トップアイドルからプロデューサーへ
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宣材写真
前書き
投稿するのに1ヶ月もかかってしまった…もうしわけありませんm(_ _)m
「あ~あ、またダメだったな」
「あう、すみません、春翔さん」
「まあしょうがない。切り替えて次に備えるぞ」
「…はい」
俺は今やよいのオーディションに付き添いで来ていたのだが結果は不合格。やよいだけでなく他の子達も見事に不合格だ。俺が芸能界に復帰したということで一時は結構騒がれたがまあ、1ヶ月も経つと落ち着いてきた。注目度もそれなりにあったはずなんだが結果は述べた通りだ。
「ああ、春翔さん、今帰りですか?」
「よぉ赤羽根か、結果は…まあ聞かなくても分かるな」
伊織、真美、亜美の付き添いで赤羽根が来ていたのだが見事に不合格だったようだ。しかしこれは…
「すみません…」
「赤羽根が謝ることじゃないさ。切り替えていかないと」
「…はい」
「おいおい、プロデューサーがそんなんじゃアイドル達も不安になるぞ。こういうのは切り替えが大事なんだよ」
「!!ですよね!」
とは言ったもののアイドル達は不合格続きで自信も何も無くなっちまったって感じだな。よろしくない状況だ。
「戻ったぞー」
「只今戻りました」
俺と赤羽根が事務所に戻ると小鳥が電話で誰かと話しているようだ。まあ、小鳥の雰囲気的に仕事を断られたんだろう。
「小鳥?オーディションは…」
「はい…全滅です。今月に入ってからまだ誰もオーディションに通ってないんですよ!」
今月に入ってというよりは今月もという方が正しい気もするが…それは言うまい。
「全くなんで私がオーディションに落とされないといけないのよ!」
「春翔兄ちゃん!亜美達ももっとテレビに出たいよぅ!」
「今月もお仕事なかったら来月の給食費がピンチです!」
「そうだな…このままじゃまずいよな…でもなんでこうも受からないんだ?」
そう、問題はそこだ。こいつらのオーディションでのパフォーマンスを見てもそこまで悪かったとは思わなかったんだが…ていうかここには赤羽根もいるんだぞ?ほら、何か相手にされないから落ち込んでるじゃん。
「赤羽根、何か心当たりある?」
「そう言われましても…」
「だよな…」
「あの、そのことなんですけど…」
そういう小鳥に見せられたのはアイドル達の宣材写真だ。それはお世辞にもいい出来とは言えなかった。まぁ、ある意味いい出来とは言えるのかもしれないが。
「こ、これが宣材?」
赤羽根はその宣材のあまりの出来の悪さに絶句してる。俺は笑いをこらえるのに必死だ。
「いや、これはこれで…ぶふっ…ありだって」
「春翔さん、だったらまず笑うのをこらえましょうよ」
「いや、だってこれは…ぶふっ…俺こんな宣材見たの初めてだしさ」
「あの、これそんなに可笑しいんですか?」
俺が笑いを必死にこらえてるのを見たやよいがそう聞いてくる。
「おかしいとかいうレベルを逸脱してるってこれは」
「でもでも、その写真社長にいい出来だって凄く褒めてもらえましたよ!?」
確かに別の意味ではいい出来だけどさやよい…宣材としては絶望的だよ…
「あのおっさん、たまにこういうところがあるからな…」
「春翔さんは社長とは知り合いだったんですか?」
「現役時代に何度か世話になったってくらいだ。そこまで親しいわけじゃないよ」
「そうですか」
そこにアイドル達のお揃いのステージ衣装を用意した律子が事務所に帰ってきた。衣装を用意してウチの事務所の金庫はすっからかんになってしまったらしい。宣材を撮り直したいところではあるが予算はあるだろうか?
「ええ!?コンポジットを作り直す!?ムリムリ、あの衣装でいくらかかったと思ってるんです!?そりゃ、今のがベストとは言えないですけど」
「だろ?そこは娘のお見合い写真を作り直すような気持ちでさ…」
「娘って…私そんな年じゃありません!」
「いいじゃんりっちゃん!宣材ジャバジャバ撮り直そうよ!」
「そうだよ!宣材取り直したらきっとお仕事ザバザバ入ってくるよ?」
「それに給食費だって払えます」
「う~ん…しょうがない、いっちょ取り直しますか!」
「だったら俺の知り合いに頼んで少し安く撮ってもらおうか」
「本当ですか!?」
「ああ」
☆
そして俺たちがやってきたのは俺の知り合い三國康夫のスタジオだ。俺の現役時代何度か撮影してもらったことがある。
「やあ、本当に君がプロデューサーになって帰ってくるとはね」
「いろいろあったんだよ」
握手をしながら言葉を交わす。実際に会うのは5年ぶりか。
「今日は君の所属する事務所のアイドル達の宣材写真の取り直しだったね」
「ああ、頼んだぜ」
「頼まれよう」
「ようしそれじゃお前らサクッと準備してサクッと撮ってくれよ…で、これは何だ?」
「決まってるじゃない。撮影の衣装よ」
伊織が持ち込んだらしい撮影の衣装を見るとものすごく不安になる。ちゃんとした宣材がとれるのだろうか?熊の着ぐるみみたいなのまである。そして俺の不安が的中するのはその少し後だった。
「うわ~、すご~い」
やよいが感嘆の声を上げるのでなにかと思えばあずさが衣装に着替えていた。確かに似合っている。律子が衣装を選んだようだ。
「んー、もう少し明るい色の方がいいですかね?」
「そうですか?私、太って見えませんか?」
「全然大丈夫ですよ!プロデューサー、春翔さん!あずささん、こっちの色もいけますよね!」
「え、ああ、そうだな」
もっと具体的に言ってやれよ赤羽根…
「春翔さんはどう思います?」
「まあ、そっちも行けるだろうけど今着てる色の方が髪の色と合ってていいんじゃね?」
「なるほど、そういう見方もあるか…」
そういうと律子はまた真剣に考え始めた。これは少し長引きそうだ。
俺が少し席を外した間に撮影は始まっていた。一見順調かに思われた撮影だが端の方で亜美、真美、やよい、伊織、赤羽根が座っているのを発見した。しかも亜美たちは凄い衣装を着ている。
「聞きたくないんだが…一体なにがあった?」
「今個性について考えてるのよ」
「個性?」
「亜美達ね個性って目立つことだと思ってたんだ。だから目立つ衣装で撮影すればいいのかなって思ってたんだけど…」
その凄まじい衣装はそういうことか。
「個性イコール目立つことという考えも分からなくはないがそれは少し違うだろ」
「なら個性ってなんなのよ?」
「そうだな…なんていうか…お、ちょうどいいのが写真撮ってるな。ちょっと雪歩を見てみろ」
俺がそういうと一同が雪歩へと視線を向ける。現在雪歩は白い花を持って撮影を行っている。
「あれ見てどう思う?目立ってるか?」
「目立ってはないけど…合ってるよね?なんでだろ?」
「でもでも雪歩さんらしいと思います!」
「お、いいこと言うじゃないかやよい」
「え?私ですか?」
「確かに人次第では目立つことが個性になる人もいるかも知れない。でも皆が皆そうじゃないんだよ。大事なのはその人らしさ。それが個性になるんだ。亜美と真美なんてお互いにどうやって撮るのが一番いいのか分かってそうだけどな」
「もっちろんだよ!亜美、真美のベストアングルバッチリ把握してるよ!」
「真美だって!」
「だったらそれで撮影すればいいじゃないか」
「「本当?」」
「ああ」
そういうと亜美たちは準備してくるといって走っていった。これで亜美と真美は大丈夫だろう。
「ねえ、私とやよいは?」
「伊織とやよいね…そういえば伊織あのよくわからないぬいぐるみはどうした?今日は使わないのか?」
「それは…ちょっと留守番してただけよ」
そう言うと伊織はカバンに入れていたぬいぐるみ(後からやよいに聞いたがシャルルという名前らしい)をかっさらって控え室へと向かっていった。
「後はやよいか…」
「あの、私はどうやってとればいいですか?」
やよいはな…特に何もしなくても笑顔で撮ればそれなりのものになりそうなんだけどな…それじゃ納得しないだろうな今までの流れ的に。
「そういえばお前あの服は持ってきてないのか?」
「あの服?あの服ってなんですか?」
「ほら、前に母親にアップリケつけてもらったって言ってたいつも着てるやつ」
「それは持ってきてますけどあの服でいいんですか?」
「やよいはあの服嫌いか?」
「そんなことないです!あの服は一番のお気に入りです!」
「だったらいいじゃないか。別に宣材は決まった衣装で撮らないといけないなんて決まってるわけじゃないんだから」
「うっうー!ありがとうございます!私も準備してきますね!」
そう言ってやよいも控え室へと走っていく。これでなんとか全員ちゃんとした宣材が撮れそうだ。
「さすがですね春翔さん。やはりアイドル経験者は違いますね」
「そうでもないさ。しかしお前もプロデューサーなら担当アイドル達の個性くらいバッチリ把握しとけよな」
「うっ…返す言葉がありません」
「まぁこれから精進したまえ」
「なんだか社長みたいですね」
「おっさんっぽく言ってみたからな」
そして無事に宣材は撮り終わり俺たちは事務所へと戻りその日は解散となった。後日届いた宣材は前のとは見違える程良くなっていた。
「お久しぶりです吉澤さん」
「春翔君か。久しぶりだね」
ナムコプロの新しい宣材が撮れたということで記者の吉澤さんが見に来ていた。最も、アイドル達は吉澤さんはおっさんのお茶のみ友達だと思っているようだ。まあ、あえて何も言わないけど。
「もう、吹っ切れたのかい?」
「吹っ切るなんて出来ませんよ。でも、いつまでも立ち止まってる訳にはいきませんから」
「そうか」
それ以上吉澤さんは何も言わなかった。
「それじゃ俺はあいつらのところ戻ります」
「ああ」
なにやら騒がしかったので戻ってみると律子がなにやら宣言しているところだった。
「よーし、ナムコプロの快進撃はここからよ!ガシガシ仕事取りまくるんだから!」
「お前それ打ち切り漫画の最後みたいだな」
「春翔さん!縁起でもないこと言わないで下さいよ!」
まあ、こいつらとなら楽しくやれそうだ。
後書き
どうだったでしょうか?楽しんでもらえたら幸いです。
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