| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百七十九話 集まる者達その六

「徳川の者達の食いっぷりも見せてやるのじゃ」
「ですな、食うのも武士の誉れ」
「それを見せるのも」
「そういうことじゃ、ではな」
 こうしたことを話してだった、酒井は黄色の衣の同輩達と共に話をしたのだった。そしてその中でだった。
 ふとだ、本多正信が一同にこんなことを言ってきたのだった。
「さて、それはそうとしまして」
「むっ、本多殿何か」
「何かあり申すか」
「はい、どうもこの安土城はです」
 彼がいうのはこの城自体のことだった。
「様々な神仏がいますな」
「そういえば神仏の絵がですな」
「多いですな」
「麩といい屏風といい」
「あちこちに書かれておりますな」
「しかもです」
 本多はこのことについても指摘した。
「石垣ですな」
「ああ、石垣もですな」
「何かが違いますな」
「どうにも」
「石垣の中にです」
 まさにというのだ。
「地蔵尊があり墓石があります」
「その墓石ですが」
 榊原がそのことについて本多に問うた。
「罰が当たるのではと」
「そう思われるのですな」
「そこは違いますか」
「いえ、墓石にも御仏の力が宿っております」
「それでは」
「はい、その御仏の力にです」
 それにと言う本多だった。
「葬られていた者の魂の力もです」
「含ませておりますか」
「この城は山自体を城とし幾重もの壁と石垣、櫓に囲まれていますが」
「その守りが固いだけでなく」
「そうです」
 まさにというのだ。
「そうした守りもです」
「神仏、霊魂の守りもですな」
「固いです」
「そうした城ですな」
「あの天主はその中でも」
「最もですか」
「まさに神仏が集まった」
 それこそ、というのだ。
「悪しき者を寄せつけぬものです」
「都に東から入る悪しき者をですか」
「防ぐものかと」
 それになっているというのだ。
「あの城は」
「左様でしたか」
「はい、右大臣殿はそこまでお考えなのでしょう」
「神仏を信じられぬと言われてもいますが」
「どうやら違う様ですな」
 それは、と言う本多だった。
「どうやら」
「ではそれは噂でしたか」
「右大臣殿も神仏を否定されていませんが」
 それでもだというのだ。
「ただ、頼まれぬ」
「ご自身では」
「はい、そうした方かと」
「しかし国家の守護にはですか」
「ご自身は頼まれませぬが」
 そもそも織田家は越前の神主からはじまっている、神の存在を認めぬというのは自分達の出自も認めないことになる。
 信長もそれはしない、しかし頼むことはしないというのだ。これは己の力でことを進める信長ならではの考えだ。
「国にはです」
「守護を頼まれ」
「この城もです」
「神仏を集められましたか」
「耶蘇教もありますな」
 その神仏の中には、というのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧