仮面ライダー龍騎【13 people of another】
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Part One.
Second chapter
第11話
「助けてくれよ!!誰でもいいから!!ここから、出してくれ!!!」
植原が大きな鏡の前で聞こえるはずもないのにミラーワールドの外にいる人々に訴えかける。
その時、足音が聞こえてきた。
「よ、読川!」
そこには、王蛇がいた。
王蛇は植原の方へ近づいてくる。
「読川、助けてくれ!俺は、俺は……」
植原が安心したように王蛇に助けを求める。
しかし、王蛇は植原を素通りしていまった。
「お、おい待ってくれよ!俺たちの、味方じゃないか!?」
植原は王蛇の腕をつかむ。
ゆっくりと、王蛇は振り返る。
「味方……?なに寝ぼけたこと言ってんだよ」
「……え?」
王蛇の口から飛び出した一言に、植原は呆然とする。
「な、なんで……だって、あの時……」
「味方なんて、この戦いにいるわけがないだろ。全員が敵なんだよ。お前と組んだのは敵を減らすため……たったそれだけだ。けど、お前は未だに一人も倒せてないと来た……役に立たないな」
「な、なんだよ……読川、お前は、初めから俺を利用して……!」
王蛇は植原の腕を振り払いまた歩き出す。その足音が、植原にとっては死のカウントダウンのように聞こえていた。
「利用していたのはどっちだ?お前こそ、俺を利用しようとしてたんじゃないのか?
どのみちお前はここで死ぬ」
絶望を突き付けられた植原は王蛇に手を伸ばす。しかし、その手は粒子に変わっていた。
「嫌だ……死にたく、ない……」
その言葉を最後に、植原は消えた。
───…
「王蛇……!」
ライアとタイガのデストクローを弾いたのは王蛇だった。
「なるほど、仮面ライダータイガか……あいつもやっと本気になったか?」
「"あいつ"……?」
ライアが王蛇に"あいつ"と呼んでいる人物について問おうとした時だった。
タイガはデストクローを王蛇を攻撃する。
王蛇はベノサーベルでそれを受け流す。
「神が言っています。あなたは、今すぐに死ぬべきだと!」
「…………」
タイガはカードを取り出す。
『Final Vent』
それを見た王蛇もカードを取り出した。
『Final Vent』
「待ってくれ!王蛇、お前は……お前は!」
王蛇はライアの言葉を聞こうとしなかった。だが、それでも、たとえ聞かれていなくてもライアは王蛇に問う。
「お前は、もう……戦いたくないんじゃないのか!?」
その言葉に、王蛇は動きを止める。
そして、王蛇はタイガに目もくれず、ライアを蛇のように睨みつけた。
「あんたに、何がわかる?」
───…
キィィィイン…
そのころ、芳樹はミラーワールドで戦いが行われていることに気が付いた。
「変身!!」
龍騎はミラーワールドへ入り敵を探す。
「どこだ……?」
龍騎が走っているとその先に王蛇がその場に立っていた。近くには白いライダー、タイガもいるが、タイガはとても疲れているようだ。
龍騎に気が付いたタイガはこのままでは劣勢だと、退散する。
「おい!王蛇……お前は……!」
「また戦っていたのか!?」とそう言おうとした。しかし、その言葉は出てこなかった……。
ライアが王蛇の足元に倒れていたのだ。
「亮平!?」
王蛇はライアのそばを離れるとそのままミラーワールドを出て行った。
「テメェ!待て、待てよ王蛇!!」
しかし、王蛇は足を止めない。
「亮平、大丈夫か、亮平!?」
龍騎は粒子になり変身が解けそうなライアをミラーワールドの外へ連れて行くことにした。
───…
芳樹は亮平を背負いミラーワールドの外へやって来た。
「亮平、大丈夫か?」
「芳、樹……?」
「そうだ!今すぐ助けるからな、安心しろよ!王蛇なんかにやられてんじゃねぇぞ!」
「芳樹……ゴメン、耳がもう、聴こえないんだ……」
芳樹はその言葉に思わず足を止めた。
背負われた亮平の顔を見るととても嬉しそうだった。
「悪い、な……芳樹に背負われたの、何年ぶりだっけ」
「亮平……」
「あの時は、俺はよく虐められてたから、何度も芳樹が助けてくれたっけ?泣いてる俺を、背負って家まで送ってくれたの、よく覚えてる」
「バカ、喋んなよ!」
聴こえていないと知りながら、芳樹は亮平に怒鳴る。
二人がまだ幼い頃……。
転校生だった亮平は周りから少し浮いた存在だった。
家は金持ちで、担任や他の先生、校長まで亮平を贔屓していた。
それに腹を立てた同級生たちは亮平を虐めていたのだ。それをことごとく助けていたのは、亮平と違う意味で浮いていた学校一の問題児、芳樹だった。
「あの時、本当に嬉しかったなぁ……」
「亮平、亮平!!」
どんどん亮平の身体が冷たくなる。
「芳樹、俺がいなくなっても、頼むから誰も殺さないでくれ。王蛇のようにならないでくれ……できることなら、王蛇を助けてやってくれ」
「……やめろよ、そんな、最後みたいなこと言うなよ!」
芳樹は誰もいない路地裏に入るとそこに亮平を下ろした。
「亮平、亮平…死ぬな、頼むから……!一緒に、モンスターを倒すって、言っただろ!?」
「芳樹、何言ってるか、わかんねぇよ」
亮平は弱々しく芳樹に笑いかける。
「芳樹、頼む、あの子を……助けてやってくれ……」
「亮平?
おい、起きろよ亮平………亮平ぇぇぇえええぇえ!!」
雨が降った。
誰も予想していなかった雨に、人々は戸惑う。
そんな中、とあるレストランでは宮藤が一人で亮平を待っていた。
「遅いなぁ………塚原くん」
──────────…
雨に濡れた金髪の少年が空を見上げていた。
芳樹や他のみんなは亮平の葬式に参列している。
少年、ナナは葬式用の服を持っていないため、式には行かないことにした。
傘もささずに、ナナは火葬場を後にした。
いっぽう、芳樹は……。
「本当に、すみませんでした」
「……芳樹くん、芳樹くんのほうが、辛かったでしょう?」
「亮平は、最後に、なんと?」
「……よく、わからないんですが……"あの子を助けてやってくれ"って」
「あの子?」
「やっぱり、おじさんとおばさんにもわからないですか?」
亮平の両親は顔を見合わせた。
「わからないわ……」
「すまない、芳樹くん……でも、亮平は笑って死んでいったそうだね」
「……はい」
「そうか、なら……悔いはなかったのかも、しれんな」
そう言ったところで、亮平の母親は泣き崩れた。
芳樹はそれから何度も「すみません」を繰り返す。
「塚原は、本当に良い奴なんですよ」
「………」
「僕みたいな捻くれ者にも普通に話してくるし、凄い奴で……」
「……日ノ岡」
「なんですか、油島さん」
「今は、泣いてろ」
「………はい……」
日ノ岡は顔をクシャクシャにして泣いていた。
彼も亮平と付き合いの長い友人の一人なのだ。そんな日ノ岡の数少ない友達だった人物のうち一人が死んだ。助けられなかった悔しさと、永遠の別れという悲しさのせいで、日ノ岡の心はグチャグチャになっていた。
油島はまだ亮平との付き合いは短い。
最初に出会ったのは油島がナイトに始めて変身した時、願いなんて物はなくただ何と無くモンスターと戦った。そこで、亮平と芳樹に出会った。
そこで始めてできたライダーの輪。それが、第一歩だった。もしあの二人と会わなかったら、きっと油島は誰かを殺していたはずだ。
「……ああ、くそッ」
油島は目から出て来た物を手で押さえた。
───…
「雨」
ナナはビルの屋上で小さくなって雨をしのいでいた。
しかしそれでも服は濡れていく。
それを見て、ナナは立ち上がり、地面の見える屋上の端までやって来た。濡れることを考えていない。
「もう、引き返せない」
地面を見ながらナナは呟く。
自身の王蛇のカードデッキを見るとそれをぎゅっと握りしめた。
「もう、帰れない」
ナナは目を閉じてゆっくり上を見上げた。
雨のせいで、ナナが泣いているのか、泣いていないのかはよくわからない。
───…
「ライダーが二人も減ったか……だが、それでも遅いほうだ。本来ならば、もうとっくにライダーの戦いは終わっているハズなのに……」
男は暗い部屋で独り言をつぶやいていた。
「………あんたの人選ミスだろ?」
黒い帽子、鉄パイプを持ったナナが男の後ろに立っていた。
「………物騒だな、いったいなんのつもりだ?」
「別に、この戦いを終わらせるつもりだ」
「なるほど、それで俺を殺すつもりか……」
ナナはカランと鉄パイプを地面につける。
「キミは浅倉威と同じ末路を選ぶつもりか?」
「……なに?」
男はいつの間にかナナの背後に回って来ていた。
それに気付いたナナはすぐに振り返る。
「お前………」
「忘れるな、キミの願いは戦いを終わらせることではないだろう?」
「………」
男はナナの肩に手を置く。
「アレだけのことをしておいて、今更戦いを終わらせるなんて、キミはいつからそんな風になったんだ?キミなら、すぐにでもライダーを全員殺せると思ったのに……」
「悪かったな……でも、俺は……」
「コレをあげよう」
男はナナに液体の入った小瓶を投げ渡した。
それをナナは慌ただしくつかみ取る。
「……なんだ、コレ」
「ソレは忘れたい物を忘れられるとても便利な物だ。彼らのことを忘れたいなら、飲むといい」
ナナは信じられないと男を見る。
「それから、この夏の終わりまでに戦いを終わらせることができないと……キミの願いは叶わなくなるぞ」
「………え?」
私は雲に
なりたいな。
ふわりふわりと
青空の
果てから果を
みんなみて、
夜はお月さんと
鬼ごつこ。
それも飽きたら
雨になり
雷さんを
供につれ、
おうちの池へ
とびおりる。
雨はまだ降り続ける。
後書き
龍騎は王蛇に殺されたライアの死を乗り越えることができるのか!?
そして、ナナに待ち受ける最後の試練とは……。
第二章始動。
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