「全力でアンタを潰さないことには先が危ないんだよぉ!」
相手のサーヴァントは引き金を引き、弾丸を何発も放つ。セイバーはその弾丸を避ける事なく全て受け、突っ込む。カンカン!!と甲冑が弾を弾き、距離を詰めて行く。
既に目と鼻の先の所までにまでサーヴァントはいた。このままセイバーが間合いを詰めれば間違いなく倒せる、そう確信した時だった。サーヴァントから不敵な笑みが零れる。
それを見た瞬間、俺は悟った。
「セイバー罠だ!!」
「ッ!?」
瞬間、サーヴァントの後ろの空間から大砲のような物が二つ、対をなすように現れた。大砲から漂う圧迫感は見てるこっちにも伝わり、あの砲撃に当たったらヤバイと俺でも直感した。
ドォォンドォォン!!と二発の砲弾がセイバーを襲う。
着弾時の轟音が鳴り響き、軽い地震が起こったかと錯覚するぐらいに揺れる。粉塵が舞い、突風が吹き荒れ、俺から視界を奪った。ちょっとした嵐の中にいるような感覚だった。
少しすると、風は止み、揺れも収まった。俺はゆっくりと目を開け、目の前の惨状を目撃する。セイバーがいた場所には粉塵が巻き起こり、その周りにはクレーターが出来上がっていた。
どれだけの威力があったかは一目瞭然だ。あれだけの攻撃を受けてはいくらセイバーの甲冑があったとしても無事な訳ない。
「セイバー!!」
呼びかけてみるも返ってくるのは静寂だった。急に言い知れぬ不安が押し寄せて来た。気づけば、慎二が煙の中から現れ、侮蔑な笑みで俺を見ている。
「なんだ、お前のサーヴァント弱いじゃないか!これで勝つつもりだったの?もう少しマシな腕になってから来るんだな!え?何か言ってみろよ!」
神経が逆なでされるかのように慎二の言葉が癪に障った。俺の事はどうでも良い。しかし、頑張って戦ってくれたセイバーを侮辱するのは許せない。
気づいた時には拳が無意識の内に握られ、フツフツと湧き上がる怒りが爆発しそうになっていた。今俺はどんな表情をしているのか…少し気になったがきっとひどい表情なのだろう。
とにかく、慎二に一発殴ってやらないと気がすまない。セイバーのためにも、俺のためにも。俺は拳を構え、慎二の方へと走りだそうとする。
その時、
「ふん、舐められたものだなァ」
声が聞こえると同時に粉塵が形を変えて、薙ぎ払われた。そこに現れたのは…。
「セイバー!!」
多少の傷がある甲冑を身に纏い、その体と不釣り合いな程に大きな剣を片手に持ったセイバーが立っていた。
「な、なんで生きてんるだよ!さっき僕のサーヴァントがお前を粉々にッ……!!」
取り乱す慎二を見て、セイバーはふんと鼻を鳴らした。
「オレはあの程度では死なん。オレを殺したければ宝具でも解放したらどうだ?」
セイバーは静かな殺意を込めながら言い放つ。さっきまであんなに人を見下していた慎二は後ろに下がり、逃げ腰だ。
「良いねぇ、そう来なくっちゃ!」
相手のサーヴァントがそう言うと、銃を構える。それに対してセイバーも剣を構えた。
「行くぞサーヴァント。次は徹底的に潰す」
セイバーはスッと息を吸った。瞬間、セイバーの足元の床がめり込んだと思いきやセイバーは急速にスピードを上げ、相手のサーヴァントへと突っ込む。
相手のサーヴァントは余裕があるのか銃をクルクルと回し、再度目標に命中させるべく構える。しかも、後ろには二つの大砲が空間から出てきてターゲットに狙いを定める。
ダメだ…これでは当たってしまう…!
「避けろセイバー!」
そう叫ぶがもう間に合わない。相手から放たれた大砲の弾や銃弾は既にセイバーの目の前まで迫っている。
(どうすれば…!)
そう考えた時だった。一つの案が浮かび上がった。これを使えば確実にセイバーを救える。しかしそれは極めて大きなリスクにも繋がるものだ。左手の甲に目を移す。
『令呪』。
サーヴァントに三回まで何でも命令できる代物。しかし回数制限があるため迂闊には使えない。だがここで使わないとセイバーがタダでは済まない。どこに転んでもこの二択は俺にとっては損しかない。
だが、ここでセイバーを失うよりはマシだ。ここは令呪を使って…。
「マスター!」
「ッ!?」
俺の考えを拒絶するかのようにセイバーは叫ぶ。
「見ておけ、これがオレの力だァ!!」
間も無く弾丸や砲弾が襲いかかった。
セイバーは弾丸を最小限の動きで躱しながら次にきた砲弾を縦に真っ二つに切り裂く。 しかし、砲弾を切り裂いた先にはまた新たな砲弾が迫っていた。
ガガガッ、と音を鳴らしながらセイバーは剣を持っていない方の手で砲弾を受け止める。並大抵の威力ではない砲弾をセイバーは少し手間取る程度で受け切った。
そして、勢いを殺された砲弾はセイバーの手からこぼれ落ち、床に落ちるはずだった。
「ふん!!」
セイバーはまるでバッターのように剣を構えるとこぼれた砲弾へと向け、思いっきり振り抜いた。ガァン!!と鈍い金属音が鳴り響き、砲弾は持ち主の元へと向かっていく。
「ッ!?」
サーヴァントの動きに少し戸惑いがあったがすぐに顔を横へと逸らしてかわす。どうやら相手のサーヴァントもさすがに今の攻撃は予想していなかったらしい。
「おいサーヴァント。どこを見ている?」
「いつの間にッ!?」
少しサーヴァントが目を逸らした隙にセイバーは一気に加速し、相手との
距離を詰めた。相手もすぐに応戦しようと銃を構えるが、
カンッ!
セイバーがサーヴァントの銃を剣で弾く。銃は宙高くに浮かび上がり、とても取りに行けるような距離ではない所まで飛ばされた。
「くッ!!」
これでは反撃のしようがない、そう判断したサーヴァントは後ろへと後退しようとするがセイバーの剣の間合いからは逃れていなかった。
「これで詰みだ!」
セイバーが剣を前に突き出す。この攻撃が通れば、相手のサーヴァントはただでは済まない。この勝負、セイバーの勝ちだ!
そう思った時だった。
セイバーの剣が相手のサーヴァントの腹を貫こうとする寸前、ムーンセルから戦闘中止の合図がきた。それと同時にセイバーは敵を目前にして攻撃をピタリと止める。
「ちっ、あともう少しのところで……」
忌々しそうに言いながら、武器を下ろすセイバー。
「な、何やってやんだよお前!!それでも僕のサーヴァントかよ!!」
その後、慎二が情けない表情を浮かべながらサーヴァントに駆け寄っていく。サーヴァントの方は自分が死にかけたというのに笑みを浮かべながら不機嫌なマスターの対応をしている。
「あんたの為に戦った私があんたに罵られるとは…慎二ィ、やっぱりあんたは良い悪党だねぇ」
「何訳分かんないこと言ってんだよ!とりあえずこっちはお前に金を払ってるんだ!その分働いてもらわないとこっちも割に合わないんだけど!?」
「大丈夫だよ慎二。最終的に勝つのは私達だ。大船に乗ったつもりでいりゃあ良いんだ!」
サーヴァントはあははと笑いながら慎二の背中をバンバンと叩く。叩かれる度に慎二から痛い!痛い!と悲鳴が聞こえてくる。見る限り、二人はなかなか良いコンビだと思ってしまう。
慎二はこちらをキッと睨み付けると、口を開けてこう言った。
「はん!今回たまたま勝ったからっていい気になるなよな!次はこうはいかないから覚悟しとけよ!」
そう言うと、慎二はアイテムを使いこの層から消えていった。
そして、嵐が過ぎ去ったかのようにこのフロアはシーンと静まり返る。
「……」
辺りを見渡せばデコボコになった床、散乱した岩壁などが散乱していた。本当に嵐が通り過ぎた、そう言っても過言ではない。
サーヴァント同士の戦闘でここまでフロアの形を変形させてしまうのはそれほどの力を持っている事が見てとれた。
「さて、うるさいのが消えたは良いがこれからどうする?」
セイバーが問いかけた。
「そうだな、とりあえず行ける所までこのフロアを散策してみるか」
「心得た」
そして、セイバーと俺はこのフロアの散策を続けた。
白羽の後ろを歩くセイバーは自分を恥じていた。相手への油断から招いた結果からの事態にまさかこのような事が起こるとは思わなかった。
気丈に振舞ってはいたが、彼女の左手は異常事態に侵されていた。
相手のサーヴァントの砲弾を片手で止めたあの時、彼女は手首に違和感を覚えたのだ。一時的な物だと思われたそれは戦闘が終わった後でも消えず、セイバーに不快感を与え続けていた。
セイバーはそんな不快感を脱ぎ去るようにギュッと手を握った。
(こんな物…どうってことない!)
そう己に言い聞かせながら次へと歩き進めるのだった。
後書き
そう言えばアニメFate/stay night 始まりましたね!
バトルの描写がカッコイイですよね!
ランサーとアーチャーの戦闘シーンがヤバイ!!
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