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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別れの時、新たなる旅立ち

<ラダトーム>

「ウルフ…頑張ってリュカさんの義息(ムスコ)になりなさいよ!世界一大変な役職に…」
幼い頃に両親を失って以来ずっと弟のように思ってきたウルフを抱き締めながら、ハツキは永久の別れを告げ涙する。
昨晩の大宴会を終え、宴の余韻が残るラダトーム城の食堂に集まったアルル等は、決意を込めたハツキの別れに驚き言葉も出せないで居た。

「ハ、ハツキ…どうして…一緒にグランバニアへ「言ったでしょ。私はもっと強くなる為に、新たな世界で修業するのよ!」
いきなりの告白に動揺し涙するウルフ…
何とか思いとどまらせようと試みるもハツキの決意は固く、1人で旅立つ準備も終えている。

「ルビス様…私はもういいですよ。これ以上いても別れが辛くなりますし…」
ウルフの頭を撫でながら、少しだけ距離を遠ざけてルビスに旅立ちを要求する。
「ハツキ…新たな世界でも頑張れよ!自ら選んだ人生なんだから、自身に負けるんじゃないぞ!」
元愛人が励ますように言葉をかける。
『黄金の爪』と『星降る腕輪』をハツキから返された時は流石に驚いていたが、彼女の意志を尊重する事が何よりの愛情表現と信じて…

「リュ、リュカさん!何でそんな簡単に納得出来るんですか!?強くなるって言ったって、別の世界に行かなくたってリュカさんが鍛えてやればいいだけでしょう!」
常に姉として振る舞ってきたハツキと会えなくなる事に動揺するウルフは、リュカの態度に腹を立て怒鳴り散らす。

「ウルフ…自分の都合ばかりを言うな!ハツキだって色々考えた結果、この答えを出したんだぞ!寂しい気持ちはよく分かるが、ここは笑顔で送り出してやろうよ…」
「………うぅぅぅ……ハツキー!!!」
リュカに諭されたウルフはハツキに抱き付き、人目(特に彼女(マリー)の目)も憚らず大泣きする。

誰もがその光景を切ない気持ちで見つめ、そして別れの決意を心で高め、ハツキを見送ろうと笑顔を作り出す。
「さぁウルフ…笑顔でお別れを言おうよ…」
ハツキに抱き付いたまま泣くウルフを、マリーが優しく離れさせ説得する。
「…うん…」

『うん』と言ったが涙が止まらないウルフ…
それでもこれ以上ハツキを困らせないよう、頑張って送り出そうと笑顔を作る。
「ふふ…ウルフは良い彼女を見つけたわね。でもリュカさんみたいないい男に早くならないとダメよ。大人で頼れるいい男にね!」
そこまで言うと涙が溢れ出し、慌ててルビスの方へ顔を向け無言で頷き合図を送る。

「ではハツキ…今までに経験してきた事は貴重な体験です。それを忘れず、新たなる世界でも頑張ってくださいね!」
ルビスの送辞に無言で頷くハツキ…声を出すと泣き出してしまいそうで頷く事しかできないのだ。

そして光が彼女を包み込む。
眩い光の中、誰もが目を閉じてしまうのに、リュカとウルフだけが最後までハツキの姿を瞳に焼き付けていた。


朝になり食堂へ集まった途端、いきなりの別れの言葉に慌てた一行だったが、短いながらも心の篭もった別れに切ない気持ちで思いを馳せる。
「さて…後は僕等だね…」
少しだけしんみりした声でリュカが自分らが帰る事を切望する様ルビスに告げる。

「そうですね…それで、何方が此処に残られるのですか?」
ルビスはグランバニアから来たリュカ等以外を見渡し、残る人物を確認する。
「そ、その事ですけど父さん…僕とアルルは共にグランバニアへ行く事になりました…」
「え!?何言ってんの?折角家族が一緒になれたのに、何でアルルをグランバニアへ連れ去ろうとするの?」
てっきりティミーはアレフガルドに残るものと思っていたリュカ…些かキツイ口調で息子を問いつめる。

「昨晩…オルテガさんを交えて話し合った結論です!僕とアルルは此方に残るよりグランバニアへ行ったほうが良いと、結論を出しました!」
アルルと強く手を繋ぎながら、2人揃って力強い瞳で答えきる。
思わずオルテガを見るリュカ。
「……………」「……………」
暫く睨み合っていたが、互いに無言で頷いた。

「そうか…オルテガっちの考えは解った…そう言う事なら僕は大歓迎だよ。ただアルル…勘違いをしないでほしいんだが…」
心を決めたとしても両親との今生の別れに悲しそうにするアルル…
そんな彼女に対し、少しだけ厳しい口調で考えを正そうと語りかけるリュカ。

「僕もビアンカも、君の夫の両親ではない。もう君の両親でもあるんだから、悲しい事があったら何時でも頼っていいんだよ…」
「そうよ…私達はもう家族よ。どんなときでもそれは普遍だからね!」
リュカとビアンカの暖かい言葉に、アルルは勿論アメリアまでもが泣き出してしまう。

「ずるいよリュカちんは…何時もはふざけているのに、こう言う時だけ格好良く決めてさぁ…女の子の心を鷲掴みじゃん!」
湿っぽい雰囲気を嫌ったオルテガが、殊更明るい声でリュカの格好良さを否定する。
「ふふん!僕は息子に嫌われても、娘にだけは好かれようと努力してきたからね!羨ましいだろ!?」
リュカも負けじと応戦する。

すると…
「ご安心ください父さん。僕は嫌ってませんから…僕の大切な彼女(アルル)を泣かせてムカついてますけども、嫌っては居りません。何時か仕返ししてやろうとは考えてますけどね!」
「お、お前ねぇ………」
ティミーも強烈な一撃を繰り出し、リュカを苦笑いさせた。
ハツキに続き、更なる別れにしんみりムードだったのだが、笑いが戻り一同を安心させた。


「さて…ラングはどうすんの?ロマリアに帰れなくなっちゃったけども…どうせお偉いさんに嫌われてるんでしょ?僕達と一緒にグランバニアへ来る?本心はイヤだけど一応誘っとくよ」
絶対不必要な一言を付け加え、リュカはラングストンを気遣うフリをする。

「お心遣い痛み入ります。しかし本心を聞いてしまっては………是が非でもグランバニアへ行かねばならないでしょうね!これからもよろしくお願い致します!」
「………」
美しい程の敬礼で挨拶するラングストンに、言葉も出てこないリュカ。

「めんどくせぇ奴等がみんなグランバニアへ集まって行く…やっぱりこっちに残ろうかなぁ…」
辟易した声で溜息混じりに呟いたのはティミー。
縋るような瞳でオルテガを見つめるが、両手の甲を上に振り『シッシッ』とばかりに寄せ付けず見放される。

「あはははは、諦めろティミー!帰ったらお前は王子として国民に発表してやる…ラングはお前の部下にしてやるから、喜んでプリンスライフを堪能しろよ!」
「げぇー!」
今日一番の顰めっ面をする王子様。
「よろしくお願いしますティミー殿下!私の経験上、私の上司になった方々は、80%の確率で過労と胃潰瘍になっておりますので、そこんところ留意くださいませ!」
ティミーとは対照的に嬉しそうな顔のラングストン。
カンダタは笑いすぎで窒息しそうになっている。

「おいカンダタ。大笑いしている場合じゃねーぞ!お前は絶対に連れて帰らないからな!」
殊更酷い言い方で吐き捨てるリュカ。
「な…べ、別に俺はこっちに残るつもりだけど、そんな言い方ねーだろ!」
思わず文句を言ってしまうカンダタ…
だがリュカは怒る訳でもなくカンダタにワケを告げる。

それは…



 
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