シチリアの夕べ
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第三章
第三章
「それでね。癒すといいよ」
「シチリアを見て」
「太陽の光は全てを清めるから」
「全てをなの」
「そう、全てをね」
だからだと。マスターはエリーに話していく。
そしてだ。マスターは言葉をさらに続けてきた。
「だから。シチリアを楽しんでね」
「そうして癒して」
「そう、それから」
さらに言うのだった。
「それからだよ」
「それからって?」
「じっくり考えればいい」
これがマスターの言葉の軸だった。
「これからのことを」
「そうすればいいの」
「まずは飲んでね」
また話した。
「いいね、それで」
「ええ、その言葉に甘えさせてもらうわ」
エリーもマスターの言葉を受けた。そうしてであった。
この日は飲むのだった。そうしてだ。彼女はその日はとことんまで飲んだ。その結果だ。翌日の朝の彼女は酷いことになっていた。
「うっ・・・・・・」
起きるとだ。まずは鈍い頭痛がした。
二日酔いだった。それもかなりきつい。まずはシャワーを浴びてそれから立ち直ることにした。だが結局それから立ち直るには昼までかかった。
二日酔いのまま歩くシチリアはだ。確かに美しかった。
緑の中にオレンジがありオリーブもある。そして太陽もだ。
燦燦と輝く太陽を見ていると何か気持ちが少し変わった。明るくなれる気がした。
しかしそれでも今はすぐに沈んでしまう。破れた恋の痛手は深かった。
それで沈んでいるとだ。周りから明るい声がした。
「これから何処に行く?」
「パスタでも食べる?」
「そうする?」
「ワインと一緒に」
「イタリアだからなのね」
エリーはその言葉を聞いて呟いた。今彼女は山のところを歩いている。白い岩場の上には緑の草がある。その対比が太陽に照らされている。
その中を歩きながらだ。周囲の言葉に呟くのだった。
「だから。そうね」
そしてだった。ここである店に入った。するとだった。
昨日のマスターがいた。客席に座ってにこにことしてパスタを食べていた。
その彼はだ。エリーの姿を認めて笑顔で声をかけてきた。
「いや、久し振り」
「って会ったのは昨日よ」
「昨日でも久し振りだよ」
こう笑顔で話すのだった。
「ここで会ったのも何かの縁だね」
「そうね。多分ね」
「それじゃあだけれど」
「それじゃあ?」
「食べようか、シチリアの料理をね」
こう彼女に提案してきたのだった。
「それでどうかな」
「最初からそのつもりだけれど」
これがエリーの返答だった。
「シチリアに来てるのだから」
「おや、言うねえ」
「シチリアでイギリス料理を食べても仕方ないし」
「ああ、それはないから安心していいよ」
「あったらかえって凄いわね」
「あれかい?トーストに目玉焼きに」
至ってシンプルな食事からだった。朝食である。
「それに紅茶だよね」
「そうよ。後はソーセージね」
「イングリッシュ=ブレイクファストだったね」
「朝御飯はいいと言われるわ」
こう答えるエリーだった。
「それはね」
「他は?」
「よく観光で来る日本人が困った顔になっているわ」
日本人は悪いことを口に出しはしない。しかし表情に出てしまっているというのだ。
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