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打ち解けて

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第二章

「それは」
「そうです」
「そういえば君はあのオペラのミミが得意だったね」
「はい、よく演じています」
「そうだったね。そういえば」
 コレッリは歌手の顔を見てこうも言った。
「君は」
「コレッリさんもあのオペラは」
「よく出るよ」
 彼もだとだ、コレッリは微笑んで歌手に答えた。
「よくね」
「そうでしたね」
「ロドルファにね」
「あとコレッリさんはプッチーニですと」
「今回のトゥーランドットだけでなく」
 この作品が彼等が今回出演する作品だ、プッチーニの最後の作品で中国を舞台とした異国情緒溢れる作品である。
「トスカや西部の娘もね」
「どちらもでしたね」
「よく出てるよ」
「そうでしたね」
「そして今回のトゥーランドットは」
 コレッリは自分からこの作品のことを話した。
「特に自信があるよ」
「はい、それでは」
「宜しくね」
「それでは」
 こう話をしてであった、歌手はコレッリとの初対面を終えた。その後で。
 自分の控え室に入って舞台の用意に入ろうとした、だがここで。
 マネージャーがだ。驚いた顔で彼女にこう言ってきた。
「あの、今のは」
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ」
 こう鏡の前に座った彼女に言ってきたのだ。
「コレッリとね」
「そんなに悪い人って印象はなかったわ」
「いや、それがね」
「違うっていうのね」
「とにかくすぐ怒ってね」
 そしてというのだ。
「神経質なんだよ。ブーイングをした観客に言い返したこともあるから」
「そうしたこともあったの」
「とにかく気難しい人だってのは言ったね」
「ええ、お付き合いの難しい人だって」
 このことは確かに言われた、彼女もマネージャーから。
「だから気をつけろって」
「今回の演出も大変だったんだよ」
 マネージャーは歌手にこのことも話した。
「とにかくね」
「衣装とか照明のことで?」
「まだ照明のことは言ってきていないよ」
 今のところは、というのだ。
「けれど衣装のことでね」
「あの人確かタイツが好きなのよね」
「いつもタイツをはきたがるんだ」
 舞台において、というのだ。
「黒タイツをね」
「スタイルがいいからなのね」
「そうだよ、特にあの人は脚が綺麗だからね」
 その脚のスタイルを観せる為に黒タイツをはきたがるのだ。かつての欧州の男の服は下はタイツだったので普通と言えば普通だ。
 しかしだ、コレッリは特にだというのだ。
「物凄くタイツをはきたがるから」
「それで今回の舞台も」
「演出家とえらく揉めてね」
「大変だったのね」
「降りる降りないの話にもなりかけたよ」
「そうだったの」
「とにかく難しい人なんだよ」
 コレッリは、というのだ。 
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