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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第十幕その六

「日本酒で甘いものは食えませぬ」
「そうなのですか」
「日本酒には辛いものです、しかし」
「しかしとは」
「わしもフランス料理の時に日本酒を飲むことはしませんぞ」
 そうしたことはしないとです、長老さんは笑って言うのでした。
「流石に」
「フランス料理にはやはりワインでしょう」
「それが礼儀ですな」
「正式な場では」
「それはわしも心得ているつもりです」
「というか日本ではそうしたことをする方がおられるのですか?」
「以前松山に東京から新聞記者が来たのです」
 長老さんは眉を顰めさせて老紳士にお話しました。
「リーゼントにして黒い服の若い男でしたが」
「新聞記者ですか」
「はい、その男が店の飯がまずいと怒鳴り散らしていまして」
「イギリスでそんなことは」
「日本でも滅多にいませんぞ」
 長老さんは眉を顰めさせてそうした人が日本人全体ではないと言うのでした。
「その様な下品な行動をする者は」
「それはそうですね」
「流石に無礼にも程度があります」
「幾ら味が会わなくてもですね」
「はい、それなら自分だけのことで済ませればよいのです」
 例え味が合わなくてもです。
「そこで店の中で怒鳴り散らすなぞ」
「営業妨害ですね」
「左様です、ですからわしもです」
 それで、というのでした。
「その新聞記者のところに縮地法で飛んで行って懲らしめてやりました」
「懲らしめられたのですか」
「化かして池を風呂に見せてです」
「そこに入らせたのですね」
「それも真昼間に」
「それが日本の狸さん達の懲らしめ方ですか」
「そうなのです、化かしてです」
 そうしてだというのです。
「懲らしめてやるのが我等です」
「ではその新聞記者は」
「真昼間に全裸で池に入っったのですから」
「警察に捕まりましたね」
「そうしてです」
 その結果だったというのです。
「その記者はそこから営業妨害の件やあらゆる悪事が公になりまして」
「警察に取り調べられて」
「新聞社を懲戒免職になりました」
「当然の報いですね」
「その記者がまた下品で」
「フランス料理の場で、ですか」
「牡蠣に合うからと言って日本酒を飲んだのです」
 ここでこのことをです、長老さんは老紳士にお話しました。
「非常に無作法ですね」
「全く以て」
 老紳士もこう思うのでした。
「それがインテリゲンチャですか」
「日本の新聞記者です」
「日本の新聞記者は随分と質が悪いのですね」
「このことはお気をつけ下さい」
 絶対に、という口調での言葉でした。
「この松山は観光地なので新聞記者やテレビ局の人間も多いので」
「彼等の質の悪い行動が多いのですね」
「そのことには」
「わかりました、しかし料理が合わないだけでお店の中で怒鳴り散らすとは」
 そしてフランス料理の場で日本酒を飲むこともです。
「酷いものですね」
「そうしたことを常に繰り返し偏向報道も常でした」
「まさにならず者ですね」
「残念ですが日本ではならず者が新聞記者や学校の先生になるのです」
「学校の先生もとは」
 このことにはです、老紳士はさらにびっくりしました。
「あの、それは」
「イギリスでは、ですか」
「教師といえばそれなりの地位にありますから」
「日本でもそうです」
「それでもですか」
「はい、ならず者がその地位にいて子供達を教えているのです」
「それは恐ろしいことですね」
 老紳士はこのことを聞いて唖然となって長老さんに応えました。シャンパンを飲みながらのお言葉です。 
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