戦国異伝
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第百八十話 天下の宴その十七
「では帝のこと、天下のことを」
「はい」
「「右大臣殿にお任せするでおじゃる」
「この織田信長必ずや天下を定めましょう」
「帝には麿からお話させて頂くでおじゃる」
近衛のその口からというのだ。
「その様に」
「お願い申します」
「わかったでおじゃる。朝廷も右大臣殿に支えて頂いているでおじゃる」
銭を出してだ、朝廷もすっかり見違えた。都も信長が上洛してから荒れ果てたものが急激に消えていっている。
だからだ、近衛もこう言うのだ。
「帝と天下を頼むでおじゃる」
「さすれば」
「しかし。まつろわぬ者でおじゃるか」
近衛は信長が言ったその者達についても述べた。
「あの者達は最早」
「おらぬと」
「そう思うでおじゃるが」
いぶかしむ顔での言葉だった。
「古の中に消えた筈でおじゃる」
「それがしもそう思いまするが」
「それでもでおじゃるか」
「どうにも気になりますので」
それ故にというのだ。
「この城も築きました」
「そう言えば聞いたでおじゃるが」
近衛は確かにいぶかしんでいるが信長の話をあながち間違いとも思えずだ、彼に対してこうも言った。
「右大臣殿のこれまでの戦では」
「面妖な者達が多かったのです」
「本願寺との戦で」
「はい、あの時に特に」
「闇の衣を着ていたでおじゃるか」
近衛も彼等のことを言う。
「一向宗の色ではないでおじゃるな」
「一向宗は灰ですな」
「そうでおじゃる、灰の筈がないでおじゃる」
「顕如殿もそう申されていました」
本願寺の主である彼もだというのだ。
「その様な者達は知らぬと」
「それもかなりの数だと聞いたでおじゃるし」
「はい、しかも民の数は減っておりませんでした」
このことも言う信長だった。
「その闇の衣の門徒達をかなり倒しましたが」
「門徒は民百姓である筈というのに」
「これもおかしなことですな」
「全く以てでおじゃるな」
近衛も話を聞いて言った。
「有り得ぬでおじゃる」
「そうしたこともありましたので」
「安土城を、でおじゃるか」
「城そのもの、特にです」
天主をだというのだ。
「結界にしました」
「ううむ、お見事でおじゃる」
ここまで聞いて確かな声で述べた近衛だった。
「やはり右大臣殿は天下の柱でおじゃるな」
「勿体なき御言葉」
「麿は右大臣殿をあくまで応援させてもらうでおじゃる」
支持、それを約束するというのだ。
「帝にもうそう申し上げさせてもらうでおじゃる」
「そうして頂きますか」
「ただ、武田殿と上杉殿でおじゃるが」
信玄と謙信、近衛はこの二人の名前も出した。
「どうも右大臣殿に勝った時は」
「その時が、ですな」
「右大臣殿をそれぞれの家臣にしようと」
「そのことをそれがしも聞いております」
「既に、でおじゃるか」
「それがしをそれぞれの家臣にしようと考えておりますな」
「左様、その通りでおじゃる」
まさにというのだ、近衛も。
「武田殿は右大臣殿と武田殿を」
「そして上杉殿も」
「右大臣殿と武田殿を」
それぞれ、というのだ。
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