戦国異伝
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第百八十一話 諸法度その一
第百八十一話 諸法度
信長は宴の後主立った家臣達を安土に留めたうえで政にあたっていた、本願寺との和睦の刻限が迫るまでの間。
その中でだ、信長は天主の己の座から前にいる家臣達に問うた。
「あれ等の進み具合はどうじゃ」
「は、順調です」
「全て」
家臣達はその信長にこう答えた。
「このままいけばです」
「刻限に充分間に合います」
「そちらはかなりです」
「我等が言うのも何ですが」
「それは何よりじゃ、ああしたものがなくてはな」
「天下は治められませぬな」
「全く」
「天下は人が治めるものではない」
信長はこのことを今ここではっきりと言った。
「法じゃ、法が天下を治めるからな」
「だからですな」
「ここであれ等を定め」
「天下を治める礎の一つにする」
「そうされるのですな」
「そうじゃ、しかし」
ここでだ、信長はこうも言った。
「それだけではない」
「はい、もう一つですな」
「さらに」
「戦じゃ」
信長はこの話もした。
「戦の用意もじゃ」
「堺ですが」
丹羽が言ってきた、信長の今の言葉に応え。
「鉄砲をこれまで以上にです」
「買っておるな」
「はい、国友等でも多く作らせております」
「よいことじゃ、これからは鉄砲をな」
「これまで以上にですな」
「多く揃える」
信長は確かな声で言った。
「そしてじゃ」
「はい、あれもですね」
「あれも用いる」
こうも言うのだった。
「本願寺に対してはな」
「あれを用いられますな」
「城を崩す」
即ち石山御坊をというのだ。
「そうするぞ」
「そして、ですな」
「うむ、本願寺と毛利は手を結んでおる」
このことはもう信長も知っている、それで言うのだ。
「毛利の水軍が来る、瀬戸内にな」
「そうして来れば」
今度は九鬼が言ってきた。
「それがしの出番ですな」
「次郎、あれはどうなっておる」
信長はその九鬼に問うた。
「出来てきておるか」
「幾分かは」
「左様か、急ぐのじゃ」
こう九鬼に言うのだった。
「あれでなければ毛利の水軍には勝てぬ」
「村上水軍に」
「あの者達の強さは聞いておる」
伊予にいる村上水軍、彼等のそれはというのだ。
「天下でも屈指と言ってよい」
「確かに。我等と比べても」
織田の水軍を率いる九鬼もこう言った。
「あの者達は強いです」
「だからじゃ」
「あの船で」
「勝つのじゃ」
必ずだ、そうするというのだ。
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