魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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無印編
いざ海鳴へ!!
転生してから9年の年月が過ぎた。
この9年間、色々手を尽くしてこの世界のことについて調べてみた。
まあ、小学校の低学年生にできることなどたかが知れているので、情報源のほとんどは、父とその友人たちだったが・・・。
ちなみに、父は警察局本庁の『第零課』と呼ばれるところに勤務している刑事で、母は僕が生まれてすぐに死んでしまったらしい。
あの糞ババァ(笑)が言っていた『原作の世界観をベースとした並行世界』の意味がよく分かった。
父から聞いた話には、原作に登場しないような単語がいくつも出てきた。
まず、日本には原作には全く登場しなかった独自の国家魔法機関が3つ存在するらしい。
父が現在所属している『警察局特務捜査機関』(通称:第零課)とは、魔法、超能力者、悪霊、化け物による事件を捜査する組織らしい。
他の2つに『警察特別機動隊』と『国家機密情報局』があるようだが、そんなに詳しく教えてはくれなかった。
元々、父はリンカーコアこそ持っていないが『気功術』の達人で、『特別機動隊』の中でもかなりの実力者だったが、とある理由から『第零課』に移ってきた変わり種らしく、刑事の中でもとりわけ荒事に向いているらしい。
『気』と『魔力』の違いは追々説明するとして、父たちの会話の中には『ヘルシング機関』や『イスカリオテ機関』、それに『概念武装』や『死徒』なんて単語が交っていたから、恐らくこの世界は『リリカルなのは』だけでなく『HELLSING』と『型月』の世界観まで交っているようだ。
なにその死亡フラグの大バーゲン?
それを知ったとき、僕は心に決めた。『絶対に原作には関わらない』と。
僕の転生先が海鳴市でなかったことが不幸中の幸いだろう。
神様特典で、平均以上のリンカーコアを持って生まれた僕は、当然のように父やその同僚たちの指導の下、物心ついた頃(と言っても生まれた時から意識がはっきりしているので、正確には5歳前後から)から、魔法の訓練を行っていた。
特典のおかげで、結界魔法を中心とした補助魔法に対して、高い適性を発揮していたが、今や零課の結界魔導師を抜くかもしれないレベルに達してしまっているのにはさすがに驚いた。
小学校に通い、父から軽い訓練を受け、友達と遊び、宿題をする毎日。
特に原作に関わることもなく暮らしていたある日のこと。
「龍一。話がある」
「なに、父さん?」
「来年の春休みだが・・・父さんに鳴海市ってとこに赴任するように辞令が来たから、引っ越すことになった」
「はい?」
オウ、ジーザス。
世界の修正力は甘くなかった。
「それと、向こうの学校だが、聖祥大附属小学校ってとこに転校手続きしておくから、今のうちに友達にさよならを言っておきなさい」
こうして、僕は海鳴市にやってきた。
それから、僕は元の学校の友達にお別れを済ませ、新しい小学校の編入試験も終わり、海鳴市を散歩していた。
(とうとう来てしまった・・・いや待て、まだ原作に関わることが確定したわけじゃない!!ジュエルシードはなのはたちに任せれば自然と解決するし、ヴォルゲンリッターに襲われないように、隠蔽結界も施してある!!同じクラスになる可能性など6分の1だし、なったとしてもこちらから近づかなければ彼女たちと深く関わることもないだろう!!よし、まだ希望はある!!)
ちなみに、龍一は魔力値はAA+だが、独自の隠蔽結界で魔力を封じ込めているため、感知能力に特化した魔導師でもない限り、見破ることは不可能である。
「・・・ちょっと・・・・・・・やめてください!!」
龍一が思案していると、遠くから女の子の声が聞こえてきた。
「?」
「・・いいじゃんか・・・・・僕たちと遊ぼうよ・・・・」
よく見てみると、自分たちと同じくらいの男の子たちが、一人の女の子に対してしつこく迫っているようである。
俗に言う『ナンパ』である。
女の子の方は、何度もはっきりと断っているようだが、それでも男の子たちはしつこく迫っていた。
(はー。最近のガキは進んでいるんだなー)
などと至極どうでもいいことを考えていた。
「(仕方がないか・・・)あ~!!いたいた!!こんなところにいたんか!!」
「「「!?」」」
男の子たちの間を抜け、女の子に近づき声をかけた。
「・・・?」
(まずい、この娘キョトンとしている!?ぼろが出る前にズラかろう)
「いやー、探したよ。どこ行ってたの?みんな待っているから早くいくぞ」
「ちょっと待てよ!?あんた誰だよ!?」
「そーだ!?横から出てくんなよ!?」
「いやー僕はこの娘の友達で・・・」
「あなた・・・だれなの?」
「「「っ!?」」」
女の子の一言で固まる空気。
(このアホー!!空気読んでよー!!)
小学生にそれは酷であろう。
「関係ない奴は引っ込んでろ!!」
「「そーだそーだ!?」」
とたんに、男の子たちから野次が飛び交う。
「はー」
(仕方ない。こうなったらヤケだ)
「たっく。引っ込めだ?それはこっちのセリフだ!?」
「「「何!?」」」
「さっきから見ていれば!?この娘も嫌がってんじゃないかよ!?それを男のくせに寄ってたかって・・・気に食わねえんだよ!?」
「てめえ!?」
男の子の一人は沸点が低かったのか、いきなり殴りかかってきた。
だが・・・。
ブオッ!!
ドガッ!!
龍一はその腕をつかみ、受け流して男の子を壁に押し付けた。
そのまま、腕に関節技を決めた。
「痛ダダダダダダダダ!!ギブギブギブギブ!!」
仲間の一人の痛がる声に、やはり小学生ゆに一目散に逃げ出してしまった。
腕を決めていた男の子も開放し、「覚えてろよー」の捨て台詞を残して去って行った。
(現実にあのセリフ言う人間がいたんだな)
「あ、あのー?」
「?」
「助けていただいてありがとうございました!!」
「別にいいって。僕が気に食わないから助けただけだよ」
「でも・・・あの・・・」
女の子は何かを言いたそうにしていた。
だけど・・・。
「んじゃ!!そろそろ帰らなきゃいけないから!!じゃあね!!」
「あっ!?待って!?」
そう言って、龍一は走り去ってしまった。
(やっぱり、感謝されるのは性に合わねえな・・・)
守宮龍一・・・自称『偽悪家』の少年である。
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