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美しき異形達

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第二十四話 麗しき和服その七

「ベルサイユの薔薇とかでエレガントなイメージあったけれど」
「実際はそうじゃなくて」
 裕香も言う。
「衛生的にはあまり、だったのね」
「うん、蚤とか虱にも悩まされてたよ」
「蚤や虱って」
 そう聞いただけでだ、裕香もかなり引いた。
「あんまりですよ」
「今から見ればそうだね」
「本当に」
「遠慮したいな、そんな服」
 薊は心から言った。
「あたしきたくないよ」
「私も、ちょっとね」
「それ考えたらな」
 あらためてだ、薊は桜を見て言った。
「大正浪漫の方がいいよ」
「そうですか」
「その頃はガテンだったとしてもな」
「今はですね」
「お嬢様だからさ」
 そのイメージだからだというのだ。
「清楚可憐な良家の女学生か」
「それがあの服のイメージですね」
「本当にさ。まああたしはさ」
 笑っていう薊だった、このことは。
「お嬢様じゃないけれどな」
「いえ、薊さんも」
「あたしも?」
「似合うと思います」
「似合うかな」
「そう思います」
「だといいけれどさ」
 薊にしてもというのだ。
「あたしも」
「では一度着られますか?」
「あの服をかよ」
「はい、そうされては」
「けれどさ」
 薊は桜の申し出をまずはよしとした、しかしだ。
 ここでだ、こう言ったのだった。
「桜ちゃんのお家って呉服屋さんだよ」
「はい、そうです」
「じゃあ大正浪漫とかはな」
「あの服はないです」
 桜もはっきりと答える。
「実際に」
「それでどうしてそう言うんだい?」
「はい、この学園の演劇部にありますので」
「舞台で使う衣装でかよ」
「ありますので」
 だからだというのだ。
「お話すれば着られます」
「へえ、そうか」
「ですから着たいと思われたら」 
 その時はというのだ。
「お願いされてみるといいと思います」
「そうか、じゃあ一回な」
 着てみようとだ、薊も言うのだった。
「そうしてみるか」
「それがいいかと」
「試しってやつか」
「何でもです」
 まずは、というのだ。
「服でも着てこそです」
「さもないとわからないか」
「呉服も同じで」
 家の商いの商品もだというのだ。 
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