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豚さん

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第四章

「ついつい遊んであげたくなるんです」
「それで最近朝早く起きて夜もすぐに帰って」
「リュウの相手をしています」
 ここ数日そうしているというのだ。
「ずっと」
「だから夜も居酒屋に行かなくなったのね」
「そうなんです、お酒は飲んでますけれど」
「お家でなのね」
「リュウの世話をしないといけないですから」
 そのミニ豚のというのだ。
「そうしています」
「そうなのね。じゃあ楽しくね」
「一緒に暮らしていきます」
 綾音は紗友里に明るく答えた、そして実際にだった。
 家に帰るとだった、すぐに玄関までリュウが迎えに来てくれた。顔を上げて綾音の顔をいとしげに見上げている。
 そのリュウにだ、綾音は笑顔で言った。
「リュウ、只今」
「ブウ」
 リュウは綾音に笑顔で応える。
「ブウブウ」
「おかえり、かしら」
 言葉がわかる筈もない、だがだった。
 綾音はリュウの鳴き声に笑顔で応じてだ、そうして。
 靴を脱ぎ家の中に入っていく、するとリュウは後ろからついてくる。綾音はそのことも楽しんでいた。それで家の中でだった。
 リュウの皿に餌を入れる、ミズもやる。それで嬉しそうに食べるリュウにまた言った。
「どんどん食べなさいよ」
「ブウブウ」
「それで元気で暮らすのよ」
「ブウ
 リュウは鳴いて応える、しかしそれがわかる筈もない。
 だがそれでも綾音は嬉しかった、気持ちが癒される気がした。
 それで自分の晩御飯を作って食べてだった、風呂に入って湯上りの酒を飲みつつだ。
 傍に来たリュウの頭を撫でてだ、にこりとして言うのだった。
「いやあ、やっぱりペットがいると違うわね」
「ブウ」
 また応えてきたリュウだった。
「いいわね」
「ブウ」
 綾音は幸せだった、それでだった。
 会社でもだ、紗友里に笑顔で言うのだった。
「いやあ、もう最高ですよ」
「ミニ豚可愛がってるのね」
「はい、いつも通り」
「病気とかには気をつけてるわよね」
「本を読んでいつも」
 それも怠っていないというのだ。
「豚って以外と繊細ですから」
「そうなのよね、豚はね」
「はい、ですから」
 綾音はこのことは真面目に話した。
「そうしたことには気をつけています」
「そうしなさいね。ただね」
「ただ?」
「最近ね。私もね」
「先輩も?」
「毎晩豚って言われてね」
 ここでまた自分の結婚生活のことを話す紗友里だった。彼女の豚と言われる時はどうしたものかというと。
「旦那から激しく責められているのよ」
「SMですか」
「うちの旦那昼は真面目な会社員だけれど夜は違うのよ」
「変態ですか・ひょっとして」
「ご主人様よ」
 にこりとして言う紗友里だった。
「私の」
「それで先輩が豚ですか」
「卑しい雌豚よ」
 完全にだ、それになっているというのだ。
「ご主人様のね」
「先輩も豚ですか」
「夜はね」
「ううん、豚は豚でも」
「あんたのところのミニ豚ちゃんとは全然違うわね」
「私そうした趣味ないですから」
 そもそもだ、SMの趣味も綾音にはない。あくまでノーマルだ。
「そういうことでも」
「そうよね、あんたはね」
「というか豚は豚でも」
「違うのよね、これが」
「今私達が食べているのも」
 二人は丁度会社のすぐ近くの食堂で昼を食べている。二人共生姜焼き定食を食べている。その生姜焼きの豚肉を食べつつ言う綾音だった。 
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