魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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無印編
ジュエルシード
それは不思議な夢だった。
暗い森の中、一人の男の子が何かから逃げている。
森の奥からやってきた『ソレ』はあたりを破壊しながら少年に向かっていく。
少年はそれを避け、光の盾で防いでいくが、防ぎきれずに怪我を追っていく。
『くっ!?君はこんなところにはいちゃいけないんだ!?』
少年が何かを叫ぶ、はっきりと聞き取れるはずなのに、何を言っているのかよくわからない。
『妙たえなる響き、光となれ!!赦されざる者を、封印の輪に!!ジュエルシード、封印!!』
少年が掌から小さな紅い宝石を取り出し、呪文を発すると、光が満ち溢れ、『ソレ』を捉える。
だがしかし、『ソレ』は光を振り切り、どこかへ逃げてしまった。
『ぐっ!?』
やがて力尽きたのか、少年は倒れる。
『逃がし・・・・ちゃった。追い・・・かけ・・・なくちゃ。誰か・・・僕の・・・声を・・聞いて。ちか・・・・・・ら・・・を・・・・・貸して・・・・・・・・』
魔法の力を・・・・・・・・・・・・・・・。
「変な夢なの・・・・・」
高町なのははそこで目が覚めた。
妙な夢を見たと思ったが、不思議とどんな夢か所処あいまいになっている。
まあ、夢だからと割り切り、着替えて朝食のためにリビングへと向かう。
その後は、母の桃子に頼まれ、道場で稽古中の兄と姉を呼びに行った。
「お兄ちゃーん!!お姉ちゃーん!?」
「おお、なのはか」
「おはよう、なのは」
「もう朝食の準備できたから早くおいでってお母さんがー!?」
「ああ、分かった」
「すぐに行くね」
その後、家族全員で朝食を食べ、スクールバスのバス停まで向かった。
「アリサちゃん、すずかちゃん、龍一くん、おはよう」
「おはよう、なのはちゃん」
「おはよう、なのは」
「高町か。おはよう」
なのはがバス停に着くと、すでに三人が並んでいた。
余談だが、すずかの秘密はなのはには話していない。
龍一たちの『特に積極的に教える必要もないから、ばれたら話そう』と言う意見からである。
「それでね、今日不思議な夢を見たの」
バスを待っている間に、なのはが三人に夢の内容を語っていた。
ほとんど覚えてなくあいまいな内容ではあったが、見知らぬ少年がモンスターと戦っていたという大まかな筋書きだけは覚えていた。
「ふーん。不思議な夢ね」
「ゲームのしすぎじゃないの、なのは?」
すずか、アリサは夢の話だからとあまり関心を示していなかった。
(恐らく、ユーノのことだろう。ってことは今夜あたり原作が始まるってことか)
そう龍一が考えていると・・・。
「やあ、おはよう!!俺の嫁たち!!」
バス停に突如、残念イケメンの少年が現れ(名前なんだっけ?)、なのはたちに気持ちの悪い笑みで挨拶してきた。
「お、おはようなの・・・」
「なによ・・・」
「おはよう・・・」
3人は嫌そうな表情を浮かべ、少年に挨拶する。
「おい、モブ!?何、俺の嫁たちに付き纏ってるんだ!?あの娘たちが嫌がってんのが分かんねえのか!?」
「はあ?」
いきなり少年の意味不明な言いがかりに、龍一は困惑する。
「誰が、あんたの嫁よ!?」
「相変わらず、アリサはツンデレだなあ」
「うるさい!?頭に触ろうとするな!?」
少年がアリサの頭に触ろうとするとアリサはその手を叩き落とす。
なのははその光景に苦笑し、すずかは龍一の陰に隠れる。
周りの人間も含め、この場にいる全員が迷惑そうな顔をしていたが、少年はそれに気づかず3人になれなれしく話しかけていた。
「いいか!?今度俺の嫁に付き纏ったらただじゃおかねえぞ!?」
結局、バスを降りるまで彼の話は続き、バスを降りた後は、また別の女性に話しかけに行った。
「災難だったな。3人とも」
「そう思うんなら助けなさいよ」
「会う言うタイプは何言っても聞かん。気が済むまで無視し続けるに限る」
「にゃはははは・・・疲れたの」
「ごめんね、龍一くん。ずっと盾にしちゃって」
「まあ・・・気にすんな」
そう言いながら、3人は教室に向かった。
昼休み。
龍一はいつも通り一人で昼食にしようと弁当を広げると、案の定、3人に屋上まで連行され、一緒に食べ始めた。
「・・・将来かぁ・・・・」
突然、なのはがそう呟いた。
恐らく、今日の社会科の時間にやっていた『将来なりたい職業』が原因だろう。
「アリサちゃんとすずかちゃんはもう結構決まっているんだよね?」
「家はお父さんもお母さんも会社経営だし、一杯勉強してしっかり跡を継がなきゃってくらいだけど?」
「あたしは機械系が好きだから、工学系で専門職がいいなって思っているけど」
前世のころから思ってたけど、本当に君たち小学3年生?
普通の3年生はそこまで明確なビジョンを持っていない人間が大半だし、『工学系』だの『専門職』だのと言った難しい言葉は知りません。
「二人とも凄いなー」
「なのはは『翠屋』の2代目じゃないの?」
「うん・・・それも将来のビジョンの一つではあるんだど・・・やりたいことは何かある気がするんだけど、まだそれが何なのかハッキリしないんだ」
それが普通です。
「あたし特技も取り柄も特にないし・・・」
「馬鹿ちん!?自分からそんなこと言うんじゃないの!?」
「そうだよ!?なのはちゃんにしかできないこときっとあるよ!?」
なのはの言葉に二人はもう反論する。
「大体、あんたは理数の成績はこのあたしよりいいじゃないの!?それで取り柄がないとはどの口が言う訳!?そうよね、龍一!?」
「俺かよ・・・」
3人で盛り上がっているところに、いきなり龍一に話が振られた。
「だってなのは文系苦手だし・・・体育も苦手だし・・・」
「なのは、言っておくけどそんな人間ざらにいるぞ」
「ふえっ!?」
「大体理系も文系も体育も全部得意な人間なんてそういねえよ」
「でも皇治くんはそうだよ」
「全人類をあんなダメ人間と一緒にするな」
「そうよ!?」
「なのはちゃん・・・」
「にゃははは・・・・・・」
「それに僕の父さんが言っていたことなんだけど・・・」
「何よ?」
「『人間は『取り柄』を仕事に選ぶのは非常に稀なことで、大半の人間は『仕事』が取り柄になる』ってさ」
「どういうこと?」
「アニメやマンガみたいに何かずば抜けた才能を持っていて、それを職業に選ぶ人間なんてほとんどいないってこと。大半の人間はなりたい職業の為に努力して、何度もこなしていくうちにそれが取り柄になっていくってことだよ」
「うーん。良く分かんないの」
「要するに、まだ子供なんだから取り柄がことがないからって気にするなってことよ」
「そうだよ、なのはちゃん」
「それに『『取り柄』だけで職業を選んでも失敗することも多い』とも言ってたし、何より僕たちはまだ3年生だぜ?なのはみたいに将来何になりたいか決まっていない人間が大半だよ」
「そういう龍一くんは将来決まっているの?」
ふと疑問に思ったのか、なのはが聞いてくる。
「僕かい?そうだな・・・父さんの後を追って刑事を目指すのもいいし、親戚の家の手伝いをしたり、もしかしたら跡を継ぐかもしれない。もしかしたら、まったく別の事をしているかもしれないしなあ。なのはと同じで特に何も決まってないよ」
「そっか、わたしと同じなんだね。なんか自分と同じ人がいるって知って、少し安心したの」
そう言いながら昼休みは過ぎていった。
そして、放課後。
塾があるため、龍一と別れた3人は、公園に差し掛かっていた。
しかし、公園はひどく荒らされている状態で、事件現場に張られる立ち入り禁止のテープが張られていた。
「あの~?」
「どうしたんだい?」
「一体何があったのですか?」
アリサが警察の人に尋ねた。
「ああ、誰かが公園を滅茶苦茶にしたみたいでね、悪戯にしちゃたちが悪いから、僕たちが呼ばれたんだよ」
「そうなのですか?」
「どうかしたのかね?」
警察の人と話していると、二人には聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「「龍一(くん)のお父さん!?」」
「君たちか、危ないから下がっていなさい」
そこには、なんと剛がいたのだ。
「(・・あの、すみません)」
「(なんだ?)」
「(剛さんが出て来たってことは、もしかして魔法関連ですか?)」
「(まだハッキリとは断定できないが、その可能性があるようだ)」
「(そうですか・・・)」
「(だから、何があるかは分からないから、あまり暗くならないうちに家に帰りなさい)」
「(ハーイ)」
ひそひそと話すアリサと剛。
「すずかちゃん、この人と知り合いなの?」
「龍一くんのお父さんの剛さんだよ」
「そうなの?初めまして!?龍一くんのお友達の高町なのはって言います!?」
すずかと話していたなのはが剛に自己紹介をする。
「君がなのはちゃんだね?息子から話は聞いているよ。これからも息子と仲良くしてやってほしい」
「はい!!」
剛たちと話し終えたなのはたちは、塾に向かおうと歩き出す。
(ここ、昨日夢で見た場所?)
なのはは先ほどから感じていた違和感に気付いた。
すると・・・・。
『助けて!?』
「!?」
突然、頭の中に直接声が聞こえ、声が聞こえてきたと感じる方向へと何かに突き動かされるように突き進むなのは。
「「なのは(ちゃん)!?」」
なのはの行動に驚きながらの、後を追いかける2人。
すると、少し行くと、そこには傷だらけのフェレットが倒れていた。
「フェレット?」
「どうしたの?なのはちゃん?」
「すずかちゃん、そこにフェレットが」
「大変!?傷だらけじゃない!?すぐに病院に連れて行かないと!?」
「そこは動物病院だよ、アリサちゃん」
「分かってるわよそれくらい!?急ぐわよ、Hurry!!Hurry!!Hurry!!」
直ぐに3人は、そのフェレットを近くの動物病院まで運ぶ。
その後、そのフェレットは治療を終え、一端、柏原動物病院で預かってもらうこととなった。
夜。
龍一はなのはからのメール(放課後のことについて書かれていた)を確認しながら宿題をしていた。
すると、突然・・・。
『・・ザア・・僕の声・・ザア・・・・力を貸して!?』
何処からか念話がかかってきた。
(念話!?)
気付いた龍一は一瞬迷う。
このまま彼女に関わるべきか否か。
だが彼にはすでに『見捨てる』という選択肢はない。
(『知っていて何もしなかったから大怪我しました』じゃ後味悪いからな)
そう自分を納得させ、家の戸締りをしてユーノの元に向かう。
今日、父は残業で家にはいない。
虚空瞬動で駆け出してすぐに気付く。
(動物病院ってどっちだ?)
あまりにうっかりミス。
彼には遠坂の血でも入っているのだろうか。
取りあえず、魔力がどの方向からくるのかを探る魔法を使い、大まかな距離と方位を確認して、そこに向かって虚空瞬動で駆け抜ける。
一方その頃。
「にゃあー!?なになに!?一体何なの!?」
「来て・・くれたの?」
「ふえ?えーーー!?喋った!?」
動物病院に着いたなのはは只今絶賛モンスターに襲われ中でした。
「なんだか良く分かんないけど、一体何が起こってるのーー!?」
なのははモンスターに襲われながらも、ユーノを抱きかかえながら逃げていた。
「君には資質がある」
「資質?」
「僕はある目的の為に、ここではない別の世界から来ました。でも、僕だけでは目的を遂げることはできないかもしれない。だから、迷惑なのは分かっているけど、資質を持ったあなたに協力してほしいんだ!?」
「急にそんなこと言われても!?」
「お礼はします!?必ずします!?だから僕の力をあなたに使ってほしいのです!?僕の力、魔法の力を!?」
「魔法!?」
本来なら空想の産物でしかないその言葉に、戸惑っている隙に、モンスターがなのはたちを襲う。
「ヒャッハーーー!?」
「「!?」」
「助けに来たぜ!!俺の嫁!!」
そこに皇治が乱入してきた。
「けっ!?雑魚が!?『エア』セットアップ!!」
『イエス、マスター』
皇治の手の中の宝石が輝き、黄金の鎧のバリアジャケットの姿に変わる。
「デバイス!?そんな、この世界は魔法文明0のはず!?」
「おい淫獣!!」
「インジュウ!?」
「俺様が抑えてやっているんだ、とっとと終わらせろ!!」
「は、はい!?」
ユーノはなのはに紅い宝石を渡す。
「管理権限、新規使用者設定機能フルオープン」
ユーノがそう唱えると、なのはの足元に桃色の魔法陣が現れる。
「繰り返して・・・『風は空に、星は天に』・・・」
「『風は空に、星は天に』」
「『不屈の心はこの胸に』・・・」
「『不屈の心はこの胸に』」
言葉を紡ぐたびに、紅い宝石の鼓動が大きくなっていく。
「「『この手に魔法を、レイジングハート、セ―――――――ト、ア――――ップ』!!」」
『スタンバイレディ!!セットアップ!!』
その瞬間、なのはから桃色の光が迸り、昼間のように明るく照らし出した。
「なんて魔力だ・・・」
そのあきれた魔力量に、協力を求めたユーノのほうがかえってあきれてしまうほどである。
『はじめまして、新しいマスター』
「ふえっ!?は、はじめまして」
『あなたの魔法資質を確認しました。デバイス・防護服共に最適な形状を自動選択しますがよろしいでしょうか?』
「えっと、とりあえず・・・はい!!」
『オールライト!!スタンバイレディ!!』
そして、なのはは光に包まれ、光がやむと、デバイスとバリアジャケットを展開した状態になっていた。
「成功だ」
「ふ、ふぇーーー!?」
なのはは突然の事態についていけず、おろおろしていた。
すると・・・。
『グオオオオオオオオオオオオ!!』
皇治が足止めしていたモンスターが複数に分裂し、なのはに襲い掛かる。
「キャ―――――!?」
『プロテクション』
魔法についても戦闘についてもド素人のなのはがそれに対処できるはずもなく、レイジングハートの補助でどうにか切り抜けた。
「俺様の嫁に手を出してんじゃね―――ぞ、雑魚が!?」
『ゲート・オブ・バビロン』
皇治の後ろから黄金のゲートが出現し、大量の剣がそこから飛び出し、モンスターに向かっていった。
「派手にやってんなー」
一方、龍一の方は現場から500m離れているところまで来ていた。
そこから内功で強化した視力を使って戦いを見ていたので。
「だけどまずいな・・・被害が」
皇治がゲート・オブ・バビロンを使用し、剣の弾幕を張る。
その大半は当たらず、町に甚大な被害を出していた。
今はまだ、なのはが戦闘に慣れておらず、回避に専念しているからいいものの。もし、彼女まで砲撃を撃ち始めたら、もっと被害が出るだろう。
「しゃーない。ここで終わらせる」
龍一は現地に行くよりも、ここから狙撃した方が早いと判断して、背中の麻袋から、自分の礼装を出す。
魔法礼装『飛穿・二式』。
誕生日祝いに父が作ってくれた和弓型の礼装である。
弦を張り、変形の魔法でキーホルダーサイズまで小さくしていた杭を元の大きさに戻し、矢として構える。
礼装に魔力を込め、威力と飛距離を高める。
同時に、矢に封印の術式を封入し、狙いを定める。
「行け!!」
矢を放し、矢が凄まじい速度で飛んでいった。
「っ!?気をつけて、何か来ます!?」
ユーノが叫び、警告を促す。
『プロテクション』
ある程度、現状になれたなのはが射撃魔法でモンスターをけん制し、砲撃を放とうとしていたところ、レイジングハートの警告に防御姿勢をとる。
すると、どこかから灰色に光る矢が飛んできた。
それは、モンスターに命中すると、凄まじい光を放った。
「きゃあああああああ!?」
光が収まると、モンスターの姿は何処にもなく、代わりに蒼い宝石が浮かんでいた。
「これは?」
「これがジュエルシードです。レイジングハートで触れて」
「こ、こう?」
なのはがレイジングハートで触れると、デバイスのコアの部分にジュエルシードが格納された。そして、レイジングハートは元の宝石に戻り、バリアジャケットも解除された。
「ありがとうございます」
「いいよ、お礼なんて」
「それにしても、さっきの狙撃といい、あの金色の鎧の少年といい、この世界はどうなってるんでしょう?」
「なのはにも分かんないよ」
なのはとユーノが話していると、いつの間にか皇治はいなくなり、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
「えーと?このままここにいると非常にアレなのでは?」
「そうだね。とにかくここから離れよう」
「えーと、その・・・とりあえず、ごめんなさーーーーーーーい!?」
1人と1匹はその場を後にした。
「やれやれ、どうやれ無事に終わったみたいだな」
龍一が礼装をしまい、帰ろうとすると・・・・・。
「おい!?待ちやがれ、てめえ!?」
「うん?」
龍一が振り返ると、そこにはバリアジャケット姿のままの皇治が立っていた。
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