戦国異伝
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第百七十九話 集まる者達その二
「その醍醐をです」
「使ってか」
「はい、果物にです」
「そういえば御主その果物で」
「実は堺には南蛮のものも入っておりまして」
「それを使うのか」
「そのつもりです」
そうだとだ、古田は荒木に楽しげに笑って答えたのだった。
「実は」
「ふむ、左様か」
「それは荒木殿もですな」
「ははは、わしも面白き考えがある」
「だからですな」
「この度の宴はよき宴にせねばならぬからな」
「殿のご期待通りに」
古田も笑みのまま述べる。
「そうしなければなりませんからな」
「だからじゃ。考えがある」
「では我等も」
「うむ、励もうぞ」
荒木は笑って述べた。
「最高の宴にする為にな」
「そうですな、やりがいがあります」
「徳川家の方々の他にもな」
「公卿の方々も参られますし」
「皇族の方も来られる」
それ故にというのだ。
「素晴らしきものにせねばならん」
「その通りです、では」
「励もうぞ」
またこう言ってあった、荒木と古田も彼等の仕事に励むのだった。そうしているのは明智だけではなかった。
その明智はだ、己の仕事をしながら共にいる細川にこう話していた。
「いや、この度も」
「助かったと申されるのですな」
「その通りです」
実際にこう答えた明智だった。
「細川殿にどの食材か美味かを教えて頂いたからです」
「いえ、集められたのは明智殿です」
その明智にだ、微笑んで返した細川だった。
「それがしは特に」
「そう仰いますか」
「その通りですから」
「左様ですか」
「はい、しかしです」
「しかしとは」
「後は料理が出来れば」
食材は揃った、それならば次はだった。
「宴となりますな」
「左様ですな」
「徳川殿も公卿の方々も」
「喜んで頂く宴が出来ますな」
「このままいけば」
細川もこのことについては目を細めさせて述べる。
「出来るかと。ただ」
「ただ?」
「それがしも好きになれませぬが」
ここでだ、細川はこれまでにこやかにさせていた顔を曇らせた。そのうえで明智に対して怪訝な声で彼のことを話したのだった。
「松永殿は」
「あの方ですか」
明智も彼の名が出ると顔を曇らせて応えてのだった。
「そういえば食についても」
「はい、あの方はです」
「通じておられるそうですな」
「その様です」
「だからですか」
「気になり申す」
こう明智に話すのだった、自然と小声になっている。
「どうにも」
「そうですな、確かに」
「この度も静かですが」
「そういえばあの御仁は織田家に入られてからは」
「静かですな」
「不思議と」
ここでだ、明智はこうも言ったのだった。
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