ダブルデート
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第一章
第一章
ダブルデート
二人はだ。今話をしていた。
見ればどちらも全く同じ姿形である。一直線の眉に強い光を放つ黒い目、引き締まった唇、整った鼻、細長めの顔に黒く耳を隠した髪。背もどちらも中背で痩せた身体をしている。
その二人がだ。今家のリビングと思われる場所でゲームをしながら話していた。
一方は赤い服に黒いズボン、もう一方は青い服に白いズボンだ。まず赤い方が言う。見れば右手にコーラの缶を持って飲みながらゲームをしている。
「それでな、直弥」
「ああ、和弥兄貴」
青い方も応える。見れば彼もコーラを飲んでいるが左手に持っている。
「デートのことだよな」
「参ったよな」
和弥が困った顔で溜息をついた。
「本当にな」
「そうだな」
直弥も兄の言葉に頷く。
「本当にな」
「向こうも知ってるよな」
「ああ、知ってるよ」
和弥は右手でゲームをしながら述べた。
「それはな」
「それでな」
「ああ、それで?」
「時間も場所も一緒だよな」
直弥はこう兄に尋ねる。やはりゲームをしながらである。
「デートは」
「そうだな。一緒だな」
「じゃあ向こう俺達のことわかるのか?」
「難しいだろ」
「やっぱりそうか」
直弥は兄の和弥の言葉に渋々ながら納得した顔になった。
「難しいか」
「っていうかわからないと思ってもいいだろ」
「しかしな」
「しかし?」
「どやるしかないだろ」
直弥はその渋々といった顔で言った。
「やっぱりな」
「それしかないよな」
和弥も言った。
「行くしかな」
「じゃあ兄貴」
「ああ」
「今度の日曜な」
「わかった」
和弥は弟のその言葉に頷いた。そしてだった。
彼等はそのままゲームを続ける。それぞれの手でだ。
そこに後ろからだ。中年、いや初老の母の声がしてきた。
「和弥、直弥」
「ああ、母ちゃん」
「飯?」
「そうだよ」
二人が振り返って見れば二人にそっくりの顔の母親がいた。
「早く来な。父ちゃんも戻って来るよ」
「ああ、わかったよ」
「それじゃあね」
「しかしあんた達ってね」
母は息子達のその顔を見ながら述べるのだった。
「どんどん似てくるねえ」
「仕方ないだろ、双子なんだからさ」
「母ちゃんが産んだんだろ」
「産んでもあれだよ」
母はたまりかねた顔で二人に話す。
「そこまでそっくりになってくるなんてね」
「見分けつくよな」
「ちゃんと」
「安心しな。つくよ」
このことはしっかりと言う母だった。
「ちゃんとね。わかるよ」
「あと父ちゃんもな」
「わかってくれてるしな」
「当たり前だろ。父ちゃんはシェフだよ」
だからだと言うのである。
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