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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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21 剣、取りし者

 カルビア城の執務室で私はレミングのハープを軽く鳴らす。
 別に猫が見たい訳ではないが、こいつがここにある意味を考えないといけないからだ。
 レミングのハープ。
 ネズミの町レミングに伝えられる伝説のハープで、ネコを呼び出すためこの町では禁断のハープと言われるこれは自治都市ボセーデンでもらったものだ。
 そして、同時にカオスフレーム(CF)が70に届いていない事を意味する。
 自治都市ボセーデンでもらえるものはCFで変化する。
 70以上だったら私の目の前にはもりのペンダントが映っていただろう。
 実はこれはかなり大事だったりする。
 まず、主力が攻略予定のオルガナだと、戦闘後のCF60以上でAli70以上かつティンクルスターを所有していれば氷のフェンリルが仲間になる。
 これについては問題がない。
 問題なのは私が受け持つアンタリア大地で、この地にいる天使長ユーシスを仲間にする為のCFは65なのだ。
 聖騎士ラウニィーが仲間にしているから大丈夫とも思わない訳ではないが、カルビア半島戦の長丁場で下がっている可能性が否定できない。
 ゲームではマップ攻略についてある一定日を過ぎるとCFが下がる仕組みになっている。
 実際にそれを現実に解釈したら戦場の長期化で民の負担が不満に変わったという所なのだろうが。
 先に永久凍土を抑えて、その後でアンタリア大地を攻めてもいいが、天使長ユーシスと堕天使ミザールを会わせる事ができなくなる。
 姉妹今生の別れとなるのにできればそれは避けたい所。
 オルガナ攻略を待つというのもありだが、天宮シャングリラ戦でユーシスの戦力は必要になるので彼女は早めに確保したい。
 で、地図と睨めっこ。

「にゃー」
「にゃー」
「にゃー」

 なお、部屋が猫まみれになってえらく怒られたのは見なかったことにして欲しい。




「綺麗な所ね」

 本拠地ゲイボルグにワイバーンにクラスチェンジしたボイナを降りた私の呟きをデスティンが嗜める。
 手っ取り早くCFを上げるために、少数の部隊を率いてとある島の攻略にやってきたのだった。
 島の名前はサージェム島。
 隠しマップの一つで、私達が本来出会う為の島である。

「この島はラザールの町にドラゴンが住みついてからというもの、魔獣があちこちに出てきて襲っているんだ。
 そういう事は、ドラゴンを倒してから言うべきだよ」

 さすが我らのリーダー様である。
 さてと、取り出すのはオールサモンズ。
 味方ユニットをオピニオンリーダーの元へ結集させるアイテムなのだが、ゲームでは使い道がいまいちだったりする。
 だが、今回みたいに攻略して部隊を展開する時はこいつが凄く重宝する。
 ゲーム開始前に使いまくっていたのだろうと思わずにはいられないアイテムを使い、この地に部隊を展開させる。

「我らをお使いになるか。
 新参者ゆえ頑張らせていただこう」

 まずはゴエティックのジュルク率いるホーライ王国残党の300。
 残った連中の人質も兼ねている。

「で、私らは監視と。
 わかった」

 エニグマハンターのスザンナ率いる200の女性部隊がその監視につく。
 小さなマップだ。
 それ以上連れてゆくには負担が大きい。

「ばう」
「きゅー」

 久しぶりに会ったアラウンはケルベロスにクラスチェンジしてぽちとじゃれているが、どう見ても怪獣大決戦です。
 本当にありがとうございました。
 ぽちもそろそろクラスチェンジを考えないといけないのだが、ファイヤーブレスの使い道が良いからそのままにしている。
 およそ500人の部隊をつれての邪竜退治だが、実はこのマップ帝国軍が相手ではなく、邪竜がボスという事もあって拠点防衛などはあまり考えなくて良かったりする。
 じゃあ、何でつれてきたかというと、プロパガンダの為である。
 隠れた善行ではここに来た意味がないという世知辛いというかなんというか。
 本拠地ゲイボルグの代表が私達に世辞を述べているのを上の空で聞きながら苦笑する。

「おおっ!
 王国軍の皆様が竜を退治してくれるとか。
 少し前に剣士二人が退治に来たのですが、力が足りず退治できませんでな。
 期待しておりますぞ」

 なんですって!?


 サージェム島は隠しマップであると同時に、ある種のチュートリアルマップでもある。
 出てくる敵は基本的にオピニオンリーダーめがけてやって来るので防衛戦力も実は必要ない。
 本拠地ゲイボルグにジュルク隊を残して出撃。
 その日の午後に城塞都市シーズリを開放。敵部隊はいまだ見えず。

「それは、剣士二人が自警団を作ってロンギスの町で防戦しているからですよ。
 被害はぐっと減りましたが、暗黒竜アキシオンの力が強大で攻め込む事ができないそうなのです。
 王国軍の皆様。期待しております」

 はて?
 あれそんなに強力だったかなと首をかしげた私にデスティンが気づいて声をかけてくる。

「エリー。
 何か気になる事でも?」

「いえね。
 暗黒竜アキシオンってそんなに強かった……あ!」

 そういう事か。
 スザンナ隊+ぽちとアラウンはそのままロンギスへの進撃を命じ、デスティンをつれて私はボイナで中央の島にあるロシュフォル教会へ。
 教会の神父は、私の予想通りの言葉を言ってくれて私の予想を裏付けてくれたのである。

「王国軍の皆様。
 あなたさまの持つその剣ならば、黒きドラゴンを倒せましょう。
 なんとかラザールの町をお救いください」

と。
 つまり、ここに居るオピニオンリーダー候補者の二人は聖剣『ブリュンヒルド』を装備していなかったのだ。
 聖剣『ブリュンヒルド』はカストラード海の教会に隠されていたのだからここにあるはすがない。
 で、それによって彼と彼女はウォーレンの招きに遅れ、急場をしのぐ為に呼ばれたのが私とデスティンだったと。
 運命とはうまくできているものだ。
 こうやって、回りまわって因果の糸が物語を作り上げてゆく。
 ボイナで飛んでいけるので少しの休憩を取る事になり、ゼノビア王国名物というか主食になりつつあるパンプキンパイを広げてデスティンと二人で摘む。
 こういう時にデスティンはこちらの事を思ってか声をかける事はしない。
 そんな気遣いが今の私にはありがたかった。
 
「あれ?
 デスティン、蜂蜜全部使った?」

「いや、エリーの分は残しておいた……なくなっているな」

「もぐもぐ……おいしいわねこれ。
 あ、おかわりちょーだい」

「「!!!」」

 二人して気づかなかったなんてなんたる不覚と内心反省しながら鉄扇を構えて、その子の後ろに羽がある事に気づく。
 で、デスティンはブリュンヒルドに手をかけているというのにこのお子様妖精パイから目と手を離さない。
 まぁ、敵意はないのだろうとため息をついて非常食用に残しておいたパンプキンパイをお子様妖精の前に置く。

「ありがとう。
 いただきまーす♪」

 ああ。
 ちゃんといただきますが言えておいしそうに物を食べる人(妖精だが)に悪人は居ない。
 私もデスティンも警戒を解いてこの子に話しかける。

「かわいい妖精さん。
 お名前は?」

「むぐむぐ……チルク。
 いい匂いがしたからやってきたの」

 とりあえず、食べるかしゃべるかどっちかにしなさい。
 多分これ勧誘できそうなんだけどどうしようかと迷っていたら、デスティンが好きにしたらと目で笑う。
 このままパイあげてさようならもなんか味気ないしこれも何かの縁だろう。

「私達の仲間になったら、このパイ食べ放題」

「うん!
 わたし仲間になる♪」

 ちょろい。



 貿易都市ロンギスに到着すると、スザンナに連れられて二人の剣士が前に出る。
 本来ならば物語の主役になったかもしれない二人の剣士は、力量だけはたしかなものがあった。
 だが、装備となると案の定そのあたりの兵士程度でしかない。
 それを気にする事無く女剣士が口を開いた。

「スザンナ殿より話を聞きました。
 私も町を占領しているドラゴンを倒そうと思っているのだけど、なかなか手強く……」

 そりゃそうだろう。
 そのショートソードでドラゴンが貫けるならば苦労はしない。
 防具も自作のハーフアーマーにラウンドシールドだし、ぼろぼろの布も何度も縫い合わされている。
 戦乱による交流の途絶は物流面で自給の難しいこのような島だと、致命的な状況になりかねない。
 それでもなお、竜と戦ってこの島の為に尽くした二人の剣士は間違いなく勇者だった。
 今度は男剣士が口を開く。

「そこで相談なのだが、貴方方もドラゴンを追っているなら私達を仲間にしてもらえないだろうか?」

 断るつもりは元からない。
 デスティンにアイコンタクトで確認して、二人を仲間として受け入れる事にした。

「よかった!
 私の名はアーウィンド。
 よろしくね」

「私の名はサイノス。
 よろしく!」

 二人の手を握って、私達も自己紹介をする。

「デスティン・ファローダだ。
 よろしく」

「エリーよ。
 よろしくね」

「あたしはチルク。
 よろしくね」

 どこから出てきた。お子様妖精。
 けど、ロード三人相手に堂々と名乗りをするあたりこいつは大物なのかもしれない。



 本格的戦闘はCF上昇が目的だから短期決戦を主張した私が押し切り、夜半から暗黒竜の居るラザールの町と貿易都市ロンギスの間の狭い陸峡地域にて行われた。
 ここに柵を作って魔獣達の警戒をしていたのだが、今回は戦力がある為に壮絶な殴り合いとなった。

「敵はデビルにスケルトン。
 ヴァンパイアも居るぞ!」

 サイノスが柵を出てヴァンパイアに斬りつける。
 彼が装備しているのはデスティンが装備していたルーンアックスで、この手の連中にはめっぽう相性が良い。
 装備も更新しチェインメイルとバックラーにバトルブーツをつけて前線にて兵士を鼓舞してゆく。

「北海に住む竜王よ。汝の氷冠を授けよ!凍土と化せ!
 アイスレクイエム!」 

 アーウィンドの必殺技たるアイスレクイエムがスケルトンを消し去ってゆく。
 魔道士の服にアークワンドを持つ姿はセイレーンにも見えなくはない。
 なお、片方の手には常にマジックリーフがあるあたり、親近感が沸く。
 おっと。
 仕事。仕事。

「天駆ける星々の輝きよ、我が下に集いて汚れし大地を浄化せん…!
 スターティアラ!!!」

 こうして、長く周囲に被害を与えていた暗黒竜の眷属はわずか一時間で殲滅された。
 なお、暗黒竜はそれよりも早くデスティンのブリュンヒルドによって退治されたのもついでに記しておく。



「これでこの地もしずかになることだろう…」
「しかしドラゴンがひとざとに現れるなんて ここ数十年にはありえないことであったはずなのだが……」
「これも帝国のもたらす悪しき所業のゆえなのだろうか」

 はいはい。帝国のせい。帝国のせい。
 それによってCFが上がるのだから私は口を閉じて町の住民の感謝を笑顔で受け続ける。
 なんというか、帝国は無関係な気がひしひしとするんだよなぁ。ここは。
 攻略が終わり、私達がこの島を離れる時にデスティンが二人に声をかける。

「ところで二人はこれからどうするんだ?」

 それにアーウィンドがサイノスの手を繋いで答える。
 ふーん。
 そりゃ、二人で孤軍奮闘して生活していたらそうなるか。

「遅れたけど、私達はこれから占星術師の元に行くつもり。
 貴方方の手伝いをしたいと思っているわ」

 反乱から新生ゼノビアの建国、ローディスの第四次光焔十字軍発動と世界は動き続けている。
 別の道を見つけようと言われなくてほっとした。
 何しろ貴重なロード二人だ。
 統治機構確立において決定的に駒が足りない新生ゼノビア王国において絶対に逃しちゃいけない駒だと分かっていたから、いざとなったら土下座してでも仲間になってもらおう思っていたのは内緒。
 この物語は彼らの物語ではないけれども、彼らの活躍の場はいくらでもある。

「エリー。
 進む道は違っても、最後に求めるものは、きっとあなたと同じだと思うの。
 あなたの幸運をいのってるわ」

 ゼノビアに送る時、アーウィンドがウインクしながら私に囁く。
 何を言っているか分からないと思っていたら、魔法で飛ぶ最後の瞬間、アーウィンドがサイノスの頬にキスしてそれを見せ付ける。
 
「……」
「……」

 気まずい。
 何を言っていいか分からない。

「初々しいですな」
「さっさとくっついてくれないかしら?
 賭けに負けるのよ」

 そこの中年魔道士は後で仕事を押し付ける。
 あと、スザンナ。
 賭けについては徹底的に追求するので覚悟しておくように。

「デスティン。
 エリーの事好きなの?」

 そこのお子様妖精どストレートに尋ねるんじゃねぇ!!!
 それにデスティンが何て答えたかは黙秘させてください。 
 

 
後書き
オリキャラメモ

サイノス    戦士系ロード
アーウィンド  僧侶系ロード
 ブリュンヒルドが無かったために暗黒竜に苦戦して、幸せを手に入れた二人。
 爆発しろ。

チルク ピクシー
 お子様。わたしったらさいきょうね! 
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