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少年少女の戦極時代Ⅱ

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後日談
  第135話 パーティーinドルーパーズ


 世界規模の未曾有のバイオハザードから、早半年。

 ビートライダーズの主だったメンバーに加え、凰蓮・ピエール・アルフォンゾ、「元」ユグドラシル・コーポレーションの呉島貴虎、葛葉晶が参加するパーティーが、ドルーパーズにて催された。

 光実が立ってグラスを持ち、皆を見回して音頭を取る。

「皆さん。色々忙しくて、こうしてみんなが集まれるまでこんなに長くかかってしまいましたが、今日は思いきり楽しみましょう。乾杯!」
『カンパーイ!』

 たくさんのグラスが勢いよく上げられた。




「よっ。やってるか」

 戒斗の肩を叩いたのは、ビールジョッキを持ったザックだった。

「未成年のいる場で飲むな」
「ノンアルコールに決まってんだろ。お前も飲むか?」
「いらん」

 ザックはすでに雰囲気で充分に酔っているようだ。全快したとはいえ、死ぬ目に遭わせた戒斗によくも景気よく声をかけられるものだ。

 ザックが離れて他のメンバーのほうへ行ってから、戒斗は正面に向き直った。
 笑顔で紙皿に盛ったスナック菓子を食べる咲を、じいっと見つめる。

「なに?」
「いや。中学生になってもチビのままだな、と思って」
「うぅ~っ。気にしてるのにぃ」

 ――実際、これ以上に咲の身長はもちろん、肉体の他の部位も育つことはないだろう。ヒマワリアームズを使い続ける限り。初めてヒマワリの錠前を使った年齢的に、子を授かる体になるかさえ怪しい。

 戒斗も咲も、「人間」を逸脱した。半年前は負けたばかりのヤケで責任云々を言ったが、きっとこの地上で共に生きていけるのは、戒斗と同じカテゴリに入ってしまった咲だけなのだろう。


「咲ちゃん」
「あ、光実くん! 聞いてよ~。戒斗くんがいじめるのっ」

 声をかけた光実に即座にチクる咲。

「戒斗さん?」

 光実の少々黒い呼びかけと笑顔に対しては、戒斗は我関せずを決め込んだ。このモードの光実は厄介だと、半年の付き合いで熟知した戒斗である。

 とりあえずは何事もなく、光実はチーム鎧武のテーブルに移動して行った。難は逃れた。

「お前はチームの席に行かなくていいのか」
「ヘキサとトモが来たら行くよ」

 その言葉に合わせたかのように、店のドアが開き、白いブレザーを着た少女が二人、入店した。

「ヘキサっ」

 咲は席を立って、入ってきたヘキサに一目散に抱きついた。

「やっぱりヘキサの親友の座は不動の咲ね」

 横で、同じく白いブレザー姿のトモが溜息をついた。

 ヘキサは沢芽市内一の進学校に入学した。咲ほかリトルスターマインでは学力が到底追いつかない学校だ。唯一、親の言いつけで渋々受験したトモだけが、ヘキサと同じ中学校に通う結果となった。トモ曰く「わたしが一番おどろいてるわよ」。

「みんな~。ヘキサとトモ、来たよ~」
「おー、二人ともこっちこっち」
「ありがとうね、みんな」

 あっというまに元リトルスターマインのメンバーが勢揃いした。戒斗は隅のテーブルに一人になった。それは別にいい。一人には慣れている。
 しかし、一人になった人間をそのままにしておかないのが、ビートライダーズという連中であって。

「ども。やってる?」

 咲がいなくなって空いた席に、断りもなく城乃内が座った。

「まあまあな」
「あれから体の調子どーよ」
「相変わらずだ」

 ヘルヘイムの果実を食べて以来、戒斗の味覚は徐々に薄くなってきている。今もコーヒーしかテーブルの上にはない上に、ブラックなのに苦いとも感じない。

「そう。凰蓮さん、残念がってたよ。いい腕してるのにって。俺にはそんなこと言わないくせに」
「それはお前の未熟さのせいだろう」
「はいはい。どーせ俺は半人前ですよ」

 城乃内はこれ見よがしにふて腐れた。何だかんだで、この師弟もよろしくやっているらしい。

 城乃内が席を離れてからは、誰も来なくなったので、戒斗は存分にこの半年のことを回想した。



 元は紘汰と舞がやりたいと言い出した、このドルーパーズでのパーティー。それを伝えたら、光実が中心となって、あの時のメンバーが、出席調整と、阪東との交渉、それに菓子類の調達に奔走した。だから今日がある。

 今日までに戒斗がしたこともいくつかあった。その一つが、湊耀子の墓参りだ。
 元々、沢芽市出身でなかった彼女の墓に参るため、戒斗は何年かぶりに沢芽市を出た。
 そして、湊の墓前で気づいた。世界がどうこうと言う前に、自分は沢芽市という小さな世界しか見たことがなかったことに。

 帰ってそのことを咲に話してみると、

「じゃあ、これから色んなとこにリョコウしなきゃだね」

 と、あっさり返された。

 以来、戒斗は何かと機会を見つけては、沢芽市を出て日本のあちこちに旅に行っている。日本を制覇したら、世界を旅するつもりだ。

 戒斗がおらずとも、元チームバロンはザックに任せてあるし、怪物はもう出現しない。万が一そんなモノが現れても、この街には咲と光実がいる。

 ――この時の戒斗は、本気でそう考えていた。
 忍び寄る脅威に気づくことなく。 
 

 
後書き
 紘汰と舞の「ドルーパーズでパーティーしよう」発言が原作では叶わなかったので、唯一それを知る戒斗が生存している拙作ではやらせていただきました。
 中の人ネタが入って恐縮ですが、戒斗は菓子作りが上手いと作者は信じています。 
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