戦国異伝
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第百八十話 天下の宴その十一
「武田と北条、上杉と北条が手を結び」
「織田家にあたるか」
「そうした三国がです」
「さらにじゃな」
「どうやら毛利、本願寺と結び」
「ふむ、東西からか」
「織田家を攻めるかと」
そして、だった。
「無論織田家と手を結ぶ我等にも」
「来るな」
「武田が」
まさにこの家が、というのだ。
「再び」
「左様か、ようやく先の戦の傷が癒えたが」
それでもと言う家康だった。
「再びか」
「殿、次は」
「わかっておる、次は負けぬ」
家康は本多に確かな声で答えた。
「決してな」
「それでは」
「うむ、ではな」
ここでこう言う家康だった。
「用意は出来ておるな」
「はい」
今度は酒井が応えてきた。
「既に」
「兵は再び集めた」
「それにです」
「武具もな」
「槍も愚息も剣も」
「弓矢もじゃな」
「鉄砲もです」
それもだというのだ。
「かなり用意しました」
「そうか、ならばな」
「はい、次ことは」
「わしは二度はしくじらぬ」
家康は歯噛みをしつつ言った。
「何があろうとな」
「では次こそは」
「迂闊には攻めぬ」
三方ヶ原の様にはしないというのだ。
「座って戦う」
「はい、我等もです」
「そうします」
家臣達もこう言う、そしてだった。
鳥居がだ、ここで家康に言った。
「ですがやはり我等では」
「うむ、武田は六万じゃ」
二百四十万石だ、それだけの石高だから六万の兵を動員出来るのだ。
それでだ、こう家康に言うのだった。
「それに対して我等は一万数千」
「やはり相手にならぬな」
「ですから」
それでだというのだ。
「やはり勝つには」
「吉法師殿に助力を頼むしかないな」
「むしろ実質的にはです」
「徳川と武田の戦ではなくな」
「織田家と武田家の」
この二つの家の戦となるというのだ。
「そうなります」
「そうじゃ、どうあっても我等は脇役に過ぎぬ」
「それが残念でしょうか」
「致し方ない」
家康はここではこう言った、その顔は澄み切ってさえいる。
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