バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
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騒がしい春の協奏曲
第一章 小問集合(order a la carte)
第8,5話 吉井は何故世界史が取れるようになったのか。
前書き
ショートストーリーとは4000~7000字ぐらいだろうから、2000字に満たない文章は超SSとでも呼ぼう。
タイトル通りの後書きに変更しました
妃宮さんの家におじゃました日の晩から、今朝までゲームを徹夜でやってしまい、お陰ですっかり寝不足がちな僕は卓袱台に突っ伏していた。
「吉井君、少しよろしいでしょうか。」
誰かに呼びかけられ、薄く目を開けてみるとそこには我がクラスの天使さ……いやいや妃宮さんがいた。
「その……私のことをそのように思うのは止めて頂けませんか?」
なに!?
「僕はまだ何も…」
「きっちり天使って声に出していらっしゃったじゃないですか。そもそも私はそのように呼ばれるなど恐れ多いというのに。」
何をいっているのか、ほとんど働いていない僕の頭では理解できないが取りあえずそんな風に思わないでくれという事なのだろう。
「うん……分かったよ清純派お妃様……」
「……」
何だろう、少し妃宮さんの様子が少しおかしい気がする。
僕は何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか。
「こほん、吉井君。あなたは姫路さんに転校の話しが持ちかけられているかもしれない、と言われましたらいかがなさいますか?」
「えぇ、何だって!!!」
それまで寝ぼけ半分だった脳味噌が一気に覚醒した。
姫路さんが転校ってどう言うことだよ。
急に叫んだ僕に対して周囲から冷たい目線が浴びせられるが、そんなことは今は二の次だ。
妃宮さんに詰め寄ると、彼女は口の前に指を立て声が大きいですよと小さな声で注意される。
「その話、本当?」
「ですからまだ仮定の話です。しかしそうなる可能性は十分に考えられます。」
いたって冷静な妃宮さんの言葉に冷や水をぶっかけられたような気分になる、そしてだんだんと騙してくれたことに腹が立ってくる。
どうしてそんなことを考えるんだよ、まだ分からないって言うのに。
そんな僕に彼女はその端正な顔を近づけて耳元でこう囁いた。
「ですが…姫路さんの体は平均よりも弱く、このような衛生的にも、周りの人間の環境も悪い教室で勉強することを余儀なくされているというのをご両親がお知りになったらどう考えるでしょうか。」
その声に思わずぞくりとしてしまった。
いつものソプラノな声なのに、僕の心にぐっさりと刺さるような強さがあった。
思わず小声でしゃべえる妃宮さんにあわせて僕は問い返した。
「どうって、どう考えると妃宮さんは思うの?」
「結果至上主義の行き過ぎているこの学校は、生徒の体調にさえ気を配らない。体の弱い瑞希の為にも転校先の高校を考えるべきだ、と。」
体の弱い瑞希、その言葉に教室に舞っている埃とせき込んでいる姫路さんが思い浮かんだ。
「親とは子供にとって最高の状況を提供したいと思うものだとすれば、恐らく姫路さんは……」
とてつもなく硬い声で彼女はそう続けた。
そこまで言われて僕はようやく気が付いた、妃宮さんも姫路さんのことを考えてくれていたんだ……
姫路さんのために、僕はこの試召戦争でAクラスに勝たないといけないんだ。
「ですから、吉井君には一科目に範囲を絞ってまず頑張っていただきたいのです。もちろん私も協力いたしますよ?」
彼女の背から後光が差して見えるよ。
思わず彼女のその手を取り僕は宣言してしまった。
「妃宮さん、僕も出きる限りのことをするよ!!」
「その調子です、その姿勢尊敬しますよ。」
そして妃宮さんはとびきりの笑顔で僕にこう告げると、周りの級友たちが騒ぎだす。
「俺も妃宮さんに尊敬されてぇ……」
「なら俺たちも……」
「「「うっしゃあ!!俺も勉強する気が急に沸いて来よったわ!!!!」」」
あぁ、クラスのみんなも妃宮さんに間近で微笑んで貰いたいんだ。
「その前に俺たちには殺らなきゃ成らないことがある。」
「「「もちろんだ会長!!」」」
「勉学の前にちょっと吉井を殺るぞ!!」
「「「イエッサー!!!」」」
「えっ何でそうなんの!?」
黒い覆面に取り囲まれ、すっかり僕は逃げるタイミングを失ってしまった。
さっきまで僕の真っ正面にいたはずの妃宮さんは、何故か包囲の人垣の向こうで雄二と話している。
「我らの結束をより固めるため、奴を生かしておくな!」
「「異端者には制裁を!!」」
「ちょっと待って、それなら雄二も!!」
「「「我らの正義の鉄槌を!!」」
僕は学んだ、人数の暴力の前に一人の人間の主張など聞き入れられないと言うことを。
後書き
妃宮「そもそも、歴史を学ぶ上で、私たちは絶対に知っておくべき二地域があります。それは中国と西欧です。例えば日本を例えにとっても中国とは縄文時代から交流があったとされ、江戸幕府の鎖国政策にあっても長崎貿易での重要な貿易相手国でした。また西欧諸国は幕末からの歴史をその圧倒的な武力と経済力によって動かされたといっても過言ではありません。」
吉井「えぇえっと、さ。中国史と西欧史って言われるとどっちも同じぐらいに聞こえるんだけど、西欧史のほうが範囲は大きくないかな?」
妃宮「私は日本史も学ぶのであれば中国史も深く知るべきだと考えています、その理由は先ほども申しましたが日本文化の根底は基本的に中国から学んだもので、例えば茶道という文化一つをとっても、大本は中国の点茶法を下にして発達してきました。」
吉井「え?茶道って日本特有じゃないの?」
妃宮「一説では、臨済宗の開祖となる栄西が日本に持って帰ったのが我が国の茶の始まりとも言われていますよ。」
吉井「へぇ、知らなかったよ。日本ってそんなに中国と関係あるのか…」
そして彼らの歴史講義はまだまだ始まったばかりである。
妃宮「そもそも、中東諸国は……」
吉井「ごめん、妃宮さん。一回ストップ、ストップ……」
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