戦国異伝
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第百八十一話 諸法度その五
そしてだ、全てを読んでからこう言った。
「どの諸法度もよく出来ておる」
「そうなのですか」
「その全てが」
「うむ、見事な法じゃ」
その全てがというのだ。
「御触書にしてもな」
「具体的にはどの様なもので」
「城を勝手に築かせずならず者を匿わず」
そして、というのだ。
「民を害せずな。家臣達の妻子を安土に置き」
「ふむ、人質も取り」
「謀反を起こしにくいようにしておりますか」
「実によく考えておる、しかもな」
顕如はさらに言った。
「泰平になれば三年のうち一度は安土に住む様に言っておる」
「大名達はですか」
「その者達は」
「そしてじゃ」
さらにというのだ。
「幕府ではないが天下を治める仕組みも作っておる」
「天下をですか」
「それも」
「老中なり奉行なりを設けてな」
そして、というのだ。
「天下を治める仕組みも作ったわ」
「そこまで、ですか」
「右大臣は定めましたか」
「織田信長は」
「跡継ぎのことも定めておる」
即ち信長の後もだというのだ。
「何かあった時に織田家から誰を主に出すのかもな」
「ではこれで、ですか」
「織田家は万全ですか」
「天下は」
「次の戦に勝てばな」
だが、だった。顕如はというと。
険しい顔になってだ、こう周りに告げた。
「そうなるであろう」
「次の戦ですか」
「我等との和議が切れる」
「そうじゃ、既に毛利との盟約は結んだ」
それが出来たというのだ。
「後はな」
「和議が切れれば」
「その時が来れば」
「戦じゃ」
顕如は強い声で言った。
「この石山を賭けてな」
「負ける訳にはいきませぬな」
「今度こそは」
「確かに石山以外は全て敗れた」
顕如も言う、このことを。
「しかしじゃ」
「はい、それでもですな」
「我等は」
「この石山御坊がある」
他の場所で敗れようとも、というのだ。
「はい、多くの門徒達もいます」
「それに鉄砲も兵糧もあります」
「雑賀衆も入っておりますし」
「負けませぬな」
「そうじゃ、しかも堀は広く深く城壁も高い」
この堅固さもあるからだというのだ。
「何があろうともな」
「敗れることはありませぬな」
「我等が」
「そうじゃ、そしてこの石山がある限りじゃ」
顕如は強い口調で側近の高僧達に述べていく。
「頭さえあればな」
「決して、ですな」
「敗れることはありませぬな」
「うむ、何があろうともな」
勝てないというのだ、こう話してだった。
顕如は高僧達にだ、こうも言ったのだった。
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