ロックマンX~5つの希望~
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第十一話 アクセルSIDE6
前書き
レッドアラートの最後のメンバーとの戦い。
アクセルは大いに慌てていた。
ハイエナードとの戦いから帰り、ルインに促されて傷が酷いからとメンテナンスを受けていたのが間違いだった。
自分が寝ている間にとんでもないことが起きていた。
エックスがイレギュラーに襲われたという。
アクセルは事の子細を知らなかったが、とにかく酷い有様らしい。
自動ドアをぶち破るように開けた。
アクセル「エックス!!?」
集中治療室にはベッドに寝かされているエックスの姿があった。
蒼いボディは肩から脇腹にかけて包帯が巻かれている。
幾重にも巻かれた包帯がエックスの怪我の深刻さを物語っている。
ダグラス「アクセル?」
アクセル「え?」
驚いて声のした方を見遣ると凄腕のメカニックがこちらを見ていた。
ダグラス「エックスの見舞いか?エックスなら大丈夫だ。ライフセーバーのお墨付きだ。」
アクセル「どうしてダグラスがここに?」
ダグラス「被災者が多くて手が回らないから様子見とけ…って、ライフセーバーに頼まれてさ」
アクセル「そう…」
アクセルは興奮の幾分収まった顔でエックスを見る。
まだ大人になりきれていない顔立ち。
微かに上下する胸。
横たえた四肢の、腕がひどく華奢に見えた。
アクセル「…今、気づいたんだけど」
ダグラス「ん?」
アクセル「エックスって、大きくないんだね。レッドアラートはデカイ奴もいたのに。エックスはこんな小さな身体で戦って来たんだ」
ダグラス「小さいならお前もそうだろ。ルインやルナだって小柄だし」
アクセル「そりゃそうだけどさ」
さらっと答えるダグラスにアクセルは口を尖らせる。
アクセル「確かにそうなんだけど…以外だったんだ」
再び眠るエックスを見つめる。
彼の表情は穏やかだった。
噂で聞いていた雄々しさも、初めて会った時の毅然とした雰囲気もない。
アクセル「僕はエックスのこんな顔見たことなかった。いつも張り詰めた顔してた」
こんな小さな身体にとてつもない重荷を背負って戦っていたのだエックスは。
“英雄”
“救世主”
2つの称号という名の枷。
アクセル「…とにかく、行ってくる!!早く戦いを終わらせないと!!」
ダグラス「おい、アクセル?」
ダグラスが呼び止めるのも聞かず、アクセルは走り去る。
1人取り残されたダグラスはしばらくして笑う。
ダグラス「本当にライフセーバーの言ってた通りエックスにそっくりだな…。ん?だったらゼロやルインにも似てるのか?」
いつも無茶ばかりしている3人を思い浮かべ、ダグラスは1人噴き出した。
最後の敵はウオフライである。
最後の敵だけは自分だけで倒したいというアクセルに、ルイン達もアクセルの意志を尊重して、出撃させた。
メットールやランナーボム。
メガトータルなど、凄まじいまでの数の敵が、絨毯のように攻撃を仕掛けてくる。
アクセルは粒子化させておいた新しい武器を発現させる。
アクセル「ボルトストーム!!」
回転式拳銃型の銃で、リボルバーの装填部分にあたる部分がプロペラとなっている。
前方に真横の電磁竜巻がメガタートルを破壊し、更に武器を発現する。
アクセル「サークルボム!!」
バズーカ型(イレハンのOVAのハンターが使用する)の武器から爆弾を発射する。
爆弾は僅かな間を置いた後、サークルのような爆発を起こす。
ルナが作製した武器だが、ガンガルンの能力を参考にした武器は今だに出来ていない。
本人曰く大火力の武器らしいが…。
アクセル「無いものねだりしてもしょうがないっと!!」
爆弾を数発放ち、戦闘機を両翼を破壊した。
最後にボルトストームを喰らわせ、とどめを刺した。
バトルシップは混乱していた。
一般市民を避難させつつ攻略しなければならない。
パニックに陥った人々は泣いたり喚いたりと、酷い有様であり、宥めるのも一苦労である。
モタモタしていたら爆弾が飛ぶ。
かなりの人数で、無事誘導するのは骨が折れた。
エックス『だが、アクセル。ハンターというのは簡単に務まるような仕事じゃない。非常時にも最善の判断が出来る冷静さと敵に屈しない強さ。そして命をかけて人々を守る心が無ければ務まらない。君にそれがあるか?』
かつてエックスが言った言葉が脳裏を過ぎる。
アクセル「確かに大切だね…」
アクセルは笑う。
前方には雑魚の大群。
逆に返り討ちにし、シップを沈めた後、小島に移動する。
足場は戦えるだけの広さがあり、それが複数並んでいた。
真ん中の足場に戦士がいた。
スプラッシュ・ウオフライ。
蒼海の追跡者は皮肉に満ちた目をしていた。
ウオフライ「待ってたぜ…裏切り者!!」
アクセル「やぁ、卑怯者!!」
このやり取りは昔からの日常茶飯事。
ウオフライ「ケッ、痛め付けてやるぜ!?前からてめえのことは気に入らなかったんだよ!!」
アクセル「ふふっ、気が合うね。僕もだよ」
今回ばかりは殺気だっているが、一般人なら泡を食って逃げ出しそうな状況でアクセルは平気の平左だった。
ウオフライ「生意気な奴めぇ~…」
ウオフライはシャレが通じず、薙刀を手に間合いを詰める。
ウオフライ「ぶちのめしてやる!!」
アクセル「お断りだよ!!」
薙刀をかわしつつバレットで迎撃。
至近距離で喰らったウオフライはのけ反って顔を険しくした。
ウオフライ「調子に乗るな~」
今度は遠距離から水鉄砲を放ってきた。
アクセル「ハッ、誰が喰らうかっての!!」
超高速で発射された水は鋼鉄すらも真っ二つにする。
アクセルはギリギリで回避。
水しぶきの光を尻目に見た。
瞳孔を戻せば。
アクセル「ウオフライ!?何処に…」
ウオフライ「ここだ!!」
背後から斬られた。
首の付け根から腰にかけ、深い傷であった。
ウオフライ「ひゃはははは!!よく生きてたじゃねえか」
ウオフライは卑怯者の名に違わず、いやらしい笑みを浮かべた。
大体背後からの攻撃など、戦士にあるまじき行為である。
アクセル「さっすが卑怯者、やってくれるよ」
そう言うアクセルの表情は引き攣っていた。
ウオフライ「その減らず口を叩けなくしてやるよ」
ウオフライは海に潜り、音もなく遊泳した。
戦士特有の闘気も卑怯者の悪意すら感知出来ない。
理由はウオフライが優れた戦士だからだ。
アクセルはバレットを下ろし、ゆっくり目を閉じた。
至極危なかっしい立ち姿。
背後で、水音。
笑い声と、飛び出す気配。
アクセル「背後から来るの分かってんだよ」
サークルボムの爆発がウオフライを飲み込んだ。
ウオフライはまだ生きていた。
サークルボムを喰らっても尚、生きていたのだ。
手加減はしていない。
やはりウオフライはただ者ではなかった。
アクセル「僕の勝ちだよ」
ウオフライ「は…生意気なガキだ」
ウオフライは笑うが、アクセルは笑わない。
アクセル「教えて、何がみんなを変えたの?どうしてみんな変わっちゃったの?DNAデータで改造したっていうけど、そんなこと出来るのはレッドアラートにはいないはずだよ?」
その問いにウオフライは渇いた笑みを浮かべた。
ウオフライ「センセイが俺達を改造しやがってね…てめえの持ってきたDNAデータを使えば、力を手に入れることが出来る」
アクセル「みんな充分強いじゃない!!そんな必要どこにあるの?」
ウオフライ「“成長”する力を持つてめえには分からねえよ。上には上がいるんだってことだよガキ。まあ、その結果がこのザマだ」
見れば回路が燃えだしている。
アクセル「過負荷…」
ウオフライ「借り物の力の代償って奴だ」
その時である。
『バトルシップ最終プロテクトが突破されました。これよりシップ内、全てのメカニロイドを自爆させます。』
アクセル「何だって!?」
ウオフライ「へ…大方、センセイの仕業だろうさ。使えない奴は切り捨てる…そういうことだろうよ」
パトルシップのメカニロイドが暴走を始める。
沈みかかった船からメカニロイドが這い出てきて、アクセルとウオフライに襲い掛かる。
アクセル「くっ…」
深手を負ったアクセルに大量の敵を相手取るのは無理があった。
しかしメカニロイドは容赦なく2人に襲い掛かる。
ウオフライ「アクセル…」
アクセル「喋っちゃ駄目だ!!何が何でも突き破ってみせる!!僕は絶対に諦めない!!」
ウオフライ「ガキが…一丁前に言うようになったな」
アクセル「いいから黙って…」
臥せっていたウオフライが立っていた。
燃え上がる胸部を押さえ、喘いでいる。
ウオフライはメカニロイドの大軍を見つめていた。
ウオフライ「確かに俺は卑怯者だがなあ…こんな汚え手ぇ使ってまでてめえを倒そうなんて思わねえよ。俺達を利用しやがったセンセイと違ってな」
ウオフライはメカニロイドの大軍に向かって走る。
アクセル「ウオフライ!!何を…」
ウオフライ「アクセル」
アクセルに向くの瞳は不敵で、意地悪くて自信に溢れていた。
ウオフライ「卑怯者にも卑怯者なりの意地ってもんがあんだよ。男だからなあ!!」
そう叫んで敵に突っ込む。
辺りが閃光に包まれた。
一瞬目が眩んで、何事かとおもった直後。
ウオフライは自爆して全ての敵を巻き添えにしたのだ。
残骸すら残らなかった。
アクセル「ウオフライーーーーーッ!!!!!!」
炎を前に絶叫が上がる。
みんな消える…。
敵も仲間も何もかも…。
仲間を止めた安堵も、戦いに買った喜びも全て。
アクセル「くそーーーーっ!!!!」
許せなかった。
レッドアラートを利用した悪しき者が。
アクセルは炎が吹き荒れる中で、その光をジッと睨んでいた。
後書き
ウオフライ撃破。
何故かウオフライが漢になってしまった。
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