白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
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第24話-2 『美月芳夏』
<24話-2>
午前三時を回ろうかという頃、体育館で計佑たち六人ともが眠っていた。
特に、心労も多い一日を過ごした計佑は完全に熟睡していたのだけれど、
「──おい、起きてくれ計佑」
そんな静かな声で、目を覚ました。
「……え? だれ……」
熟睡していた所を起こされたばかりでまだ意識はぼんやりとしていたが、
その声が部員の誰のものでもない事には辛うじて気がついた。
そこへ、声の人物の指が額へと伸びてきて──トン、と触れた瞬間、意識が一瞬で覚醒した。
ぼやけていた目も、しっかりと開いて。……そして、目の前にいた人物は、
「……え……ホ、ホタル……?」
ここ最近は毎晩一緒に過ごしていた相手だった。でも──
「ああ、2日ぶりだな計佑──といっても、私の気分的にはもっと久しぶり、という感じもするがね」
その姿は、旅行の時に会った、16歳──雰囲気のせいか、自分よりずっと大人びて見える──のものだった。
「話がある。とりあえず、場所を移さないか?」
静かに微笑むホタルが、そう口にすると計佑の手を引いた。
─────────────────────────────────
夜中にふと、半分目を覚ました雪姫は、特に意識もせずに計佑たちが寝ている方向へと寝返りをうった。
そして、寝ぼけているにも関わらず計佑の姿を探して、
──……あれ……計佑くん、は……?
見つめる先には、一人しかいない──茂武市だけだった。
暗く距離が離れていようと、寝ぼけていようと、この少女は計佑と見間違えたりなどしなかった。見回して、
──……あ、よかった、ちゃんといた……
計佑がちょうど体育館を出て行く所を見つけて、軽くホッとした。けれど、すぐに疑問を抱く。
──……? ジュースでも買いに行くのかな……?
計佑が出て行ったのは、トイレがある方向ではなかった。
だとしたら、あとは買い物か、眠れなくて軽く散歩でもする気になったのだろうか、
といった可能性が思いついたのだけれど、
──……そうだ、これは……!
一気に目が覚めた。静かに身体を起こして、そのまま立ち上がる。
見下ろして──アリスが熟睡している姿に、笑みが漏れた。何故なら、
──今なら、計佑くんと二人きりで過ごせる……!
恋する乙女が、そんなチャンスを得て気分を弾ませない筈はなかった。
結局昨夜も、決意虚しくグダグダになってしまった計佑との時間。
……情けないけれど、アリスがいては、もう自分は落ち着いて計佑と話す事は出来ないのかもしれない。
けれどそれなら、二人きりの時間をより多く過ごせばいいのだ。
誤解で大泣きしてしまった日、そして昨日。
計佑に甘い言葉をかけてもらえた後なら、いくらかはアリスの事にも耐えられたのだから。
……まあ、最終的にはやっぱり余裕がなくなるのだけれど……
──と、ともかく! アリスに少しでも負けないように、今は計佑くんと!!
足音をなるべく立てないように──万一、
誰かが起きたりしたら台無しになってしまうかもしれない──静かに歩いて。
出入り口にたどり着いて、振り返って。みんながちゃんと眠り続けている事に安堵して。
顔を前に戻した時に、ちょうど一人の少女がうっすらと目を覚ましたのだけれど、
そんな事に気付く筈もなく外に出て──
──……あれ?
自販機の前に、計佑の姿はなかった。辺りを見回してみても、やはり見つからない。
──……コンビニまで足を伸ばした、とか? それとも、やっぱり散歩とかかな……?
せっかくのチャンスだ、計佑とは絶対に話したい。ならば追いかけないといけないのだけれど──
──……う……や、やっぱり怖い……!
計佑を見つけるまでは、一人きりで夜空の下を歩きまわる事になってしまう。
学校といえば、怪談の宝庫。
校舎内に比べれば全然マシだが、極度の怖がりには、敷地内でも夜間とあってはハードルが高かった。
逡巡して、
──こ、ここで待ってれば、その内計佑くん戻ってくるんだし。それからでも……
臆病少女がそんな逃げ腰の考えに縋りかけて、
ゾクッ……!!
突然、背筋に悪寒が走った。
何の根拠もない、どうしてそんな考えが浮かんだのかもさっぱりわからない。
けれど、急に今、計佑がどこか遠くへ──それも手の届かない程の──行ってしまうような、そんな気がした。
その瞬間、一気に駆け出す。
夜道への恐怖など、それより遥かに大きい恐怖の前に、完全に吹き飛んでいた。
─────────────────────────────────
ホタルに連れられて行く計佑は、
「……な、なあホタル、別に逃げやしないから手は離してくれないか?」
ずっと手を握ってきたままの相手にそんな声をかけた。
幼女の頃だったら気にならなかった接触も、
自分よりも歳上に見える程に成長? されては、流石に気恥ずかしかった。
そんな計佑の訴えに振り返ってきたホタルだったが、その視線は計佑を通りすぎて、どこか遠くを向いていた。
「……なんだ? 何かあるのか?」
気になってそちらを振り返ったが、見えるのは体育館の屋根くらいで、特に気になる物は見当たらなかった。
「さっきの接触で眠りが浅くなっていた……? ふん、それにしても意外と勘のいい……」
そんな呟きに向き直ると、ホタルが眉をひそめて、舌打ちでもしそうな顔をしていた。
「何の話だ? 誰か起きてきたのか?」
「だがまあ、見当違いの方向だし……とりあえずは問題ないか」
計佑の質問には答えず、相変わらず独り言のように呟いたホタルは、微笑に戻ると
「もう少し歩くとしよう。ほら、ついて来てくれ計佑」
「いっいや、だから手をだな……!」
訴えは無視され、ぐいぐいと手を引かれ続けて。やがて二人は、グラウンドへと辿り着く。
そこでようやく、ホタルが手を離してくれた。
「ほっ……で、一体なんだよ。話があるっていうけど、こんなトコまで来る必要あったか?」
ホタルと話している所を、まくら以外の人間に見られる訳にはいかない。
だから場所を移す事自体は望むところなのだけれど、ここまで離れる必要はあったのか? という思いもあった。
「あったんだよ。これは私には何よりも大事な事なんだ。──絶対、誰にも邪魔はさせない……」
最後には独り言のように答えたホタルの目に、ゾクリとさせられるような気迫を感じて。
それ以上は突っ込めず、話題を変えた。
「そ、そうか……まあ、いいや。じゃあ──とりあえずは、回復おめでとうだな、ホタル!」
ホタルの話を聞く前に、まずは祝福の言葉を贈った。
「聞かされてた予定通りって訳だな……うん、よかったよかった」
「ふむ……幼女だったままの方がお前には良かったんじゃないのか?
……随分と、子供の私を可愛がってくれていただろう」
「なっ……バ、バカ言うなよっ! 俺はそんな……」
ホタルの言葉はからかってくるような物だったけれど、その表情は純粋な微笑で。
その雰囲気からすると、決して意地の悪い意思を込めた質問ではなかったようだけど、
『幼女──以前のまま──のほうが良かったか?』などと聞かれては、二重の意味で頷けなかった。
「……いや。まあその、確かにあのお前は、随分懐いてくれていたからさ。
もうああいうのがないんだなっていうのは、いくらかの寂しさもあったんだけどさ。
……でもこうして、元のお前に会ってみると、なんかそれはそれで嬉しいっていうか……
なんだろうな、妙に懐かしい気もしてくるんだよな……
おかしいよな、今の姿のお前と過ごした時間なんて殆どないハズなのに」
そんな風に、照れくさいながらも正直な心情を吐露すると、
ホタルが驚いたように目を見開き、そのまま僅かの間硬直して。そして、やがて微笑に戻ると、
「……ふふ。なんだ、そんな事を考えていたのか? いいんだぞ、今の姿でも前みたいに接してやっても」
そんな言葉と共に、本当にホタルが抱きついてきた。
「なっ、ちょ!? バっバカ、やめろよ、からかうな!?」
慌てて身を捩ると、ホタルはあっさりと離れてはくれたが、
「……ふむ。戻れたのは一応よかった事の筈なんだが……前みたいに触れさせてもらえんのはつまらんな。
……操って触れさせるというのでは、色々と台無しだしな」
首をひねりながら物騒な事を呟いてくる姿に、冷や汗が出る気がした。
「あ、あのなぁ……本当、勘弁してくれよ。お前100歳ぐらいなんだろ、もうそんなからかいするような──」
「──歳の話はするな」
突然吹き付けてきた冷気に、完全に凍りついた。ホタルの目が一瞬で、圧倒的までに据わっていた。
「貴様、でりかしーがないなんてもんじゃないぞ……良くもまあ、女性相手に婆ぁ呼ばわりなどと出来たものだな」
ババアなんて口にしていない、過ごしたであろう年月を指摘して、窘めただけのつもり──
などという言い訳すら出来ずに金縛りにあっていると、ホタルが右手を持ち上げて。
人差し指で計佑の喉をつついてきた。
「……なあ計佑、覚えているか? 初めて添い寝した夜の事だ。
幼い私は、元の姿に戻った私が何をするか──予言しておいたよな?」
言われて、すぐに思い出した。あの恐ろしすぎる予言──『黙って、取り殺そうとするだけだ』。
「……ま、まさか……話って……!?」
どうにか口が動かせた。それにホタルがニタリとしてみせる。
「あの時の言葉は、本当に冗談のつもりだったんだがな……
婆呼ばわりまで上乗せされては、 流石に笑って許すわけにはいかないな」
喉から指が離れて。さらに持ち上がったホタルの指が、今度は額へと伸びてくる。
「せめてもの情けだ。痛みは軽くにしておいてやる」
「待っ──!!」
言い終わる前に、軽く額を弾かれた──蹌踉めいて、立っていられずにストンと尻餅をついて。
……そして、それ以上は何も起こらなかった。
「……え……へ……?」
「ふん。今回だけは、でこぴんとやらで勘弁しておいてやる。二度と歳の事は口にするなよ」
半眼で見下されて、ようやく命拾いした事に気づいた少年は、
「は、ははは……き、肝に命じておきます……」
そのまま後ろに倒れこむと、大の字に寝転んで誓いを立てた。
「……まったく。正直迷っているのだから、こちらの自制心を無くすような言動は謹んでくれ……」
……そんな物騒なゴーストの呟きは、幸か不幸か、計佑には届かなかった。
─────────────────────────────────
やがて、落ち着いた計佑が身体を起こすと、ホタルも隣に腰を下ろしてきた。
「……えっと。それじゃあ、本当は話って何なんだ?」
先の呟きが聞こえなかった少年は、"取り殺しにきた"
というのは完全に冗談だと捉えてそんな質問をしたが、返ってきたホタルの答えは意外なものだった。
「うん……一言で言うと、お別れの挨拶だな」
「え!? な、なんで!? だってお前……」
2日前の朝、『元の姿に戻っても、まだここにいたい』と望んでいたのに。
まあ、幼女の時と今では、心は別物と言ってもいいくらい変化してるのだろうから、
考えが変わっても何らおかしくはないのだけれど、いきなり切り出された別れには動揺を抑えきれなかった。
「あっ、榮治さんってヒトをまた探しに行くって事か? でっでも、時々は帰ってくるんだろ?」
「いいや、帰らない。今この時をもって、お前とは完全にお別れだ」
優しげな微笑を浮かべてこそいるが、その言葉は計佑をきっぱりと拒絶すらしているようなもので。
それに、絶句してしまう。
「……ふふ。そんな顔をするな。別にお前に腹を立てて去る……とかいう話ではないよ。
実は、呪いが解ける算段がついたんだよ。
……やっと。本当に、やっとだよ……ようやく、開放される時が来たんだ……」
計佑から目をそらしてどこか遠くを見つめるホタル。
勿論喜ぶべき話だったのだけれど、万感の想いを込めたようなホタルの呟きに、
気安い言葉をかける事は躊躇われて。
無言で見つめていると、やがてホタルがまた計佑に視線を戻してきた。
「そういう訳でだな。まくらには、お前から宜しく言っておいておくれ」
「えっ? いや、呪いが完全に解けるんだろ? だったら、ちゃんとまくらにもお前から話を……」
そんな目出度い話があるのに、それはちょっと薄情じゃないかと思ったのだが、
「……いや。今の私は、まくらと相対してちゃんとお礼を言える自信がない。
まくらにどれだけ助けられたかを思えば、失礼すぎる話なのだけれど、な……」
そう答えたホタルは、俯いて、どこか苦しそうで。
「……なんだ? まくらと何かあったのか……?」
雪姫への悪戯メールの件でちょっと揉めた事はあったけれど、結局はすぐに仲直りしていた筈なのに。
その後、自分が知らない間にまた何かあったのだろうか?
しかし、ホタルから返ってきた答えは、
「まくらと何かあった訳じゃない。強いて言えば、お前の存在のせいだよ、計佑」
じとりと睨まれてしまった。
「え? は? な、なんでオレの……?」
──な、なんだか最近、ワケのわかんない非難が随分と続いてないか……?
合宿中の、雪姫や硝子からのあれこれを思い出して頬をひくつかせる計佑に、ホタルが軽くため息をついた。
「大恩人であるまくらに対して、確かに酷すぎる話だとは重々承知しているさ。
……それでも、私よりずっとお前の心を占めている女だと思うと、どうしてもだな……」
「は? え? そ、それどういう意味だ?」
──心を占める? まくら以下である事に不満がある? それってつまり嫉妬とかいう事? でもなんで嫉妬なんて?
次々と疑問が湧くが、答えにはさっぱり思い当たらない少年がぽかんとしていると、
ホタルが今度は、大きくため息をついた。
「これでわからんとは、逆に凄いぞ……お前の方こそ、もしかして鈍くなる呪いでもかけられてるのか?」
「うぐっ……や、やっぱりそんなにヒドいか、オレ……?」
もはやはっきり自覚もしてはいる欠点。
幾人もの人達から指摘されたそれだが、また追求してくる人が増えた事に改めて凹み、
今度は計佑のほうが大きくため息をついた。
「まあ、酷いは酷いんだが……お前の場合、それ故の長所にもなりえているから、
全面的に悪いとも言い切れんかもな」
「……鈍いのに、長所にも……?」
ピンと来なくて首を傾げたが、
「……ああ、だが。やはりいくらかは気をつけたほうがいいかもしれんな。
その調子だと、お前その内、あの須々野という娘にいいようにされてしまいそうだ」
「へ? な、なんだそれ?」
続くホタルの言葉は、もっと不可解だった。
「あの娘、結構捻れそうな気配がある……こじらせると、今の私のような気性になりかねない」
「捻れ……? お前のような……?」
「まあ20年も生きていない小娘だ、当分はそれほど面倒な事にはならんだろうが。
それでも、私より余程聡そうな娘だ。
……あの手合が覚悟を決めたら、天然のお前たちでは相当愉快な事になるだろうな」
「は、はあ……?」
くくっ、とホタルが意地の悪い笑い方をしてみせるが、計佑には最後までよく分からなかった。
もう少しわかりやすい解説を頼もうとしたが、ホタルにはもうその話をするつもりはないようだった。
計佑から視線を切ると、その身体をふわりと浮かび上がらせ、そして手足を伸ばして地に降り立つ。
計佑もまた立ち上がろうとして、
「ああ、そう言えば……お前との約束、破った事を話していなかったな」
「え? 約束?」
どこか遠くをぼんやりと見つめながらの、
とるに足りない話だと言わんばかりのホタルの口調に首を傾げながら立ち上がりきったところで、
「ヒトに悪戯するな、というやつだよ。ついさっき、あの女に仕込んでしまった」
「なっ……!?」
あの女──ホタルが敵視している相手と言えば、一人しか思い当たらない。
一瞬でカッときて、ホタルにつかみかかった。
「おいっ、何だよそれ!! 先輩のことか? 先輩に一体何したんだ!!」
「……別に大した事じゃない。せいぜい、悪夢の一つでも見る程度の──」
「程度なんて聞いてない!! なんでお前、いつもいつも先輩にだけそうやって……!!」
冷めた目で見上げてくるホタルに、怒りが更に膨れ上がる。肩を掴んだ手に力を込めて、
「──そんなにあの女が大事か」
その瞬間、掴みかかっていた手にバリっと強烈な痛みが走って。
静電気を十倍かにでもしたかのような激しさで、バチン! と手が弾かれた。
「づっっ! ぐ……!!」
ビリビリと痛みに震え続ける両手を見下ろしていると、ホタルの冷えきった声が降り掛かってくる。
「何故か、だと? 憎いからに決まってるだろう。憎くて憎くて、百回殺しても飽き足りなそうだ。
……お前のそんな反応を見せられて、ますますその欲求が高まってきたよ。
今からでも、あのぶくぶくと膨れ上がった胸を抉り取ってきてやろうか」
「ふっ……ふざけんな、よ……!!」
物騒すぎるセリフを吐かれて、黙ってはいられなかった。
未だに震え続ける重い両腕に引きずられて、中腰の姿勢のまま見上げて、
「……ひっ……!?」
悲鳴が漏れた。
──ホタルの首から上が、ぐにゃぐにゃと蠢いていたからだ。
陽炎のように霞んだかと思えば、
縦横にぐにぐにと伸び縮みをも続ける頭部。その変形につられるように形を変える顔のパーツが、
顔中を這いまわり続けたりもして──もはやまともな表情など見るべくもないホタルの顔。
ホラー映画のCG演出でしかお目にかかった事がない現象を目の当たりにして、完全に凍りついてしまう。
そんな化け物を前にして、無力な少年が出来る事は腰を抜かす事くらいしかなさそうだったが、
顔中を動きまわる眼から、憤怒、嘲笑、そして──殺気までをも含めた光が放たれている気がした少年は、
ガクガクと震える膝にようやく痺れがとれてきた両腕をついて、どうにかへたり込む事は回避してみせた。
「ささ、させねぇぞ、そそんなコト……」
ガチガチと歯を鳴らしながらで、呂律も回らなかったがどうにかそう口にして。睨み上げた。
今、自分が引き下がったら、本当に雪姫を殺しにでも行かれそうな気がして──
その恐怖は、目の前の怪物に対するそれより大きくて、どうにか踏みとどまらせていた。
そのまま睨み合いがしばし続いて、やがて先に折れたのは──
「……そんな目で睨むな、流石に傷ついてきた……」
拗ねたような声が聞こえて、ホタルの顔が一瞬で元のものに戻った。
のしかかってきていたプレッシャーも霧散する。
「ぶはあっ……! はあ、はあっ……!」
滞っていた呼吸が回復して、膝に手をついたまま大きく呼吸を繰り返す。
「……別に本気で言った訳ではないのに。
憎いのは確かだが、そんな危険なんて冒すものかよ……
確かに "ほらあ映画" の真似事もやってはみたが、
本当に化け物でも見るような目で睨んでくるなんてあんまりだろう……」
「はあ……はあ……っ」
「……私の気持ちも考えてみろ。
こっちは100年想い続けているのに報われていないんだぞ……?
なのに悪夢一つで堪えているのだから、むしろ褒められてもいいくらいじゃないか……」
ぶつぶつと呟き続けるホタル。いつもの大人びたオーラは完全に消え、
外見年齢そのままの幼さを感じさせる佇まいは、完全に拗ねた少女のもので。
それでも、心臓すら止まりそうだった恐怖から開放されたばかりの少年に、その言動を認識する余裕はなかった。
「はあ、は……こ、これだけは絶対折れる気はねーぞ……先輩を元に戻せ」
ようやく膝から手を離して、姿勢を戻してから言い放ったが、
「断固、断る」
そっぽを向いたホタルの返答は、取り付く島もないものだった。
「な、なんでだよ……先輩が、お前に何したって言うんだよ……」
困り果てて、縋るようにそう尋ねるとホタルが顔を戻してきた。
唇を少し尖らせたその不満そうな顔は、初めて見るような子供っぽさで、少し意表を突かれる。
「……あの女は、榮治さんと他の女の間に出来た子孫なんだぞ。初めから、好きになぞなれる要素がないんだよ」
「えっ……い、いやそれは……でっでも、逆に考えたら、榮治さんの血を引いてるってコトだろ?
それに愛しさとか感じたりしないのかよ?」
強烈な嫉妬を伺わされて一瞬怯んだが、食い下がる。それでも、
「そういう風に思える女もいるだろうな。だが私は嫉妬しか覚えない気質だ」
バッサリ切り捨てられてしまって、もう何も言えなくなってしまった。
力ずくなど絶対不可能、言葉を尽くしても駄目なら、
あとは土下座でもして縋りつくしかないのか──そんな風に考えて俯きかけていたら、
ホタルが眉をひそめて困ったような声を出した。
「そんなに悲壮な顔をするな……さっきも言ったが、悪夢の一つ程度だぞ?
……それに、考えようによっては、あの女の為になる贈り物と言えなくもないんだからな」
「えっ!? な、なんだそれ。どういうコトだよ」
「前にも少し言った事はあると思うが、私が深く干渉出来る相手はお前か、まくらくらいだ。
お前が危惧しているらしい、深刻な呪いみたいなモノをかけたりなんてそもそも不可能なんだよ。
だがまあ、全く何もせずにいるというのも耐え難い。
そこで、私が世界を渡った時の残滓というか──まあ私にしか認識出来ていないモノだが、
世界同士を繋いでいる糸のようなものがあるんだよ。
それを使って、まず向こうの世界のあの女を探しだしてだな──」
そこまで語って、ホタルがぴたりと口を止めた。
しかし計佑に先を促す事は出来なかった。
……ここまでの時点で、もう理解が追いついていないからだった。
「……これ以上語っても、どうせ理解出来んだろう? それにもう、あまり時間もなさそうだ」
ホタルが、またどこか遠くを見やりながらそんな風に説明を切り上げてきて、
「そ、そうだな……確かに何か難しそうだ……じ、じゃあ信じるぞ? ホントに先輩の為にもなる事なんだよな?」
やはり不安で、つい念を押してしまうとホタルが苦笑を浮かべた。
「為になる、という言い方は少し違ったかもしれんが……とにかく、今のお前達なら何の問題にもならんさ」
答えたホタルの身体が、宙に浮き上がって。目線の高さが計佑と同じになった。
「…………」
「な、なんだ?」
無言でじっと見つめてくるホタルに戸惑う。尋ねると、ようやくホタルが口を開いた。
「なあ……計佑。お前は今、幸せなんだよな?」
「え? そ、そりゃまあ……幸せだー! って思うような事ばっかでもないけど、
特に不満もなく生きてられるんだから、十分幸せだろうとは思う、かな……」
いきなりの質問に、確信がないながらもそんな風に答えると、ホタルがため息をついて天を仰いだ。
「……不満がない、か……はあー……やっぱり連れていくという訳にはいかない、か……」
そして仰いでいた顔を戻すと、
「本当は、たった今までお前を殺してしまうかどうか、まだ迷っていたんだがな」
いきなりとんでもない爆弾を落としてきた。
「へっ……え!? えっえええ! な、なんで……あっ、やっぱり添い寝の事怒ってたのかっ!?」
理由はそれしか思いつかなかったのだが、
「ふふっ……だからそれは違うというのに。
……本当、壊滅的に鈍いところも変わっていないよな、お前は……」
笑われてしまった。
……けれど、その笑みは今まで見た中でも一番優しげで。
──な、なんだ? 殺したいなんて言っておきながら、なんでそんな笑顔なんだよ……?
訳がわからず戸惑っている内に、ホタルの言葉が続く。
「あの世なんてモノがあるのかどうか、確信は持てないが……
もしあるのなら、お前は天国に行ってしまい、人を取り殺すような悪霊は地獄に行く羽目になるのだろう。
それでは、お前を殺してしまう意味などない。
……そうは思っても、お前を置いて行く事にはどうしても抵抗があった……」
一息ついて、
「転生の仕組みもよくわかってはいない。
同時期に逝ったのなら、やはり同時期に転生して来れるんじゃないか? ──そんな考えもあった。
……けれど、悪霊に堕ちた存在に、転生など許されないかもしれない。そんな迷いもあって……」
話についていけず、相槌すらうてない少年。
「……結局、わからない事だらけだというのなら、己の正直な欲求に従おうかと、そんな風にも思ったんだが……」
ホタルが苦笑して。
「だがまあ、転生がある事だけは、はっきりしている訳だからな。
素直に次を信じて、危険な橋は渡らず実直に逝く事にしたよ」
そして、晴れやかに笑うホタルの姿に、どうやら殺されずには済むらしい……
くらいは辛うじて理解できた少年も、色んな意味での複雑な笑みを浮かべた。
「そ、そうか……なんかよくわかんないけど、まあお前がきちんと納得出来てるんなら、良かったよ」
「なんだ、その顔は。命拾いしたんだぞ、もっと満面の笑みをみせてくれよ」
またホタルが膨れてみせて。
そんな風に、先程から時折見せる、ホタルの以前とは違う振る舞いに再び困惑する。
「そ、そうは言ってもだな……そりゃあ、めでたい事なのは確かなんだろうけど。
でもお前、成仏しちゃうってコトなんだろう?
……やっぱり複雑で、100パーの笑顔で見送れったって、ムリだよ……」
いよいよホタルとの永遠の別れが来た事を感じ取ってしまえば、
複雑な想いに囚われ、ニコニコと脳天気に笑うなんて不可能に決まっていた。
「ふむ……まあ若いお前では、割り切るのが難しいのは当たり前か。とは言っても、こちらもちょっと引き下がれん」
言うや否や、ホタルの右手が閃いて計佑の胸をトン、と突いてきた。
「は……? な、なんだ?」
一瞬の早業に、全く反応出来なかった。
別に痛みはなかったが、何をされたのかと突かれた場所をまさぐっていると──
「……は? うふっ!? はっ、ははは! なっなんだこれ!? くっくすぐった──!」
あっという間に、体中がくすぐったくなってきた。
「ははははは!! ぜっ、全身くすぐった……!? ホ、ホタルっ、何したんだよっ」
中腰になって悶えながらも、元凶であろう存在を見やると、
「うーん……笑顔は笑顔だが、これは何か違うな……」
腕組みをして首を傾げるイタズラ幽霊が、不満そうに見下ろしてきていた。
「はふふっ、ふざけんな! はっ早く止め──」
立っているのも難しくなってきて、いよいよへたり込みそうになった瞬間、ポンと頭に手が置かれる感触がして。
むず痒さはすぐに消えていった。
「はっ……はあ……はあ……い、いい加減もう勘弁してくれよな……」
さっきから、一体何度、息を荒くする事態に陥れられているのか。
流石に苛つきを覚えて、ジロリと睨みつけると、
「う……す、すまん。いや、しかしだな?
やはりその、最後に見る顔には、どうしても妥協はしたくなくてだな……」
珍しくしどろもどろになりながら、パタパタと手まで動かしながら言い訳をする姿は、
やはり以前とは違っていて──なんだか可愛らしかった。
そんな姿に、一瞬幼女状態の事を思い出して。
「ぷっ……はははっ、そっか。お前の本当の性格って、こういう感じだったんだな」
幼女の頃の振る舞いや、写真で見た無邪気な笑顔。
長い年月で随分落ち着いてしまったのだろうけれど、
元々はまくらやアリスのような、元気一杯の少女だったのだろうと想像できて。自然に笑みが零れていた。
「……っ……! そう、その顔だよ。最後は、絶対にその顔を見たかった……」
ホタルの顔に、ふわりと笑みが広がった。
幸せそうなその笑顔は──そう、写真での、榮治の隣で写っていた時のような。
「────」
その笑みを見た瞬間、計佑の思考は消えた。無心のままで、ホタルの笑顔を見つめ続ける。
「貴方の笑顔が好き。──ずっと、ずっと好きだった」
「……ホタル……」
「……芳夏だよ。最後には、ちゃんと名前でお別れして……」
あだ名通りの儚い笑みを、芳夏が浮かべて。
「……芳夏……本当にもう逢えないのか……」
「……逢えるよ。きっとまた、捜し出してみせるから……」
そう告げたホタルの身体が、すっと宙を滑って計佑との距離を詰める。
「……だから今は、とりあえずのお別れ。また、いつか──」
その言葉を最後に、ホタルが消える。そして、顔に風を感じた。特に、唇の辺りに強く──
次の瞬間、視界一杯に、小さくも無数の光がパァッと散った。
その光は、かつて旅先でも見たことのあるもの。
あの時には、日光の下と言う事もあってあまり目立たなかったけれど、
夜空の下で見る、色とりどりの螢のような光は、幻想的な美しさで目に灼きついた。
「…………」
無心で、右手を持ち上げた。
散りゆく光の中でも一際蒼い一つが、掌に舞い落ちて。
すぅっと皮膚をすり抜けるようにして──掌に吸い込まれた。
すると、その掌から少年の全身へと蒼い光が広がってゆく。
「…………」
吸い込まれた一つの光以外は、直ぐに全て、宙に溶けてしまった。
完全に静寂を取り戻した星空の下で、淡く光を放ったままの少年は、無心で右手を見下ろし続けていた。
─────────────────────────────────
「…………」
やがて、計佑が纏っていた蒼い光がゆっくりと消えていき。
完全に消えたところで、無心だった計佑の意識が覚醒した。
顔を上げて、ほぅ、と溜息が漏れて。そして、突然────胸に大穴が空いた。
「──なっ!!?」
慌ててシャツの中を見下ろす。
……勿論、大穴が出来たなんて錯覚だった。
けれど、自分の目で確認しても、まだ喪失の感覚は消えなかった。
両手で、胸や背中を何度もさすってみる。問題なし。
確かに視覚も触覚も、『何もおかしい所はない』と伝えてくる。
なのに、頭──いや、心だろうか──が、相変わらず胸にぽっかりと穴が空いたような感触を感じ続けていた。
「なっ……なんだよ、これ……!?」
──ホタルが、最後に何かやっていったのだろうか?
一瞬、理性がそんな事を考えるが、本能の部分ですぐにそれを否定した。
ホタルが最後に見せた、あの清廉な微笑みに──決して裏なんかないと確信出来た。
つまり今のこの状態は、自分自身の問題だと認識した瞬間、
『ドクン!!』と心臓が強く悲鳴を上げた。
「ぐっ……!」
痛みはそれ程でもなかったけれど、あまりの衝撃の強さに、全身がビクリと跳ねた。
「一体……どうなって……」
心臓に手を当てて、見下ろす。
と、その左手にポツポツッと温かい液体が垂れ落ちてきた。
──雨? と一瞬考えたが、そんな天気ではなかったし、温かい理由もわからなかった。
首を傾げて、頬を何かが伝う感触に気付く。……いつの間にか、涙が流れていた。
「え……何……?」
何故か自分が泣いていた事に気付いて、頬に両手を持って行く。と、
「いっ……!!」
両目をズキリと強烈な痛みが襲ってきて、自然瞼を閉じた瞬間、ドッと涙が溢れてきた。
「づっ……が……!」
思わず手で目を押さえる。それでも痛みはまるで和らがない。
立っている事すら出来なくなって、両膝を地についた。
まるで目が壊れでもしたかのようで、相変わらず涙も溢れ続けてくる。
灼熱の痛みをこらえようと、身体が自然と丸まって。
地面に突っ伏して蹲っていると、やがて痛みは和らいできた。
しかし、それでも熱い涙は止まらない。
加えて、目の痛みで一時は忘れていられた胸の大穴の感触が蘇ってきた──今度は、
強烈な寂寥感と、悲しみを伴って。
「ふぅうっ……! ぐぅうう……!!」
あまりの心寂しさに耐えきれず、地面に縋りつくかのように爪を立てる。
けれど、土がそれに応えてくれる筈もなくて。身体がブルブルと震えはじめたところで、
「──計佑くんっ!!」
自分を呼ぶ声が聞こえて、顔を上げた。
相変わらず溢れ続けてくる涙のせいで、はっきりと視認する事は出来なかったけれど、
──……せん、ぱい……
声を聞けば、相手が誰なのかはすぐにわかった。
「どうしたのっ、計佑くん! どこか痛むの!? しっかりしてっ!?」
駆け寄ってきた雪姫が、しゃがみこんで様子を伺ってきた瞬間、
「──あああぁぁあああ!!!」
悲鳴を上げて、抱きついてしまっていた。
勢いに押されて尻餅をついた雪姫が軽い悲鳴をあげたが、頓着する余裕もなく、夢中でしがみつく。
「ああっ、ああああぁあ!!!」
泣き喚いて、蹲ったまま雪姫の背中に手を回して、全力で引きつける。
少女のお腹に頭を押し付けて、母親を見つけた幼い迷子のように、死に物狂いで縋りついた。
「計佑くん、何があったのっ!? どうしてそんなに泣いてるの!?」
雪姫が背中をさすってくる。それでも、何も答えられなかった。
──ここまで自分が壊れてしまった理由なんて、自分自身でもまるでわからなかったから。
泣きじゃくりながら、雪姫の背中に爪を立てて掻きむしり、全力で少女の腹部を圧迫して。
なのに、痛みも苦しさもあるだろうに、雪姫はそれ以上は何も言わずに、背中や頭を優しく撫で続けてくれた。
「ふうっ……! うぁあああ……!!」
それでも、嗚咽が続いてしまう。
縋る相手を得られたにも関わらず、激しい悲しみと強い寂寥感は未だ健在だった。
やがて、ポツリ、ポツリとうなじに温かい雫が垂れ落ちてくるのを感じた。
「……な、泣かないで計佑くんっ……け、計佑くんがそんな風に泣いてたらっ、私、わたしぃ……」
ぐすっと鼻をすすりながらの声が聞こえて、雪姫が貰い泣きを始めてしまった事に気付いた。
……それでも。
いつもなら、雪姫を泣かせてしまっている状況にじっとなんてしていられない筈だったけれど、
自身の感情が嵐に見舞われている今だけは、何も出来そうになかった。
それに──雪姫が、形はどうあれ自分の為に泣いてくれている、
自分とこの悲しみを共有してくれている──そう思った時、
ようやく自分の中を占領していた寂しさが薄れていくのを感じて。
甘えるように、頭を雪姫に擦り付けた。
「ぐすっ……う、うんっ……わ、私はここにちゃんといるからっ、一人で泣いたりしないでぇ……」
そんな声と共に、雪姫の身体が前に倒れる気配がして。頭が背中に乗せられるのを感じた。
「計佑くんっ……計佑くんっ……!!」
雪姫もまた、自分の背中に縋り付いてきて、ポロポロと涙を零し続けてくる。
その涙の暖かさをシャツ越しに背中に感じて、また少し寂寥感が拭われる気がした。
「せん、ぱい……先輩っ、ごめんなさい、もう少しだけっ、このまま──」
「い、いいよっ、謝ったりなんかしないで……いくらでもっ、ずっとずっと、一緒にいるからっ……!」
漸くどうにか口に出来た言葉に、雪姫もまたしゃくりあげながら応えてくれた。
『ずっと一緒にいるから』──その言葉を聞いて、また少し、心に平穏が戻る。
雪姫の背中にずっと立てたままだった爪先を、ようやく剥がす事が出来た。
そのまま、詫びるように背中を撫でる。
雪姫もまた、より強く計佑の背中に縋り付いてきて、優しく背中を撫で続けてくれた。
相変わらず、滝のように涙は流れ続けていたし、悲しさも健在だった。
……けれど、胸の穴だけはいつしか埋められていて。
「……ありがとう、先輩……っ」
雪姫が、ふるふると首を振るのを背中で感じた。
少年の涙がどうにか収まるまでには、それからまだ随分と時間がかかってしまったけれど。
少女は約束通り──最後までずっと、少年を包み込み続けるのだった。
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<24話のあとがき>
……うーん……書きたいのはラブコメだったハズで、これはちょっと違うかもなんですけど……
でも原作で放置されちゃったホタルも、どうにかしたいなーって思っちゃったんですよね~……
突然ですが、僕ぁハリウッド映画大好物なんだけど、
でもハリウッド映画でボロ泣きしたのって、
パッと思い出せるのは『グッド・ウィル・ハンティング』と『CLICK もしも昨日が選べたら』
くらいしかないですね……
いやでも、この2つはもう~~! ホントにいいんですよ!!
何がいいって、悲劇じゃない(……筈、多分……)のに、泣かせてくれるトコロがほんとにスゴイのです。
悲劇で泣かせるのは、まあそれだって簡単じゃないと思うんですけど、
やっぱり温かい感動でボロ泣きさせてくれる話って、別格だと思うんですよね~……
まあ、僕にはそんなハイレベルなんて到底ムリなので、
とりあえず悲劇的方向で頑張ってはみたつもりなんですが……うーん。
ここまでに、もっともっとホタルとの日常を描いていれば。
或いは、もうちょっとは泣ける感じになってたのかなぁ……?
やっぱり、キャラに感情移入させておいての墜落劇が、一番てっとり早い……ですよね?
萌えを目指してて、そんなんはどうかと思わなくもないんですけど、
スイカに塩理論ってゆーか、僕は『萌えにだってある程度のシリアスも必要でしょ!』
って考え方なんですよね……まあ今回のは塩かけすぎかもだけど(-_-;)
でもこれ、ホタルはようやく呪いから開放されて、一応ハッピーエンドとも言えるワケですから。
そういえば、また話それちゃうんですけど、
ハッピーエンドって宣伝文句に納得いかなかった作品として、
「バタフライエフェクト」と「All You Need Is Kill」の2つが強く印象に残っています。
バタフライ~の方は、まだいくらか納得できなくもないんですが、
All~の方は、う~ん……まあ確かに、間違ってる、とも言い切れないんだけどぉ……
ただ、話としてはALL~の方が断然面白かったんですけどね!!
萌え豚の僕でも認めざるを得ない傑作で、まあ凄い有名な作品なんで知らない人はあんま
いないかもですけど、もし読んだコトない人は機会があったら是非!
だって、ハリウッドが映画にするらしいんですよ、これ。
日本のラノベを、トムクルーズで映画にするっていうのは、すんごいコトじゃないですか?
……まあ、トムクルーズ主演というのなら、ラストなんかは相当改変されちゃう気がするので、
未読の方には、ハリウッドレイプに合う前に是非原作を読んでおいてもらいたいものです^^;
アリスのフラグは、22話で一応畳んだつもりだったんだけど……
……なんか今回、また建て直してしまったような(汗)
今回の校門でのアリスとのシーンは、最初は
『他人への頭ワシャワシャを発見してしまい大ショックのまくら』
の為だけに考えていて、せいぜい
『雪姫へのイタズラを咎めるためにお仕置きして、アリスはすぐに逃げ去る』
くらいしか考えてなかったんだけど、書き始めたらなんかああいう流れが思いついちゃったんですよね……
そして屋上ではすっかりデレてしまっていたアリスですが、
まあどうにか「やっぱりお姉ちゃんは面白いや!」
という方に無理やりにでも戻しておきました(^_^;)
でないと、収拾つかないんですよね、もう。
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「ドア越しにでも、親父さん達の声が聞きたいからじゃないのか?
来た時と、帰る時……窓越しにでも、親父さん達の姿を見たいからじゃないのか?」
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↑↑ この辺の理屈は、濱田センセイも好きと耳にしている『めぞん一刻』の、
実家にひきこもり響子さんのシーンから。
屋上での雪姫先輩、
前回からこうもヤキモチ続くと流石にウザくなったかもしんないんですけど……
でもここにラヴコメ挟まないと、まくら、硝子と不穏な雰囲気→すぐにホタルとの別れ、
となって、これはあまりにも重くなりすぎるかなぁと(-_-;)
なんで、絶対になんかしら挟みたかった訳なんだけど、
ここで焼きもち以外の、もっといい雪姫先輩って思いつけなかったです……
ここでぎゃいぎゃい騒ぐ三人見て、まくらの心がまた折れる……ってのが目的でもありましたしね……
まくらの「誰にでも優しいと、苦労するよ」予言が、今回成就してますかね。
まあ僕の中ではこんなんは序の口で、本格的に苦労すんのは……なんですけど。
そういえば、天体観測なのに、夜は早々と寝たりするもんなのか……うーん? (-_-;)
まあ、細かいことは気にしないでくださいm(__)m
僕が書きたいのは部活部分じゃないので……(-_-;)
弱々先輩だけど、計佑の為なら……ってのは、
攫われた時、計佑のために男に体当たりとかでもありましたよね。
そして、この計佑の為なら夜道も何のそのってやつと、
雪姫の危機と思えば怨霊が相手だろうと、
っていう感じのセットは22話のパターンと一緒で、
上手く相思相愛ぽく出来たんじゃないかな……読んでくれてる人にもそう思われてるといいな……
原作、ホントはホタルって子供時代の雪姫とも面識あったりしたんじゃとかも思うんですけどね。
子供雪姫も、問題の島に行ったりしたコトあったんでしたよね。
その時とか、まあそうじゃなくても、実家のほうでバッタリとか……
当初の予定通り? ゴースト関連の話が長く続いていたら、雪姫とホタルとの話や、
雪姫も眠りについてしまう展開とかあったんじゃなかろうかと夢想してみたり。
しかしこの話のホタルからしたら、
想い人を寝取った相手の子孫に、またも想い人を奪われてしまう体なんだよな……
そりゃあホタルの恨みも募るんじゃないかな(汗)
……そして、それだと榮治って生まれ変わってのコトとは言え、自分のひ孫とくっついちゃうかもな訳か……
そう考えるとちょっとアレですね、今頃になって気づいた(-_-;)
にしても、ここまでホタルが嫉妬深いってコトになると、榮治の妻なんかも結構ヤバかった筈……(汗)
うーん、霊になりたての頃はまだ力が殆どなかったってコトでどうかな……あと、当時はまだ今ほどには
性格もねじれてなかったとか。
僕の勝手なイメージだと、年を経てだんだんと力がついて + 呪いが半分解けたコトでまたぐっと強化された、
みたいなものを抱いてんですけど。
今回の話の裏設定として、
『ホタルは計佑の元を訪れる前に、パコ達を "片付けてきた" 』
というものがあったりします。
ブラックな展開を求める方だと、
出所してきたパコ達が、復讐で雪姫たちを……みたいな妄想抱いたりするみたいで……
けれど僕としては、そんなのは、とっっっ──ても!!! 困る可能性なので、
きっちりそれを潰すためにと、ホタルの裏話を、簡単にですが書いてみました。
……まあそれは、ラブコメに添えるには余りにもそぐわない話になってしまったので、
投稿する気はないんですけどね……
ここの本編では綺麗に消えていったホタルですが、
その短編ではちょっとブラックな振る舞いを見せているので(-_-;)
普通に見たらそんな過激でもないんだけど、ラブコメの一枝と考えると、うーん……と思っちゃって。
……まあ、もしそんなんでも見たいっていう奇特な方いらっしゃいましたらメールくだされば、
urlなりお知らせさせて頂きますm(__)m
ホタルが消えたとこのイメージ元は、アニメ版・AKIRAと、原作版・Gu-Guガンモです。
……AKIRAは、まだレンタル屋にでもありそうだし、スカパーとかでたまにやってそうだから
観たことある人いそうだけど、原作ガンモだとどれくらい知ってる人いるのかな(汗)
前回のアトガキで、硝子だと叱って、まくらだと笑って、雪姫だけ何も……みたいなん書きましたけど、
自分なりに思いついたささやかなネタってのが、今回の『一緒に泣いてくれる』でした。
いや、こんなんでも結構バカにならんのではないかと思うんです。
感情に本気で同調してくれる相手ってスゴク有難い存在……と思うんです、が……どうでしょう?
本気で凹んでる時だろうと叱りつけてきそうな硝子はこういうのに向かないし
(いやまあ、流石にマジ泣きしてる時に噛み付いては来ないとは思うんですけど)
まあ、原作まくらだったら……一緒に泣いてくれそうなイメージもあるんですけど。
でも基本的には、ニッコニコ少女だからな~……
多少凹んでるくらいには笑って引っ張りあげてくれそうだけど、
計佑がマジ泣きするような事態になったら、まくらも狼狽えるだけになりそう、ってのが僕のイメージです。
ラストの締めでは、
『重なりあう2つの影と、立ち尽くすもう1つの影──』
みたいな文で、もう一人の存在を明記するかどうかは悩みました。
でもそれを明記しちゃうと、その第三者の存在が印象に残って終わり、ってなりそうじゃないですか?
けど今回のこのラストは、計佑の苦しさや雪姫の存在感とかをしっかり伝える方向でいきたかったから、
それは無しにしました。
一応、雪姫が抜け出した時のシーンで、
誰かもう一人が起きてきた事は知らせてあるし、まあ詳しくは次回で明らかにすればいいかな、と。
ラストのとこは、
1.原作ではなかったホタルの決着を書いたら、
2.雪姫と更に絆を深める事が出来て、
3.その結果まくらが計佑を諦めてしまう、
という、一石三鳥だと思ったんですが……
長々と行数かけて書いてるんだし、ホタルとの別れが一番でかい鳥に見えるかと思うんですけど、
僕ん中じゃあ、あのシーンでの一番でかい鳥は、全然書かれてないハズのまくらなんですね。
僕の好みだけで言えば、2.にあたる『先輩にすがり付いて咽び泣く』って
トコが一番大きい筈なんですけど、
全26話という話の中では、
『まくらが完全に計佑を諦めてしまう』意味のほうが大きいコトの筈で……
まくらの心をきっちり折るのは『原作を自分好みに改変してやるんだっっ』
という目的からは必要な事でして、
ホタルとの別れと咽び泣く計佑たちとかがメインに見えても、
実はまくらの心をヘシ折るのこそが最大の目的だったのですよね。
そして残りはニ話なんですが、最後ってコトで、
どうしてもまたシリアス多めになっちゃうと思うんですよね~……
「ラブコメといっても、最後には必ずシリアスが来る」ってのは絶対の法則……ですよ……ね?
まあ、もしもまくらエンドにもってくにせよ、
『計佑と、選ばれたコにとっては』ハッピーエンドで終わらせるコトだけは間違いないと思うので、
ここまで読んできてくださった方には、もうちょっとお付き合いして頂けるとありがたいですm(__)m
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