東方紅魔語り
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第一章 紅魔館
Part2 携帯
前書き
はい、ただいま『虫』という自然兵器を目の前にしながら失礼します。
第二話、執筆完了しましたので投稿します。
今回のテーマは『携帯』です。
それでは読者の皆様、今回もゆっくりしていって下さい!
「これは夢か?いや夢ではない筈、むしろ夢だったら明日の学校休んで一晩中寝る」
「なにいってるの?」
目の前の金髪少女、フランドール・スカーレットが話しかけてくる。
憧れた存在であるフランドールに話しかけられ、嬉しさのあまり、体の痛みすら忘れて飛び跳ねそうにすらなる。
「どうもフランさん、俺の名前は有波(あなみ) 布羽化(ふうか)、是非ともお見知りおきを」
「・・・まず起き上がれば?」
倒れている自分に向かって、はい、と手を差し伸べてくれた。
もうそれだけで十分だが、お言葉に甘えて、フランの手を掴んだ。
「よいしょっと」
フランが引き上げようと力を込めてくれた。
もう死んでもいい、と悟りに近いものを開いた。
瞬間。
「ガフッッ!?」
視界が一転、背中に2回目の衝撃が響き渡った。
見てみると、自分の体は壁にめり込んでいた。
フランは此方を見て、キャップの上から頭をかきながら笑顔で。
「ごめーん、力入れすぎちゃった」
もし目の前の人間が友人ならば、俺は即座に殴り返しただろう。だが相手はフラン、怒っても返り討ちだし、そもそも怒れない。
「んー、フランじゃ壊しちゃうかも・・・咲夜に頼んだらお姉様の紅茶に変わりそうだし、美鈴なら大丈夫かな?」
そう言うと、フランは何処かへと歩いていってしまった。
部屋には、恐らく壁のオブジェとなっているであろう自分一人となってしまった。
「・・・痛いって事は、これは夢じゃないんだよな・・・?」
なんとか壁から抜け出し、地面に降り立った。
「とにかく友人に連絡を!」
この喜びを伝えるため、携帯を取り出して友人の番号へとかけた。
だが、何分か待ったが友人が電話に出る様子は無かった。見てみると、ここは圏外。
「んだよ、たくっ・・・ん?」
繋がらず、諦めて適当に携帯のアプリを見ていくと、そこに見たこともないアプリがあった。アプリ名は『幻想郷攻略』。
「ん?なんだこれ」
いつ、どこでダウンロードしたのか分からないが、今はフランが部屋にいなくて暇なのだ。よって、好奇心により起動してみることにした。
起動時間はほぼ無く、一瞬で画面が切り替わる。
そして、その画面には『100』と『0』の数字だけが表示されていた。
正直、どんな意味か分からない。
「0と100・・・?なんだこれ」
とりあえず、100を押してみた。
・・・何も起こらない。
「なんだこれ?完璧にガラクタアプリじゃねえかよ」
はぁー、とため息を吐いて、床に座り込んだ。
途端、異変が起きた。
ドゴン!という、鉄球が床に叩きつけられたかのような轟音と共に、床が沈んだ。亀裂が入り、まるで小さなクレーターのようなものが生まれている。
「・・・そうか、床が脆かったんだな、うん」
恐らく脆くなり、その部分だけ弱かったのだろう。
別の場所に移動して離れるか。と思い、一歩を踏み出した。
・・・先程と同じ音と共に、床が潰れる。
「・・・」
足が床につくと同時に、その床が破壊されていく。
ゆっくりと携帯の画面へ目を向けた。
その画面には、『起動中、100』と表示されている。その隣には『重量』とも。
「・・・握力」
携帯に向かって発音した。すると、重量と表示されていた文字が『握力』に変わった。
足を踏み出す。すると、今度は何事もなく床を踏めた。
「・・・まさかな」
嫌な予感がするが、とりあえず近くの壁へ手を付いた。そして、握り潰すように、指へ力を入れる。
すると、指がコンクリートを軽々と破壊し、そのままその部位を抉り取った。
「・・・」
再度、携帯の画面へ視線を送る。そこには『握力 起動中、100』という表示。
まさかな、とは思う。だが、あまりにも現実的では無い。そう、いま自分が想像しているものが本当ならば、それはもはや完全に東方・・・。
「・・・いや、現実もクソも無いか、フランドールが目の前にいた時点で・・・」
そこまで言い、思わず頭上を見上げ、天井の表面を確認してしまった。そして、おかしな点をアッサリと見つけてしまった。
・・・何故、穴が空いていない?
ここへは落下して辿り着いた筈だ、となれば落下するための原因がある筈だろう。
改めて壁や床に視線を送る。
壁や床は完全なコンクリートで作られている。だが、あの不気味な家は木材で作られていた。
つまり、自分はあの不気味な家ではない、全く違う家の中にいる事になる。
そして思い出した。あの不気味な家の噂は、『神隠し』では無かったか。
それを認識した時、全身から汗が噴き出した。
ヤバイ、ヤバイ。あの噂は本物だったのか。俺はどこにいるのか。
心が恐怖心で埋め尽くされていく。もはや安心など出来ない。
ふと、手の中にある携帯に目を移した。
なんにでもすがる。まず、この恐怖心から逃げなければ。
「き、恐怖心!0!」
二つの言葉を、ただアプリを起動しているだけの携帯にぶつけた。
画面の表示が切り替わる。
『握力』から『恐怖心』へ、『100』から『0』へ。
ただそれだけだった。だが、ただそれだけで『恐怖心』が、まるで嘘のように消え去っていった。
額の汗を拭い、改めて部屋を調べ直していく。
初見の時は気付かなかったが、所々に物が置いてある。どうやらここは物置のようだ。
そこから少し奥に、扉が一つあった。
「・・・」
携帯の画面に目をやる。
にわかには信じられないが、この携帯には不思議な機能が備わっているらしい。
『握力を100』にしたら異様に強くなり、『恐怖心を0』にしたら恐怖心が無くなる。
ゴクリと唾を飲み込む。
本当にそんな機能が備わっているのか・・・よくわからないが、試してみる事にした。
「距離を0に」
画面の表示が切り替わる。
扉のドアノブに向けて手を突き出した。距離は約10m。普通なら届かない距離だ。
だが、何か違和感が存在した。まるで掌に何かあるような、不思議な感覚。
その違和感を回すように、手首を捻った。
ガチャ
という音が聞こえる。見てみると、あんな先にあった扉が空いていた、扉の近くには誰もいない。
「マジか・・・」
絶句していた。
もはや恐ろしいとまで思えてきている。
なんなんだこれは?と。
「・・・移動距離を100に」
携帯の画面はやはり切り替わる。
そして、一歩目を歩いた。
すると、体が重力に逆らうように浮かび、空中を並行移動した。足はまだ床につかない。
ようやく足がついたと思ったその時には、既に20歩分くらいの距離を移動していた。
携帯の画面を確認して、そして確信した。
この携帯には、東方キャラのような能力がある。
「いや、だが」
なんで携帯如きにそんな大層な機能が?と言おうとした瞬間、先程とは違う巨大な扉が開いた。
フランが帰ってきたのか、と思い、凄い笑顔で出迎えた。
だが、その扉の前に立っていた人物は俺が思い描いていた少女では無かった。
銀髪の髪に、メイド服を着た女性。
その女性は自分を見た後、少し目を細めて部屋中へ視線を張り巡らす。
「・・・失礼ですが、妹様はどちらに?」
銀髪の女性は、完全に殺気を帯びた目で睨みながら尋ねてきた。
答えようとしたが、どこにフランが行ったのか、そんなもの知る由もない。
目の前の女性はこの流れで思うに、『十六夜 咲夜』。レミリアと呼ばれる館の長と、その妹であるフランドールに仕えるメイド長。
恐らく紅茶でも出しにきたのだろう。その手には銀のお盆、その上にはコップが置いてある。
ヤバイ、さっきの恐怖心とは別のベクトルでヤバイ。
なにがヤバいのか、それは『この場にフランが居なく、俺がいる』というこの状況だ。フランがいれば何か説明してくれるだろう。だが、この場に説明する人間はいない。
・・・今の咲夜の目には、『侵入してきた正体不明の男』という風に映っているであろう。
とりあえずここは誤魔化すとしよう。
「い、いえ、知りません。多分、外にでも出たんじゃないですかー?」
「そうですか」
咲夜の表情が爽やかな笑顔に変わった。
直後、一本のナイフが弧を描きながら襲いかかってきた。
「うおぁ!!??」
転がるようにナイフの軌道から外れる。
さっきまで自分の頭があった場所をナイフが飛来した。
ナイフを投げた人間、十六夜 咲夜は更に四本のナイフを指に挟むように持ち、その腕を横に振るう。
四本のナイフが弾丸のように射出される。
慌てて床を蹴り、そのナイフから逃れようとした。と、床を蹴った瞬間、不自然に体が浮いた。
重力に逆らうように、床すれすれの距離を、浮かびながら並行移動していく。携帯の能力が起動しっぱなしだったのだ。
一瞬、驚いたような表情を見せた咲夜だったが、すぐさまナイフを構え直すと、その首元にぶら下がっている懐中時計に触れた。
『ーー時よ止まれーー』
後書き
主人公の適応能力が地味に高いですね。実際なら大パニックですわ。
『重量』→『握力』←よく思い付きましたね、私なら速攻でタスクを切ると思います。
さて、次回は『十六夜 咲夜』ですね。
果たして主人公は生き残れるのか・・・。
それでは、次回もゆっくりしていって下さい!
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