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統一されたが

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第五章

「パフェだな」
「パフェ!?」
「あの料理の名前だよ」
「あれがパフェか」
「ああ、そうだよ」
「何だよ、あの料理」
 そのパフェについてもだ、オスカーは唖然となっている顔で言うのだった。
「チョコレートにアイスクリームにオレンジにバナナにって」
「全部西じゃ普通だぞ」
「有り得ないだろ、どんなご馳走なんだ」
「だからそれが西だとな」
「普通なのか」
「ああした子供がお小遣いで食べられる位にな」
「何てこった・・・・・・」
 唖然としたまま言うオスカーだった。
「西は栄えているって聞いてたが大金持ちか」
「大金持ちじゃないけれどな」
「いや、国全体がな」
 それこそだというのだ、東から見れば。
「大金持ちだよ」
「そうなんだな」
「皆いい服着ていい車が沢山走っていてガムを普通に噛んでいて」
「御前ガムは噛んだことないのか」
「ないさ、そんなもの」
 とてもという口調での返答だった。
「夢みたいなもの」
「夢ってな、じゃあこれもか」
 カールも驚いている、その驚いている顔でだ。
 スーツのポケットからそのガムを差し出してだ、弟に尋ねた。
「噛んだことないのか」
「それが西のガムか」
「そうだよ、噛むか?」
「勧めてくれるんならな」
 それに乗るとだ、オスカーも応えてだった。 
 兄からそのガムを受け取って覆いの紙を取ってからだった、口の中に入れて噛んでから夢の様だという顔でこう言った。
「嘘みたいな甘さだよ」
「だからこれがな」
「西じゃ普通か」
「あの姉ちゃんみたいにな」
 東ではなかった派手な服を着たサングラスの若い女が口をくちゃくちゃとさせている、彼氏待ちかビルの壁の傍で立っている。
「本当に誰でもだよ」
「噛めるんだな、こんな美味いものを」
「そうだよ」
「何でこうなってるんだ」
「何でも何も」
「おい、東に行かないか?」 
 オスカーはガムを噛みながらカールに提案した。
「今からな」
「東ベルリンにか」
「見てみろよ」
 暗い目でだ、彼に言った言葉だった。
「こっちをな」
「大体想像つくがな」
 今のオスカーを見てだ。
「それでもだな」
「想像はついても見ると全然違うからな」
「だからだな」
「ああ、見てみろよ」
 暗い顔で言うオスカーだった、そうしてだった。
 二人はバスで東に言ってみた、それでカールはその東側を見てこう弟に言った。
「予想よりもな」
「酷いか」
「これでも東側で一番栄えていたんだな」
「東ドイツどころかな」
 東側全体で、とだ。オスカーは念を押す様にして兄に語った。
「東側の中でもな」
「これでもか」
「あの車もびっくりするだろ」
 オスカーはでこぼこの道を走っているみすぼらしい、西に行った後ではそうとしか見えない車を指差して言った。
「あれな」
「トラバントか」
「ああ、あの車な」
「話は聞いてたさ」
 あの車のこともだと答えたカールだった。
「紙の車だよな」
「そうさ、あれがな」
「東ドイツの国民車か」
「そうだよ、うちにもあるさ」
 オスカーも持っているというのだ。 
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