魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epos41義のマテリアルF/炎壊の報復者~Flamme The Revenger~
前書き
フラム・ザ・リヴェンジャー戦イメージBGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「BGM21」
http://youtu.be/8crcf2Gvqf0
†††Sideアリサ†††
変なお姉さんと遭遇して、世界の危機云々って話を聞いたすずかの居るとある無人世界へ、調査班の護衛としてあたしとシャルは赴いた。そこでそのお姉さんの発した妙な反応ってものを調査していたところで、海鳴市のアリシアから通信が入った。
そして聞かされた話、見せられた映像の内容は、3ヵ月ほど前に“闇の書”の闇に復活を企んだあのマテリアル達が現れたものだった。しかも、以前あたしが倒した“律”のマテリアルが挑戦状を叩き付けて来た。
(まったく。前回の屈辱を晴らす、だなんて・・・無茶なことを)
ま、そんな挑戦を受けちゃったし、なにより“闇の書”事件の関係者ってことであたしとすずかとシャルは、護衛の交代班とバトンタッチして一旦海鳴市へ。そこですずかが出会ったアミティエさんの捜索をなのはチーム、マテリアルの捜索をはやてチーム、んでマテリアルと一緒に何かを企んでいそうなキリエさんの捜索を、あたしとフェイトとアルフの3人で行うことなった。
「つっても全然捉まんないわね~、範囲広過ぎよ・・・!」
キリエさんの反応を追って無人世界へとやって来たあたし達は今、その範囲の広さからして散開して捜索中。
「フレイムアイズ、飛行制御しっかりね!」
≪それを言うの何回目だよ、アリサ。俺はお前のデバイスだ。そんなヘマなんかしない≫
あたしは今、空を飛んでる。とは言っても飛べるだけで空戦なんて出来ないけど。この数ヵ月、シャルと一緒に飛行魔法を練習し続けてきた。そうしたらさ、シャルだけまともに飛べるようになって、しかも限定的な空戦も出来るようになって。あたしは未だ羽虫クラスの飛行しか出来ないわよ。あっちにフラフラ、こっちにフラフラって具合にね。
「しょうがないでしょ。こんな場所で墜落なんかしたら、絶対に死ぬわよ・・・!」
眼下に広がるナイアガラの滝の超進化版のような複数の大滝。そんなところに落ちたら一溜りもないわ。だから5分に1回、飛行制御を怠らないように“フレイムアイズ”に言っておかないと。
≪まったく。初めて俺を起動した時から飛行魔法を諦めずに練習していれば、こんな哀れにならなかったのにな≫
「哀れとはなによ、哀れとは! 飛行魔法ってかなり難しいモノだってこと、知ってるんだからね!」
なのは達は当たり前のように飛んでいたから、飛行魔法は魔導師になら誰でも使えるものなんだ、って始めの方はしょげてたけどその実、陸戦魔導師の方が多いってことを知った。そう、飛べない人の方が圧倒的に多いのだ。
≪それは違うぜ。難しいのは空戦スキルであって、飛ぶこと事態は簡単――初級の最後の方なんだよ。それなのに魔力量にも恵まれていて、さらに師事できる友達が居るっていうのに――≫
「う、うるさいわね! ええ、怠慢よ、すべてはあたしが招いた怠慢の所為よ! 解ってるわよ!」
練習を怠ったあたしが全面的に悪いってことくらいは理解しているわよ。でも、やっぱ難しいのよ、飛行魔法。どうもあたしは空間認識能力がちょっと残念なんだそう。というわけでこの数ヵ月、士官学校の放課後、なのはやフェイト、シャルん家で下宿する時はすずかやルシルにも飛行の特訓に付き合ってもらった。
なのはとすずかとフェイトは優しく教えてくれたけど、ルシルの教え方はマジスパルタだったわ。いきなりスカイダイビング方式で高高度から突き落とされたんだもの。あん時は本気で汚い言葉で恨んでやったわ。
「はぁ。・・・ま、空戦なんてなのは達に任せるわ。あたしは陸戦魔導師として頑張ってくってもう決めたんだもん。だから飛べるだけで十分よ」
≪そうかい。ま、アリサがそうで良いってんなら俺も――・・・ん? アリサ、上空に転移反応! 気を付けろ、魔力反応、デカい!≫
“フレイムアイズ”からの報せに「オーケー!」応え、足元に魔法陣を足場とする魔法フローターフィールドを展開して着地。“フレイムアイズ”の柄を両手で握りしめて警戒態勢に入る。
「ふ、ふわ、ふわぁぁぁぁーーーーっ!!?」
あたしの視線の先、転移反応を示した空間から飛び出して、そして墜落して来たのは「フラム!?」だった。フラム・ザ・リヴェンジャー。映像ではやてのそっくりさんでマテリアル達の王様――ロード・ディア―チェとかいうのがそう呼んでいたのを憶えてる。
「お!? 私のオリジナルでありま・・・ああああぁぁぁぁぁ・・・・!」
あたしに気付いたフラムは・・・そのまま落ちて行った。助ける義理なんてないでしょうけど、「ああもう!」敵で、色違いで、性格も違うのに、それでもやっぱあたしと同じ姿ってことで見捨てるわけにもいかなくて。急降下を開始。そんで「掴まって!」フラムに向かって手を伸ばす。
「て、敵の施しなど受けないのであります!」
「馬鹿! 墜落して地面に激突したら、いくらマテリアルでも危ないんじゃないの!?」
川の中にポツンとある小島――中州までの距離はある。でもそろそろ制動を掛けないとまずいかも。それでもフラムはあたしの顔と差し出してる左手を交互に見ながら悩んでる。だから「早くしなさい! 地面に衝突しちゃったら痛いわよ! 苦しいわよ! 助けもなく唸り続けて、最後はアンタひとり寂しく消め――」ってところまで言いかけたら・・・
「いやぁぁぁぁぁぁっ! そんな惨めな最期なんて、嫌でありますぅぅーーーーっ!!」
ブワッと大粒の涙を流したフラムがあたしの手に掴まって、「ちょっ、どこ触って――きゃんっ、こら!」色んなところを触りながら抱きついてきた。その所為でちょっと力が抜けちゃったりして制動を掛けるのが遅れた。
「っと、フローター!」
対象を浮遊させる魔法であたしとフラムを包み込む。けど落下速度があまりに速すぎたのか完璧に止まる前に地面に激突しちゃうわ。とここで「借りは今すぐ返すであります、オリジナル」涙目のままだけど気丈に振る舞うフラムが、「タラスクス! スプリングフィールドであります!」って言って、ある魔法を発動した。
眼前にまで迫って来た地面との間にミッドの魔法陣が1枚。フローターフィールドなんて硬い足場、地面と変わらずに痛いじゃないの、ってツッコみを入れようとする前に激突・・・したんだけど、襲ってきたのは痛みじゃなかった。
「のわぁっ!?」
まるでトランポリンの様に優しい弾力が返って来て、ボヨンと跳ね上げられた。弧を描きながら緩い速度で落下するあたしは見た。魔法陣4枚が縦に連なっているのを。あれがバネのような緩衝剤の役目を果たしたんだ。ここでフラムがあたしから離れと思えば「ちょっ、んな・・!?」あたしをお姫様抱っこして、そんで着地。
「あ、危なかったでありますなぁ・・・オリジナル」
「お、そ、そんなことはいいから早く降ろしなさいよ! Harry, Harry, Harry!」
「あんまり大きな声を出さないでほしいであります、オリジナル。大声は嫌いであります」
急かすと、フラムは泣き顔に歪みながらもあたしを下ろした。ああ、地面、しっかりと大地に足を降ろしてるわ。すごい安心感。やっぱあたしに空は向いてないわ。うん、空戦はやっぱり無理。
「あの、オリジナル・・・?」
「なによ?」
「ひうっ。・・・う、うぅ、その、助けてくれて、ありがとう・・・であります」
「っ!・・・ふ、ふんっ。あのまま見殺しにするのも気が引けるし、気まぐれよ、気まぐれ! ま、あたしもありがと。助かったわ」
不覚。自分の顔なのに、その健気っぽくてか弱いって感じの態度や仕草が可愛いって思ってしまったわ。あたしなのに、あたしの顔に体なのに。そう自己嫌悪してると、「オリジナル、どうかしたでありますか?」なんて心配をしてきたフラム。ていうか・・・。
「アリサ・バニングスよ」
「へ?」
「名前! アリサ・バニングス! オリジナルって呼ばないで!」
「は、はいっ、でありますアリサ!」
ビシッと敬礼するフラム。なんか憎めないわぁ、自分の姿云々を除いても。ま、とにかく「アンタを連行するわ」マテリアルの捜索担当ははやて達だけど、こうして遭遇しちゃったんだから、あたしが捕まえても良いわよね。
「嫌であります! 我らマテリアル、悲願を果たすまでは捕まるわけにはいかないであります故!」
VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
炎壊の報復者フラム・ザ・リヴェンジャー
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「タラスクス!」
――アトロポンカ――
フラムの持つデバイス、“タラスクス”の刀身が炎に包まれた。前回、ヴィータとの決闘映像で観た、あたしの魔法であるバーニングスラッシュだわ。振るわれた一閃を大きく後退して、「まずは人の話を聞く努力をしなさいよ!」って怒鳴りながらフレイムウィップを発動して、“フレイムアイズ”を振るう。
「話すことも聞くことも今は必要ないであります! 紅の鉄騎を討つ前哨戦、敗けないでありますよ!」
フレイムウィップを寸断したフラムがそのまま突進して来た。ならこっちも近接戦に持ち込んでやるわよ。正真正銘の騎士であるシグナムやシャルと猛特訓したんだもの。ここで負けちゃあの2人に顔向け出来ないわ。
――フレアブレード――
――サラマンデル――
お互いに炎じゃなくて、超高熱にした刀身による直接斬撃魔法を発動。ガキィンと甲高い金属の衝突音が耳をつんざくと同時に激しい火花が散る。んで、そこから剣戟の応酬が始まる。縦に横に斜めにと振って、そこに突きやフェイントを織り交ぜながら、“フレイムアイズ”を振り続ける。フラムもまたあたしの斬撃に合わせて“タラスクス”を振るってくる。
「結構強いじゃない、フラム!」
――バーニングスラッシュ――
「お褒めに預かり感謝であります、アリサ!」
――アトロポンカ――
今度は刀身に炎を纏わせての斬撃魔法を発動して、お互いに決定打を与えようと振って、振って、振りまくる。けどフラムも本当の騎士のようにあたしの一閃一閃にちゃんとついて来て、しかもフェイントまで仕掛けてくる。
「ねえ!」
あたしが振り下ろした“フレイムアイズ”を、フラムは“タラスクス”を寝かせた状態で受け止めると同時に柄を持つ右手を振り上げることで刀身を斜めに傾けた。すると“フレイムアイズ”は“タラスクス”の刀身に沿ってギャリギャリと嫌な金属音を発しながら逸らし落とされた。
「なんでありますか!?」
ザクッと地面に突き刺さる“フレイムアイズ”の剣先。そして頭上から差す“タラスクス”の影。首筋にチリッと僅かな痛み。狙いは首なんだってなんとなく理解できた。シグナムに教えられた、戦闘の最中に武器を手放すなど騎士として以ての外、っていう教訓を破る。
“フレイムアイズ”の柄から手を離して、ギロチンのごとく振り下ろされた“タラスクス”の斬撃を躱す。今度は“タラスクス”が地面に刺さることに。即座に上半身の捻りを加えた「うりゃあああ!」掌底をフラムのお腹に打ち込む。
「こふっ!?」
ルシルとの組手で、ある程度は武器なしでも戦えるようになったのよ、あたし達みんなね。フラムがよろけたところで“フレイムアイズ”を抜いて、「せいや!」その勢いで横降りに薙ぎ払う。フラムは「っく・・・!」大きく反り返り――ブリッジすることで躱して、地面を蹴ってそのままバック転を繰り返してあたしから距離を取った。
「けほっ、けほっ。紅の鉄騎も徒手空拳の技を持っておりましたが、アリサもでありましたか・・・!」
――ガルビーラ――
燃える“タラスクス”を横に払って、はやてのバルムンクみたく扇状に魔力剣(こっちは燃えてる剣だけど)を6本と放ってきたフラム。あたしは剣と剣の間に突っ込んで回避して、「そっち方面に詳しい友達が居てね。ルシルっていうんだけど・・・!」すぐさまフレイムウィップで反撃。
「ルシル・・・、ああ、かつての闇の書の主であった魔神オーディンと瓜二つのあの少年でありますね」
「知ってるのね、ルシルにもオーディンにも会ったことないはずなのに・・・!」
「その時代ではすでに我らマテリアルは存在していたでありますし、ルシリオンについても闇の書の中から見ていたでありますからな!」
鞭を深くしゃがみ込んで避けたフラムがそう言いつつ、全身に炎を纏った。あたしのブレイズロード全身版で、魔法の名前は確か、フェルニゲシュっていう。そのフェルニゲシュを発動したフラムが突進して来た。
≪カートリッジロード。バヨネットフォーム!≫
“フレイムアイズ”を銃剣形態のバヨネットフォームへと変形させ、炎の砲撃イジェクティブ・ファイアを突っ込んでくるフラムに向かってぶっ放す。フラムは勢いに乗り過ぎていたみたいで避けることも出来ずに直撃を受けて、大爆発に呑まれた。
「ま、まぁ、ブレイズロードは直線限定の高速移動魔法だしね・・・」
≪気を抜くなよ、アリサ。まだ終わっちゃいない。魔力反応が途切れてないからな≫
「判って――っ!?」
――アゲマント――
悪寒に襲われて、直感的にその場から横っ飛びして離れた。その直後、火炎砲撃が黒煙を突き破って放たれてきた。穿たれた黒煙の穴から見えたフラムの姿。手にしているのは、「バヨネットフォームのタラスクス・・・!?」だった。また黒煙が戻ってフラムの姿を隠す。
――ウィル・オ・ウィスプ――
次に放たれてきたのは炎の弾丸、フレイムバレットだった。あたしも同じ魔法で全弾迎撃したら、「タラスクス・スナイピングフォーム、参るであります!」フラムが火炎弾を連射しながら突進して来た。上等じゃない。あたしも火炎弾で迎撃しながら突っ込む。徐々に縮まる距離。その間で衝突して爆散していく火炎弾。その中を突っ切って・・・
「フレアブレードッ!」「サラマンデルッ!」
銃身下に付いてる片刃剣に超高熱を付加しての振り下ろしの一撃を同時に繰り出す。そして衝突。さっき以上の火花があたし達の間で咲き乱れる。
「さっきの、ねえ、の続き! あんた達の目的は何っ!」
「話すことも聴くことも必要ない、と言ったでありますよ!」
「話してくれなきゃどうやっても、こうして力尽くになっちゃうでしょうが!」
「私はそれで構わないのであります! 我らマテリアルの悲願を邪魔する者は、容赦なく切り払うまで、であります!」
フラムが鍔迫り合いをやめて一足飛びで後退。すぐに銃口を向けてきて「ウィル・オ・ウィスプ!」火炎弾を10数発と連射して来た。あたしは平行に走って避けながら「内容によっちゃ手伝えるかも、って言ってんのよ、馬鹿!」フレイムバレットを連射。
――ラウンドシールド――
――スケイル・オブ・ルナナ――
「助けなど不要であります! 強引な押し付けは偽善でありますよ!」
あたしは普通のシールドで避けきれない火炎弾を防御。フラムは炎版ホイールプロテクションで防御した。そして互いに爆発に呑まれる。視界を遮る黒煙からすぐさま脱出。と同時に「そこでありますな!」フラムのそんな声と一緒に炎のランスのようなモノが足元に着弾した。
――アウラール――
――ファイアプロテクション――
カッと視界が明るくなる。直感的にまずいと思ったあたしは、対シグナム用に修得した対炎熱魔法バリアを展開してランスの爆発を防いだ。なるほど。やっぱりフラムも進化してんのね。ディアーチェが言ってたし。新たな“力”云々って。
「でもね、ちょっと進化したくらいであたしを倒そうなんざ10年早いのよ! フレイムアイズ!」
≪カートリッジロード! フルドライブ、クレイモアフォーム!≫
バヨネットフォームから大剣形態のクレイモアフォームへと変形させて、マガジンを新しい物へ交換。前進することで黒煙を突っ切った。そしてフラムと再エンカウント。アイツは「アウラール!」銃口の前に展開されてる魔法陣から、さっきの炎のランスを3本と発射して来た。
「とぉぉぉりゃぁぁぁぁーーーーッ!」
それを半実体化した炎の大剣で薙ぎ払って粉砕しつつ、驚愕に目を見開くフラムへとさらに駆け寄る。フラムは「ウィル・オ・ウィスプ! アゲマント!」火炎弾や火炎砲撃を交互に撃って弾幕を張ったけど、「このクレイモアに、そんなちゃちなモノは通用しないわよ!」燃える大火力斬撃ヴォルカニックスカッシャーで薙ぎ払う。
「ぅく・・・!」
伸縮自在の刀身でそのままフラムに薙ぎ払い攻撃を仕掛ける。アイツは“タラスクス”であたしの一撃を受け止め・・・「ひゃああああ!?」切れずに吹っ飛んで川へと派手に落っこちて、沈んだ。
「うわっ、やり過ぎたわよね今の!?」
≪それでいいんだろ? アイツは敵で、打破するべき相手。やり過ぎってことはないだろ≫
“フレイムアイズ”が冷静にそう返してきた。そう、よね。僅かながらに親近感のようなものを抱いたけど、それでもアイツは敵なのよね。いよいよ以って自分と同じ顔と体を持ったフラムを撃破しようと揺らぐ意思を、何とか立て直して固めた。その時、フラムが沈んだところの川水が大飛沫を派手にあげた。
「今度は何!?」
≪上だ、アリサ!≫
“フレイムアイズ”に言われるままに視線を空へと上げていくと、「フラム・・・!」あたしは見た。なんだっけ、アレ、そう、フェニックスのような鳥の形をしてる炎を全身に纏ったフラムが空に浮いてるのを。そんなフラムがあたしに向かって急速降下して来た。炎の砲弾・・・ううん、そんな生易しい物じゃないわね。アレは正しく・・・隕石。
「エレンスゲッ!!」
「ヴォルカニック・・・スカッシャァァァーーーーッッ!」
真っ向から迎撃するために炎を噴き上がらせた斬撃を振り下ろす。ズドンッと重い衝撃が柄から両手、胴体と頭、両足へと奔り過ぎてく。受けに回ったのはミスだったわ、ってすぐに思い知る。隕石と化したフラムの突進攻撃にあたしは踏ん張りきれずに、「きゃああああああっ!!」大きく吹き飛ばされた。フラムが中州に墜落。馬鹿みたいな大爆発を起こした。
「っく、うぁ、いっつ・・・わぁぁぁぁ!!」
体勢を立て直して着地してすぐにまた、衝撃波と爆風でさらに吹っ飛ばされて、「あぐっ・・・!?」背中から別の中洲へ墜落。一瞬息が止まって、そこから激しく咽続ける。涙が止まらない、だらしなく涎が垂れる。それほどまでの衝撃だった。なんとか呼吸を整えて、“フレイムアイズ”を支えに立ち上る。
「直撃でなくとも戦闘不能に出来ると踏んでいたでありますが、良く堪えたでありますな、アリサ」
「っ!・・・今度はクレイモアフォームのタラスクスなのね・・・!」
「タラスクス・ツヴァイヘンダーフォームであります。切り札は紅の鉄騎に取って置くつもりでありましたが、そのような甘いことを言っていられる戦況でもない故に発動したであります」
フラムの両手に握られてる“タラスクス”は正しく、クレイモア――ツヴァイヘンダーフォームだった。まさかそこまで真似て来るなんて、覚悟・・ううん、予想はしてたけどさ。
「アリサ。私とあなたとの決闘も幕でありますよ」
「そう、ね。これ以上、アンタと付き合ってたらキリエさん捜索に支障が出るわ・・・!」
お互いにカートリッジをロード。“フレイムアイズ”と“タラスクス”の刀身から強大な炎が噴き上がる。
「タイラントフレアッ!」
「アラムッ!」
同じ魔法を発動したあたしとフラムは同時に一足飛びで最接近して、お互いの相棒を振り下ろす。炎の斬撃が衝突する。視界が白や赤に染まった。あたし達の炎が反応を起こしてとんでもない爆発を引き起こしたのね。視界の暗転、体を襲う浮遊感。まるで夢心地。意識を失ったのか保っているのかも判らない。
≪しっかりしろ、アリサ!≫
“フレイムアイズ”の叱咤であたしはまだ意識を繋ぎ止めているってことを自覚。宙で体勢を立て直して中洲に着地。目の前に広がる黒煙の奥から、さっきにも感じた悪寒がまた。
「フレイムアイズ! デストラクト・ディターレントッ!」
≪応っ!≫
“フレイムアイズ”の柄を握る両手を左脇に持ってきた上で全身に炎を纏う。そして「突っっ貫ぁぁぁぁんッ!!」地面を蹴って突撃。黒煙を突き破って行く中、「エレンスゲッ!!」フェニックスと化してたフラムと正面衝突。炎の槍と炎の鳥の衝突は、さっき以上の大爆発を引き起こした、と思う。第三者視点じゃないと判らないわ、きっと。
(でも、こうなるって前もって覚悟してたから耐えられるわ!!)
爆発の衝撃波と爆風で大きく後方に吹き飛ばされる。
――アルジンツァン――
直感が働いた。足元にフローターフィールドを展開してそこに着地、即座に蹴って上に向かってジャンプ。直後、あたしのヴォルカニックスカッシャーと同じ大火力斬撃がそこを薙ぎ払っていった。刃の軌道からして、「そこね!」こっちも同じ魔法、ヴォルカニックスカッシャーでフラムが居ると踏んだ予想地点を薙ぎ払う。
「うぐぁぁぁぁっ!?」
「ビンゴっ♪」
手応えと一緒にフラムの悲鳴が聞こえた。上空からフラムの位置を確認するために、頭上に足場を作って駆け上がって行くそんな中、「スクリピチョアーサ!!」八方に炎の竜巻が発生して、黒煙を消し飛ばした。
「見つけたでありますよ、アリサッ!!」
バリアジャケットの所々が破けて素肌を晒してるフラムがあたしを見上げていた。フラムが地面に展開してる魔法陣に突き刺してる“タラスクス”を引き抜くと、炎の竜巻が無数の火の粉を散らしながら消滅。というか、「痛っ!?」火の粉にすらダメージ判定があるなんて卑怯じゃない!? ビシバシと体に触れる火の粉が徐々に、でも確実にあたしにダメージを与えて、バリアジャケットを破壊してく。
(もうダメ、耐えらんない・・・!)
多方向の防御に優れるバリアですらも小さく無数な火の粉を防ぐのは無理だと判断して、火の粉の薄い場所へと目掛けて飛び降りる。
「隙ありであります! アルジンツァン!!」
「こんの・・・!」
振るわれる大火力斬撃。足場を蹴っての回避は動作が多すぎて無理。フローターじゃ恰好の的になる。ならどうする。アレしかないと思ったあたしは「飛行!」の魔法に懸けた。こんな実戦の最中で、しかも空中に居る時での発動成功の回数は10回中1回あればいい。あたしはその1回を、ここで引き当てた。目前にまで迫っていた斬撃をギリギリ上空に向かって飛ぶことで回避。
≪アリサ! 本世界での時刻が午前9時になったぜっ!≫
日本は海鳴市の時間は午後9時半くらいかしら。もし戦いの場が海鳴市だったらあたし、フラムに負けてたかも。ここで接敵することが出来たのは本当にラッキーね。
「スリーズ・サンズレガリア、起動!」
≪起動するぜ!≫
午前9時から正午までの3時間、午後3時から午後6時までの3時間、計6時間の間だけ、あたしの魔力量や身体能力、さらに“フレイムアイズ”の性能の限界値を大幅に底上げすることが出来る、スリーズ・サンズレガリアを起動。起動中のあたしに名前を付けるとしたら、太陽の騎士モード、と言ったところかしら。
ザッと地面に降り立って、真っ向からフラムを見据えると「っ!!??」あたしに怯えるかのようにジリジリと後退を始めた。あたしは演技だろうと考えて「アンタも使えるんじゃないの? レガリア」と声を掛けてみる。するとフラムは「残念ながら持ち合わせていないのであります」と首を横に振った。
「いくらコピーでも、進化したと言っても、オリジナルの全てを手に入れるのは不可能でありますよ」
そう力なく笑った。ここだ、今しかない。そう思ったあたしは「投降して、フラム」あの子に手を差し伸べた。この戦況、もうフラムでも覆る事はないって思ったから。いくら目的のためとは言え、ここで死を選ぶような子じゃないはず。そう思ったのに・・・
「私は義のマテリアル、炎壊の報復者フラム・ザ・リヴェンジャー! マテリアルの先駆ける騎士として、自らの意思で、敵を前に後退するわけにはいかないであります!!」
――スクリピチョアーサ――
“タラスクス”を地面に展開した魔法陣に突き刺したことでまた、炎の竜巻が八方に出現。フラムはカートリッジをロードした後にマガジンを交換、さらにカートリッジを何発もロード。また交換してロードを繰り返した。そんなあの子に「やめなさい! ロードのし過ぎよ!!」止めるように叫ぶ。何事にも限度ってものがある。それを超えて待つのは、破滅だけだわ。
「今のあなたの魔力に追いつくにはこれしか術が無いであります!・・・・我が一撃、受けて見るがいいであります、アリサ・バニングスッ!!」
「っ!・・・この・・・大馬鹿ぁぁぁぁぁーーーーッ!!」
≪不浄の闇を断ち払うのは太陽の現身。輝ける炎の聖剣ッ!!≫
足元に展開した魔法陣から噴き上がる炎を刀身に吸収させ、元から噴き上がってた炎の火力がさらに増していく。フラムは八方に巻き起こってる炎の竜巻を地面に突き刺したままの“タラスクス”の刀身に吸収させていく。あたしとフラム、似たような魔法なのね。
「やめるなら今よ、フラム!」
「その台詞、そっくりそのまま返すでありますよ、アリサ!」
もう止まらない。なら本当にしょうがないけど、本当は嫌だけど、あたしはアンタを倒すわ。
「ガラティーン・・・」
「黙示録の・・・!」
“フレイムアイズ”を脇に抱えるあたしと、突き刺さったままの“タラスクス”を背負うような体勢を取ったフラムの視線がぶつかる。
「ブレイカァァァァァーーーーーーーーッッ!!!!」
「赤き竜の伝説ッッ!!!!」
薙ぎ払いで発動した砲撃ガラティーンブレイカーと、振り下ろしで発動した7つの頭を持った竜の形をした砲撃ドラッヘン・アポカリプスが、あたし達の間で衝突。直後、全ての感覚をあたしから奪い去った。
≪・・・サ・・・リ・・・アリ・・・サ・・・アリサ・・・アリサ!≫
「ん?・・ん・・う・・・んぅ・・・フレイ・・ム・・アイズ・・・?」
耳に届く、あたしの名前を必死に呼んでる“フレイムアイズ”の声。
≪さっきフェイト嬢ちゃん達を呼んだからもう大丈夫だぜ!≫
揺らぐ視界から生まれる不快感に耐えながら、力の入らない体を起こそうとするけど、やっぱ無理。頭がちょっと上がっただけですぐにガンっと降ろす。ていうか、今の痛いわぁ・・・。
≪よせ。あんな大火力砲撃の余波をまともに受けたんだ。もうちょっと休んでろ≫
「・・・・アイツは、フラムはどうしたの・・・?」
≪逃げたよ。自分の砲撃が押され始めた時にアイツ、絶対に逃げないであります、とか叫んでたが何か心変わりしたのか、陛下、いま戻るであります、とか言ってな≫
仕える王であるディアーチェに念話で呼び戻されでもしたのかしらね。まぁいいわ。深呼吸は数回した後、「フレイムアイズ。あたし、勝った?」と訊く。
≪当たり前だろ。お前の勝ちだよ、アリサ。だから今は休め。休んだ後、また仕事だぜ≫
「・・・ん、了解。そんじゃ、ちょっとの間だけ、おやすみ・・・」
こうしてあたしはさっきから誘われっぱなしだった眠気の中に意識を預けることにした。
後書き
サワッディー。
1週間に1ヵ月分の話を投稿できたのは、まぁ良しとしましょう。にじファン時代は週に2話投稿が当たり前だったんですが、なんででしょうね、週1ですでに限界とか。歳の所為でしょうか?
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