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戦国異伝

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第百七十八話 宴会その六

 家康は唸った、そして言うことは。
「素晴らしき茶ですな」
「宇治の茶や」
「そこからですか」
「持って来させた茶じゃ」
「宇治の茶はこうした味でしたか」
 家康は唸る様にして述べた。
「はじめて飲みましたが」
「美味いな」
「はい」
 まさにと言うのだった。
「これだけ見事な茶は飲んだことがありませぬ」
「利休の淹れ方もな」
「はい、それも」
 それもだというのだ。
「お見事です」
「やはり利休の茶は違う」
 彼が淹れたそれはというのだ。
「別格じゃ。何もかもが違う」
「全くですな」
「それにじゃ」
「菓子もですな」
 茶と伴に菓子もある、家康はその菓子を見て信長に応えた。
「まるで花の様ですな」
「綺麗であろう」
「口にするのが勿体なき程に」
 そこまでだというのだ。そして実際にだった。
「見事ですな」
「そうじゃな」
「ここまでの菓子もですか」
「宴ではより凄いものが出るぞ」
「これ以上にですか」
「うむ、それも楽しみにしておれ」
 笑顔で言う信長だった。
「山海の珍味、それにな」
「その他に菓子もですか」
「それも出るしな」
 それにというのだ。
「その他にもな」
「出てですか」
「御主達にも楽しんでもらう」
「その食材を選んだのは」
 家康はここで利休を見た、そして言うことは。
「利休殿ですか」
「そうじゃ」
 今はあえて黙して茶の役に徹している利休に代わってだ、信長は家康に対してこう答えたのだった。
「この者にな」
「他にもですか」
「十兵衛や十二郎にもな」
 明智、荒木にもというのだ。
「選ばせて役目を与えておる」
「左様ですか」
「だからな」
「宴をですな」
「楽しみにしてもらう。そしてな」
 信長は微笑み家康に話していく。
「楽しんでもらう」
「実際にですな」
「あらゆる珍味を取り寄せたからのう」
「珍味ですか」
「そうじゃ、南蛮からも取り寄せた」
「何と、南蛮からもですか」
「そうじゃ、そして天下の珍味もある」
 その珍味の中には、というのだ。
「よいぞ」
「ううむ、どの様なものか」
 家康はここまで聞いて唸る様にして述べた。
「わからなくなってきました」
「ははは、それだけに楽しみにしておいてもらおう」
「さすれば」
「とにかくじゃ、今日は楽しんでもらう」
「宴をですな」
「これまでにない宴をな」
 これから行われる宴はそこまで凄いというのだ。
「そうしてもらうわ」
「有り難いことです」
「御主には色々と助けてもらっておるしのう」
「いえ、それがしはその様な」
 ここではだ、家康は謙遜して信長に述べた。
「全く」
「家臣達がというのか」
「あの者達が常にです」
「働いてくれるからか」
「左様です」 
 だからこそ、というのだ。 
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