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転生赤龍帝のマフィアな生活

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十九話:お話し

 
前書き
今回は主人公sideがありません。
まあ、全部バジル君というわけでもありませんが。
それでは本文どうぞ。















 

 
Sideバジル

修行も終盤に差し掛かったある日の夜、夜中にふと喉が渇いたので水を飲むために一階に降りると親方様が何やら真剣な様子で本を読んでいました。

「親方様?」
「あら…まだ起きてたのバジル?」

読んでいた本を閉じ拙者を出迎えてくださる親方様。親方様の読んでいた本の表紙を見ると『レーティングゲーム』の資料集であることが分かりました。

「ああ…これね…正直気休めにしかならないんだけど、読まないよりはね。」
「…………不安ですか?親方様。」
「………そうね、正直言って不安だわ。」

いつもの親方様らしくない弱気な返事……不安で押しつぶされそうな返事。
拙者に何か出来ないでしょうか?

「普通の相手ならこうも不安にならないでしょうけど……相手はフェニックス、しかもライザーとライザーの妹を合わせて二人……死なない相手が二人もいるの。」
「死なぬ鳥……フェニックス。」
「ええ……あなたも知っている通り、不死鳥は聖獣として有名だわ。どんな傷もその涙で癒し、死ぬことのない永遠の鳥、不死鳥……そしてその能力と悪魔のフェニックス家は同じ力を有している。」
「もはや反則ですね。」
「ええ…本当にそう。王であるライザーが死なない以上はあちらに敗北はない。」

つまりこちらに勝ちの可能性がないということ……そんな戦いを親方様は組まされた、しかも始めは一誠殿というイレギュラーな助っ人もなしに……相手は、この試合を組んだ御両親達は―――

「最初から私に勝たせる気が無い……あくまでせめてもの慰めに私の心の整理の為だけに組まされた試合……はっきり言ってハメ手ね。」
「しかし……今回は一誠殿もいます。あの方なら必ずや勝ってくださいます!!」
「確かに一誠ならフェニックスすら倒すかも知れない……でも一誠はライザー以外との戦闘が認められていない。私達の数での不利さや経験面での不利はまだ残っているの、それにさっきも言った通りあちらにはフェニックスが二人いる。公式戦の記録では戦闘に参加したことはないのだけど……ライザーがピンチになれば分からないわ。」

そういくら一誠殿が強くても、拙者達の『王』である親方様が負ければゲームに勝てないのだ。

「なぜ……なぜ親方様はこうも不利と分かっていながらもこの試合を受けたのですか?」
「私はね……『グレモリー』なの…誰も『リアス』として見てくれないの。」
「……………………」

「どこに行っても私は『グレモリー』としてみられる……。名家のご令嬢、グレモリー家の次期当主………もちろん、グレモリーということは誇りに思っているわ……でも、せめて自分を愛してくれる人だけには、『リアス』として見られたいし、接してほしい……それだけよ。」
「親方様……。」
「一誠に言ったら笑われそうね……彼はそんなこと関係なしに力で自分を表せる……でも私は弱いからそれも出来ない……。」

確かに一誠殿ぐらいの力があれば家ではなく個人として見られることも多くなります……実際、ボンゴレとしてではなく兵藤一誠として恐れられることの方が一誠殿は多い。
しかし、そんなものはほんの一握りの強者にのみ許された特権。

「親方様……拙者にはまだ悪魔の事は詳しくありませんが拙者にとっては親方様は親方様です。一人の女性です。」
「バジル…!!……ありがとうね。あなたにそう言ってもらえて嬉しいわ。」
「親方様…フェニックスを倒す方法は何かないのでしょうか?」
「あるにはあるわ。神クラスの一撃で一瞬で葬り去るか精神を折って相手に諦めさせるかのどちらかよ。一誠なら、というか赤龍帝である以上神をも殺せる一撃を放つことは出来るでしょうけど私達には出来ないわ。」
「難しいですね……。」

一誠殿頼みという戦い方では親方様が先に倒されてしまいかねない、逆に一誠殿に頼らなければライザーはまず倒せない。……どうやって戦うか…親方様が悩むわけです。

「はあ……悩んでいたら眠れないのよ。」
「拙者も眠気が覚めてきました……。」
「だったら、お話しませんか?」
「「ユニ(殿)!!」」

いつの間にかパジャマ姿のユニ殿が拙者達のすぐ傍に立っていました。

「私も眠れないから起きてきちゃったんです。ですからお話ししてくれませんか?」
「しかし……拙者達は考えなければ―――」
「不安や緊張で押しつぶされるよりはいいと思います。」
「そうね……ユニの言う通りだわ。いいわ、何か別の事でも話しましょう。」
「親方様がそう言うなら……。」
「ありがとうございます。」

そう言ってほほ笑むユニ殿、何と言うか……元気づけられる笑顔ですね。

「でもいざ話すとなると中々出てこないものね……。」
「そうですね、普段ならとりとめのない会話などすぐに出てくるものですのに。」
「ふふ、それじゃあ―――好きな人の話でもしません?」
「えっ!!?」
「す、好きな人でござるか!?」

親方様と二人で慌てますがユニ殿はニコニコとしたまま表情を崩しません。
まあ、言い出しっぺですしね。

「ふふふ、どなたかいらっしゃるんですか?」
「うっ…それは……そうだ!!まずはあなたからでしょ!!?」

親方様が勝ち誇ったようにユニ殿を指さしますが親方様は重要なことを忘れていらっしゃいます。

「言いませんでしたか?私は一誠さんが好きなんです。」
「そ、そういえば、そうだったわね。……ねえあなたはいつから一誠のことが好きになったの?最初に許嫁にされたときは嫌じゃなかったの?」
「それを話すには私の昔話を話さないといけませんけど……聞きたいですか?」
「ぜひ、聞いてみたいわ。」
「分かりました。」

何かを思い出すように目を閉じるユニ殿。

「あれは私が四歳の時でした―――」




~回想~


あれは私の四歳の誕生日会の日でした。
いつもは会わないような方々と会って疲れてしまった幼い私はいつもより早く床に着いていました。

「……どなたですか?」
「声を出さないように口をふさげ。」
「は!!」
「―――――――っ!!?」

寝ているところを謎の男達に攫われ、私はどこだか良く分からない場所に連れていかれてしまいました。後で知った話ですがその男達は私達ジッリョネロファミリーの反対勢力の人達だったみたいです。

「おい、この娘がジッリョネロファミリーのボスの娘で間違いないんだな?」
「はい、間違いありません。後はこの娘を交渉材料にしてあいつをボスの座から引きずり落とすだけですね。」
「ああ、こいつは貴重な人質だ。奪い返されないように隠しておけ。」
「はい。」
「―――――――」
「というわけだ、せいぜい大人しくしてるんだな。」

そのまま真っ暗な部屋に連れていかれた私は恐怖でどうにかなってしまいそうでした。
幼かった私にはただでさえ怖かった暗闇がまるで死への誘いのように感じられました……。
今でもその時のトラウマから夜一人で眠ることが出来ません。

「………おい、こいつ寝てやがるぜ。」
「本当だな……天然なのか、大物なのか……まあ俺達には関係ないな。」

突然外から聞こえた声に私は耳を澄ませました。とにかく一人で怖かったその時の私には例え私を攫った方々の声であっても人が近くにいるという安心の方が大きかったのです。
私が閉じ込められていた部屋の扉が開き、新たな子供を担いだ男達が入ってきました。

「新入りだぜ、お嬢ちゃん。せいぜい仲良くするんだな。まあ、喋れないけどな。」
「おい、さっさと戻って計画の成功を祝って一杯飲もうぜ。」
「そうだな……じゃあ、大人しくしてろよ。」

それだけ言い残して男達は去っていきました。その時私は失礼なことですがその子が私と同じように攫われてきたことを喜ばしく思っていました。何というのでしょうか?同族意識といいますか……とにかく一人じゃなくなったことに私は喜んでいました。

しゃべることも出来ないのでせめて傍に居ようと思って近づくと、規則正しい寝息が聞こえてきたんです。男達が言っていた通りその子は寝ていたのです。自分が攫われているにも関わらずにですよ?すごいですよね。私なんて不安で泣き出してしまいそうだったのにその子は怯えるどころか何事もないかのように寝ているんですから。

その時とにかく寂しかった私は暗くて良く分かりませんでしたが何とかその子の胸を探して当てて耳を当てました。私が不安な時や泣いている時によくお母様が心臓の音を聞かせてくれていたんです。それを覚えていた私は今思うと失礼ですがその子の胸に耳を当てさせてもらったんです。

ドクン…ドクン…と規則正しいリズムを聞いているうちに心が休まり瞼が重くなっていきました。
そのまま寝てしまいそうになった時―――突如部屋の中が明るく照らされたのです。
驚いて跳ね起きるとその子が手の平に明るいオレンジ色の炎を灯していました。
その子―――男の子は面倒くさそうに拘束具を破り捨てながら私に話しかけてきました。

「おい、ここがどこだか分かるか?」
「―――――――」
「それじゃ、喋れねえか……ちょっと待ってろ。」

そう言って男の子は私の拘束具を外してくれました。

「さっきの質問分かるか?」
「……分からないです。」
「そうか……。」

それだけ言うと男の子は部屋を見渡し始めました。
そして状況を理解したのか大きく舌打ちをしました。

「ちっ!!また誘拐かよ、面倒くせえな。今度からオートで反応出来る様に鍛えるか。」
「あの……。」
「取りあえず、俺を攫った奴らは全員カッ消すか。」

そう言って扉を粉砕し外に出て行こうとする男の子。
私はまた一人になるのが怖くて震えるような声で男の子を呼び止めました。

「待ってください…!!」
「……何だ?」
「一人に…しないでください。」

「………俺の後ろに付いて来い―――俺がお前を守ってやる。」
「っ!?はい!!!」

その後は男の子の後ろにただついて行くだけでした。男の子は信じられない程の強さで男達を倒していき、あっという間にアジトを占拠してしまいました。でも私はその時はそれがどれだけ凄いかも、男の子がどれだけ異常かも考えていませんでした。

ただ、私を守ってくれるその背中に見惚れていたんです。はい、好きになっていたんです。
その男の子を―――一誠さんを。




~回想終了~


「……そんなことがあったのね。それにしても四歳でアジトを潰す一誠って何者なの?」
「まあ、気にしないほうがいいかと思いますよ、親方様。」
「ふふふ、私の大好きな人です。」
「惚気ありがとうね……それで結局それからどうなったの?」

気を取り直して親方様がユニ殿にそう尋ねる。

「一晩そこで一緒に寝てから帰りました。」
「え!?そのまま帰らなかったんですか?」
「一誠さんが寝ると言い出したので私も一緒に……その……。」

そう言って頬を赤らめるユニ殿……一体何があったのでしょうか?

「それで…その…枕が無いという理由で抱き枕代わりにされまして……。」
「一晩中抱きしめられてたの!!?」
「はい……。」

顔を赤くしながらも幸せそうな表情で頷くユニ殿……一誠殿は天然の女たらしでござるな。
他にもこのようなことをされた方が多くいるのではないでしょうか?

「それで結局、どうして許嫁になったの?」
「私からお母様に頼んだんです。その時はまだ名前が分からなくて特徴だけしか分からなかったんですが……その…あの人のお、お嫁さんになりたいと……。」
「あなた見かけによらず大胆なのね。」

流石に恥ずかしかったのか俯きながら話すユニ殿。

「それで一誠さんがボンゴレ十代目だったと分かった時は私のファミリーの方が大慌てでしたね。私のせいで一緒に捕らわれたと思われたら私のファミリーが消されかねなかったので。」
「ボンゴレファミリーってそんなにすごいのね……。」
「はい、イタリア最大手の名は伊達じゃありませんので。」

「それで九代目様に謝罪しに行ったら『よくあることだから気にしないでいい。』と言われまして……。」
「よ、よくあるって……。」
「一誠殿は昔から護衛をふりきって一人で過ごすことが多かった方なので昔はよく敵勢力から襲撃を受けたりさらわれたりすることが多かったんです。」

まあ、どれも無傷で帰ってくるんですけどね。

「その後、私がその……一誠さんのお、お嫁さんになりたいと言いましたら―――」
「言ったら?」
「あっさりOKされまして……。」
「え!?そんなに簡単になったの!?一誠には他にもそう言う話あったんじゃないの?」
「九代目様が言うには私がボンゴレではなく一誠さんを見てくれたからだと。」
「はあ…そういうのいいなあ……。」

親方様がご自分の置かれた状況と比較して溜息をついています。まあ、親方様の御両親にも何か考えがあってのことでしょうので全く親方様のことを考えていないというわけではないでしょうが……いえ、拙者達が頑張って親方様自身が選べるようにしなければ!!

「でも一誠さん自身はつい最近まで知らなかったんです。それに私の事も覚えていませんでした。昔からずっと私の片思いなんです……。」
そう言って寂しそうに笑うユニ殿……。
「一誠もこんなに自分を思ってくれる人がいるのに馬鹿ね。」
「誰が馬鹿だ、カッ消すぞ!!!」
「い、一誠!?いつの間に!!?」

振り向くとそこには青筋を浮かべた一誠殿が……き、気づかなかったです。
……どうしましょう、本当にカッ消されてしまいかねません。
ここはやはり日本の伝統―――誠心誠意の土下座でしょうか?

「つい、さっきだ。ユニが中々戻ってこねえから見に来た……べ、別に余りにも遅いから心配して来たわけじゃねえぞ!!!ただ、いつもいる奴が隣にいねえと寝づらいから来ただけだ!!!」

若干顔を赤くしながらそう言う一誠殿……ツンデレですね。
というかほぼデレているような気が。

「すみません、一誠さん。皆様とお話してたらつい。」
「……戻るぞ。」
「はい、では皆さんお休みなさいね。」
「お休み。」
「よい眠りを。」

そこで一誠殿がピタリと足を止めて振り返ります。なんでしょうか?

「リアス・グレモリー……明日の修行は、覚悟しておけ。」

それだけ言い残してユニ殿と去っていく一誠殿。

「バジル……明日が怖くて寝れそうにないんだけど……。」
「あはは……お休みなさい、親方様。」
「待ちなさい!!あなた私を見捨てる気!!?」

すいません、こればっかりは拙者の力ではどうにもなりません。
どうかご自分の力で生き残って下さい!!親方様!!!
 
 

 
後書き
リアスとバジル君の会話だけ書こうと思っていたのに明らかに短くなりそうだったのでいつか書こうと思っていたユニちゃんと一誠の馴れ初めを書かせてもらいました。
次回か次々回からレーティングゲーム開始します。 
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