電光提督ノゾミアン
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第一話 提督は新幹線
ここは、深海棲艦と戦う艦娘達の基地“鎮守府”。ここに資材を運んで来た貨物列車が止まる駅には一人の駆逐艦娘“電”が新任の提督を待っていた。
「大本営は正面じゃなくてここで待っているようにと言ってましたけど、司令官さんは電車で来るんでしょうか?」
そう電が考えていた時だ。
プァーン!
線路の向こうから警笛の音が聞こえてきた。だが、その音は貨物列車を牽引する機関車のものとは大分異なっていた。
電が警笛の聞こえた方を見ると、近付いて来る列車の姿が見えて来た。
「え!?あれって!?」
その列車の姿を見た電は自分の目を疑った。何故なら、それは少し前に引退したばかりの300系新幹線だったからだ。
そのまま、300系新幹線は貨物駅に入って来る。そして、停車した直後・・・
「ヒカリアンチェンジ!」
掛け声と共に先頭車両の運転席が分離。そこから手足と翼が飛び出し、さらに運転台の窓の下からつぶらな瞳が現れた。
「ライトニングノゾミアン!只今着任!!」
そして、背丈が電の腰くらいまで縮んでから駅のホームへと着地した。そんな彼に電は恐る恐る尋ねる。
「ええと、あなたが新しい司令官なのですか?」
「ああ。私は元ヒカリアンの隊長のライトニングノゾミアンだ。のぞみと呼んでくれ。君は?」
「はい!司令官のお世話をさせていただく秘書艦の暁型駆逐艦四番艦の電なのです!」
「電か。これからよろしく頼む。」
「よろしくなのです。ところで司令官。一つお聞きしたいのですが。」
「何だい?」
「司令官はその、何なのでしょうか?」
「え?もしかして君はヒカリアンを知らないのかい?」
「はい。」
「まあ、電光の方が終わって大分経つから知らない子が居ても仕方ないか。」
そんなメタ発言をしながら、のぞみは顎(?)に手をあてる。
「何の話ですか?」
「いや、こっちの話だ。それより。私たちヒカリアンについて説明しいう。我々はヒカリアン星からやって来たエネルギー生命体が地球の乗り物と融合した存在だ。」
「と言う事は司令官は宇宙人なのですか!?」
「そう言う事になるな。」
「でも、何で宇宙人の司令官が司令官に?」
「実は、今まで私はJHRと言う組織でヒカリアンの隊長をしながら線路の平和を守って来たんだが、少し前に引退してね。その後はのんびり暮らそうと思っていたんだが、ヒカリアンの隊長をしていた経験を買われて提督としてスカウトされたんだ。」
「そうだったのですか。」
「ただ、人を纏めるのには慣れているが、海の上での戦いには慣れてなくてね。一応勉強はしてきたが、サポートはしっかり頼むよ。」
「はい!任せて下さい。なのです!!」
そして、まず最初に電による鎮守府内の案内が行われた。
「ここが司令官の執務室なのです。司令官はここで私たち艦娘の指揮や事務仕事をする事になっています。」
「なるほど。だが、執務用の机が見当たらないのだが・・・」
のぞみの目の前には段ボール箱が置かれているだけだった。
すると、困惑する彼に電が答える。
「机などの家具は司令官の好みの物を経費で買う事になっています。」
「じゃあ、後でカタログを見せてくれるか?」
「はい、もちろんなのです。では、次は工廠の方に行きましょう。」
そして、二人は工廠へと移動する。
「ここが工廠なのです。ここでは資材を使って艦娘の建造や装備の開発を行います。」
「そうやって戦力を増強する訳か・・・ん?」
のぞみが工廠内を見回していると、あちこちで三頭身の小人が歩き回っているのを見つけた。
「電、彼らは?」
「あの子達は艦娘の建造や装備の開発を行ってくれる妖精さんなのです。」
「妖精が建造や開発を?まるでおとぎ話みたいだな。」
のぞみは妖精がご飯をくれた靴屋の為に靴を作るおとぎ話を思い出しながら言った。
「司令官さんが言うのはちょっと可笑しいような気がするのです。」
「それもそうか。」
「とりあえず、一回建造をしてみてはいかがでしょうか?」
「そうだな。で、どうやればいいんだ?」
のぞみが聞くと、電はある装置の前に彼を案内した。
「この装置に燃料、弾薬、鋼材、それとボーキサイトの四つの資材を投入する量を入力すれば建造できます。開発の場合は向こうの装置で同じ操作をすればいいのです。」
「なるほど。とりあえず、初めてだから全部最低の30にするか。」
そして、のぞみが資材投入量を入力して建造ボタンを押すと22:00と言う数値が出て減少していく。
「電、この数値は?」
「建造までかかる時間なのです。これを見れば誰が建造されるのか大体分かるのです。」
「なるほど。で、これなら誰ができるんだい?」
「22分ですから、白露型駆逐艦なのです。」
「分かった。じゃあ、出来上がるまで他の場所の案内を頼む。」
「はい、なのです!」
そして、二人が工廠を出ようとした時だ。
鎮守府内に警報が鳴り響いたのである。
「何だ!敵襲か!?」
「そうみたいなのです!」
「不味いな。建造が終わるのを待っている暇は無いから出撃出来るのは電だけだぞ。」
この緊急時をどう乗り越えるか考えるのぞみ。その時、電がある提案をした。
「それなら、高速建造剤を使えばいいのです!これを使えば艦娘を直ぐに竣工させる事が出来るのです!!」
「分かった!どうすればいい!!」
「さっきの装置に高速建造剤投入用のボタンがあるのです!」
「これか!」
そして・・・
「初春型駆逐艦の次に開発された白露型の一番艦、白露だよ!」
「提督ののぞみだ。」
「へ?あなたが提督?」
「済まないが説明しているヒマは無い。鎮守府近海に深海棲艦が現れた。竣工直後で悪いが、出撃して貰うぞ。」
「竣工後一番で出撃か。もっちろんいいよ!!」
「よし、出撃する!!」
鎮守府から出撃した電と白露は海面をまるでスケートのように滑っていた。
「まさか、司令官もついて来るとは思わなかったのです。」
そう言う電が見上げる先ではのぞみが背中のバーニアを吹かして飛んでいた。
「やはり、私は前線で戦いながら指揮するのが性に合っているのでね。」
「そうなのですか?」
そうやってのぞみと電が話していると・・・
「一番先に敵艦発見!」
白露が敵艦を発見した。
「あれが深海棲艦か・・・」
「駆逐イ級が一隻なのです。」
のぞみと電もまた敵艦の姿を確認する。
「よし、充分近付いたら攻撃開始だ!」
「「了解(なのです)!!」」
そして、双方は互いの射程に入り、砲撃戦を開始する。
「命中させちゃいます!」
「いっけぇーっ!」
砲撃は見事駆逐イ級に命中する。それによりダメージを与える事に成功はしたが、未だ撃沈には至っていない。
「ガアアアアアアア!!!」
すると、今度は駆逐イ級の方から砲撃を行ってきた。
「はに"ゃ〜っ!?」
それは電に命中し、小破程度のダメージを与える。
「電!おのれ、よくもやったな!!」
それを見たのぞみは鍔の部分にライオンの顔の装飾が施された愛用の剣“ライオソード”を取り出す。
「ライオソード!!」
そして、のぞみがライオソードを上に掲げると、鍔の部分がまるで鬣のように展開し、刀身に電撃が纏わされた。
「ライトニング・ライキング!!」
そして、のぞみが技名を叫びながらライオソードを振るうと、電撃がライオンの姿となって駆逐イ級に向かって突撃した。それは見事命中して大爆発を起こす。だが、爆炎が晴れると駆逐イ級はまだ沈んではいなかった。だが、電撃を受けたせいか麻痺して動けない様子である。
「今だ!二人とも!!」
「魚雷装填です!」
そして、電と白露の発射した魚雷により駆逐イ級は撃沈された。
それから暫くの時が経ち・・・
「司令官がこの鎮守府に着任してから、もう大分経ったのです。」
「そうだな。最初は君と白露だけだった艦隊も、あっという間に大所帯になってしまったよ。おかげで、私自ら出撃する事は少なくなって来た。」
「やっぱり、前線に出てる方が性に合っていますか?」
「いや、私もそろそろ年だからな。流石に前線に出るのはキツくなってきたよ。」
「なら、電達は司令官に無理をさせないよう頑張るのです!」
「ああ。期待しているよ。」
続く
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