美しき異形達
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第二十四話 麗しき和服その十一
「それで百貨店でもさ」
「遊んで、ですね」
「そうしね?あそこ屋上も面白いし」
「八条百貨店は品揃えがいいですからね」
「関東にもあそこまでの百貨店ないよ」
そこまでの百貨店だというのだ。
「いい場所だよ」
「本当にそうですね」
「それじゃあどうする?」
また桜に問うた。
「行くかい?」
「はい、それでは」
桜は微笑んで薊に答えた。
「お願いします」
「それじゃあな」
「あの百貨店は私の家もお店を出していまして」
「ああ、そうなんだ」
「はい、実は」
こう薊に話すのだった。
「それで時々私も」
「あの百貨店に行ってるのか」
「そうしています」
「縁だな」
「そうですね、このことも」
「じゃあ日曜行っても」
「いえ、その時は」
特にと言うのだった。
「薊さんと一緒に」
「下着を買うのか」
「そうさせて頂きます」
「じゃあ行こうな」
「よかった私も」
裕香も出て来た。
「一緒に行っていいかな」
「裕香ちゃんもかよ」
「そろそろ新しい下着買おうって思ってたから」
だからだというのだ。
「それでだけれど」
「ああ、じゃあな」
それならとだ、薊は裕香に笑顔で応えた。
「一緒に行こうな」
「そうですね、二人よりも三人ですね」
桜も笑顔で応えて言う。
「その方が楽しいですから」
「そうそう、じゃあ裕香ちゃんも一緒にな」
「下着買いに行こうね」
「あたしはセクシー系じゃないけれどな」
このことも笑って言う薊だった。
「下着はいいの選ぶ主義だよ」
「スポーティな感じ?」
「ああ、そうだよ」
こうした話を昼してだった、薊は桜達と日曜の約束をした。そうしてその日曜にだった。二人と駅前で待ち合わせをした。
薊は膝までの薄い赤の半ズボンにタイツ、赤のシャツという格好だ。裕香は膝までの青いスカートに白のブラウスである。そして桜はというと。
桃色の和服だった、二人共その桜の和服を見てびっくりして言うのだった。
「いや、ちょっとな」
「そうよね」
「まさか和服なんてな」
「想像していなかったわ」
「確かに桜ちゃん和服派だけれど」
「今それで来ることはね」
「すいません、実は」
その桜の言葉である。
「先程まで日舞のお稽古でして」
「それでか」
「和服なの」
「着替える時間がありませんでした」
だからだというのだ。
「この服なんです」
「それで和服か」
「履きものもなのね」
靴ではない、日本のそれだ。
「桜ちゃんの色の」
「桃色なのね」
見れば和服には白の桃も飾られている、絹の見事な着物だ。
その和服を見てだ、また言う薊だった。
「確かに目立つけれどさ」
「すいません」
「いやいや、謝る必要はないよ」
それはいいと返したうえでさらに話す薊だった。
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