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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
  number-35 after this

 
前書き




これから。


この場合は、高町なのは。フェイト・テスタロッサ。八神はやて。ユーリ・エーベルヴァイン。三桜燐夜。


 

 


 フェイトはいつまでたってもやってこない衝撃に疑問を抱き、思わず瞑ってしまった両目を開く。そこには、ある少年の姿が。燐夜かと思ったがそうではなく、仕事の同僚でクラスメイトの神龍雅だった。
 必殺にも近いユーリの攻撃を西洋剣一本で防いだ龍雅だったが、やはり威力を殺しきれずにいくらかは防御を貫いて龍雅に届いてしまっていた。痛みに顔を歪める龍雅だったが、決して痛みに悶える声は上げずにその瞳はただ一点、ユーリだけを見ていた。


「あ、ありがと……」
「それは今言うことじゃない。それより、まだ行けるだろ?」
「……勿論」


 フェイトからの感謝を受け取らなかった龍雅。数か月前の彼をは全く違う性格にフェイトは、違和感を覚えてしまうが、それこそ今気にすることではない。フェイトは、先に飛んでいった龍雅を追いかけて戦線に復帰する。


 燐夜は自身のデバイスに自分が持つドラゴンの力を流し込みながら戦っていた。嘗て最強の名をほしいままにしたドラゴンの力。燐夜のユニゾンデバイスであるエクレイアは、その力にのまれそうになりながらも必死に制御していた。少しでも気を抜くとあっという間に飲まれてしまうこの力。だがすべては燐夜のために。自分がここで負けるわけにはいかないと先ほどまで暴走していたことを彼方へ追いやり、サポートに徹する。


 だが、燐夜にはすでに限界が来ていた。体中の節々から軋む音が悲鳴のように聞こえ、脳は、高速演算の並列でもう焼き切れそう。それに出血も止まることを知らず、このままいけば失血で命を失う可能性まである。
 それでも燐夜は戦う事を止めなかった。過去から来ている存在である燐夜がなぜここまで必死に戦っているのだろうか。それは燐夜本人にもわからなかった。ただこの戦いに勝ちたい思いだけが燐夜を突き動かしているのかもしれない。
 こんなことをどこか漠然と思いながら燐夜はユーリに向かっていく。


「我流、九星三碧、流蒼三戟」


 勢いよく振るわれた剣から衝撃波が放たれる。それはユーリを二つに引き裂かんとばかりに迫る。しかし、それをいとも簡単には魄翼で払うユーリ。だが、その払った衝撃波の後ろにもう一つ同じ衝撃波が。よく見るとその後ろにももう一つ。一回だけ振るわれたと思いきや、あの一瞬の間に斬り下ろして、斬り上げて、また斬り下ろすをやっていたのだ。
 蒼い炎が纏われた衝撃。二撃、三撃と同じところに寸分違わずに繰り出される技。もはや達人の域であった。
 ユーリはそれを大きく旋回することで避ける。だが、その先には戦線に復帰してきたフェイトと乱入してきた龍雅がいた。燐夜は龍雅がいることに驚き、アースラへ連絡を取ろうとするがやめる。その後ろにクロノが来ているのが見えていることから、また勝手な行動をとったのだろうと安易に予想がついた。


 龍雅がユーリと正面からぶつかり、フェイトが周りからヒット&アウェイを繰り返す。定石ではあるが、確実に削れてはいる。
 ちらっとなのはの方を見ると、もうすぐ集束が終わるといったところであったが……なのはのデバイスであるレイジングハートの先に集束されている魔力が尋常ではなかった。もはや太陽である。なのはの桃色の魔力を中心にフェイトの黄色、燐夜の灰色、ユーリの黒い赤色がアクセントとなって辺りを照らしている。


 燐夜は気を持ち直して、なのはの攻撃の後追撃するために同じように集束に入った。燐夜の収束はなのはほどは遅くない。むしろすぐ終わる。それはヴィータと相対した時に証明済みだ。すぐになのはの三分の二ほどの大きさまで膨れ上がる。


『燐夜君!』
『どうした、なのは』


 突然、なのはから念話が入る。いきなりのことに若干ギョッとしたが、さほど問題にはならなかった。制御している魔力が暴走するようなことにもならなくて済んだ。燐夜はなのはにもう少しタイミングを呼んでほしいとお願いする。


『にゃはは……ごめんね?』
『もういいから。何か用があったんだろ?』
『うん! 私と一緒にせーので撃ってほしいの!』
『ああ、分かった』


 合図は任せて! そう伝えたなのはは念話を切った。目下戦闘は続いている。龍雅が押され気味ではあるがフェイトがフォローしてぎりぎり持っている状態だった。表情も歪んでいる。状況が芳しくないせいだろう。だが、龍雅は本来の目的をすっかり忘れてしまっているのだ。いや、知らないと言った方が正しいのだろうか。なのはの時間稼ぎだということは知らないまま全力を持って真正面から立ち向かっていく。
 燐夜からして見れば、無謀ではあるが、それを実行している根性と足りない分を補う頭脳だけは評価に値した。
 集束が終わった。あとは放つだけであるが、燐夜の体では制御していられるのは持ってあと二分といったところ。出来るだけ早くしてもらわないと逆に魔力に呑まれてしまう。意識を保っているのもやっとといったところ。だが、確かにこの戦いは自分の糧となっている。巻き込まれた形で参加している燐夜だったが、今はむしろ感謝さえしている。


 ――トクンと心が高鳴った。まるで私を忘れるなと言っている様に。私を大切にしろと言っている様に。
 そうだった。一番近い所にいる相棒を忘れるところだった。エクレイア。今は亡き母親から受け継がれたユニゾンデバイス。最初はさほど好きでなかったが、ともに戦いを重ねているうちに唯一無二の相棒になっていた。
 ――――限界が近い。合図はまだなのか、なのは。


「ストラグルバインド!」
『今っ!! 行くよ、燐夜君!』


 クロノがユーリに向かって拘束魔法(バインド)を唱えていた。その一直線上には龍雅がいたが、直前に退避していたためユーリに当たって拘束する。龍雅が退避していなければ彼に当たっていた気もするが、それでもかまわなかったのだろうか。――――今は放っておこう。
 そして着弾を確認する前になのはから合図が来る。打ち合わせをしていたのだろう。そのために時間が掛かっていたようだ。


 そして、これが正真正銘の全力。死力を尽くした戦いもこれで終わればいい。と思えば、まだ終わって欲しくないような気もする。でも、今回はこれで幕引きだ。


「全力全開っ!! スターライトッ……ブレイカァァァァァァ――――――――――!!!!!」
「我流、九星六白、集束砲。六花極天性爆砕」


 先になのはの先行する砲撃が拘束されているユーリに命中する。それから遅れること数秒。なのはの恒星のような砲撃といくつにも分裂した燐夜の砲撃がユーリに殺到する。ユーリはそれらをとても安らかな表情で受けた。


 今までぶつかり合ってきた。相手の感情が流れ込んできた。相手の記憶が流れ込んできた。自分と同じくらい不幸な過去を持つ人を初めて見た。戦っていてわかったことがある。みんな差異はあっても不幸な思いをしてきている。でも、みんな笑っていた。どうしてか分からなかった。でも……でも、今ならわかる気がする。
 今日ほど戦うことが楽しかったことはない。胸に手を当ててみる。エグザミアはもう止まろうとしている。キャパシティを超える魔力を食らったから機能を停止したんだ。
 これでようやく解放される。ようやく向こうに逝ける。


 強大な魔力の奔流から解放され、ユーリは意識はあるものの落ちていく。もうこのまま終わってもよかった。
 なのはたちはユーリを助けようとまた動き出すも、一番近いフェイトでも間に合うかどうかといったところだった。それでも、諦めの表情は見えない。誰もがユーリを助けようと必死だった。でも間に合わない。


「勝手に行こうとするな、馬鹿者」
「……? ディアーチェ?」


 落ち続けるユーリを捕まえたのは、先ほど躯体の完全復活を終えたディアーチェだった。それだけではない。その周りにはシュテルもレビィもいた。ユーリの視界がぼやける。ユーリの頬を何かが伝う。もう止められなかった。涙がとめどなくユーリの頬を伝って零れ落ちる。ようやく会えた四人、ようやくそろった四人。彼女たちの表情には、翳りなんてものはなかった。
 抱き合う四人。再会を喜び合う。今の彼女たちを邪魔するものは誰もいない。紫天の盟主、ユーリ・エーベルヴァイン。そこに集う三人のマテリアル。理を司るマテリアル星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)。力を司るマテリアル雷刃の襲撃者(レビィ・ザ・スラッシャー)。王を司るマテリアル闇統べる王(ロード・ディアーチェ)


 彼女たちを見てなのはたちは、もらい泣きする。それは、先ほど合流したあたりに被害を広めない様に守っていたヴォルケンリッターやはやて、フローリアン姉妹もそれに漏れない。クロノもさすがに空気を呼んだのか、ただ彼女たちを見ていた。燐夜はユニゾンを解除すると飛行魔法だけを展開したまま、バリアジャケットも解除してしまった。理由は、魔力の回復と体力の回復のため。ドラゴンの力に呑まれかけていたのか、エクレイアの瞳は青みがかっていた。そんな彼女に回復魔法をかけてもらう。


 終わることなくあたりを覆い尽くしていた雲が晴れる。隠れていた空を見ると、いつの間にか白み始めて朝日が辺りを照らし始めていた。
 それはまるで再会を果たした彼女たちを祝福しているに違いなかった。


 ◯


「へいと!」
「だから、フェイトだってば。ふぇ、い、と」
「んー……へいとでいいじゃん」
「だめ!」


 アースラ内は騒がしかった。嘗て戦っていた筈なのにもう和気藹々と話している。昨日の敵は今日の味方、なのだろうか。燐夜にはいまいち理解に苦しむ光景である。そんな燐夜が視線を正面に戻すと、目の前にはフローリアン姉妹が。
 過去から来てしまったのは自分たちのせいだということを伝え、謝る。そして、ちゃんと元の世界に帰してくれるとのことだった。それだけが不安事項であったため、燐夜はようやく肩の荷が下りたような気がした。


 お別れの時間までまだもう少し時間があるらしい。まだ、転移の準備が終わっていないとのことだったので、終わるまで休むことに決めた燐夜。


 ……あの事件。闇の欠片事件と名付けられた先ほどの出来事は、闇の書――――夜天の書が改悪されていた影響で起こった一つらしい。ずっとリインフォースとナハトヴァールで押さえつけられていたが、十二月の闇の書事件でどちらも内部のプログラムから切り離されたため表面に出てきて起こってしまったことだという。それに加えて、過去と未来からやってきた来訪者。それはフローリアン姉妹のせいであるのだが、燐夜が巻き込まれてしまった原因は不明。推測として、転移先が切り離されていたのにもかかわらず、無茶な転移をしてしまった副次的影響のせいであるというのが彼女たちの見解である。燐夜もそう深くまで問い詰めるつもりはないので理解。和解もすでに済ませた。


 こんなことが何度も起これば、そのたびに命を削るのかと辟易としたが、思えば燐夜にはもう飛ばされてこない限り関係のないことであるし、何よりもこれ以上のことはもう起きることはない。そうリインフォースがみんなに言っていた。


 これからのことは、燐夜はこのまま過去に戻されて、あの四人はアミタとキリエと一緒にエルトリアの復興に尽力すると決めたらしい。その際、全員に記憶にフィルターをかけることになるとか。時間渡航者であるため、過去や未来がねじれてしまわないようにする対処でこれには全員が納得した。むしろそっちの方がリンディ的には助かるらしい。疲れたような表情でそんなことを言うリンディには誰もが同情した。


 命令違反、単独行動、上司に対する暴言など管理局の規律に違反した神龍雅についてだが、ほとんどお咎めなしということだった。事件解決に尽力したことと暴言を吐いたリンディに対して謝り通した龍雅。一か月の管理局無料奉仕が今回の罰だ。階級も三等空尉に戻り、プラスに転がっていたが龍雅にしてみればまだ気が抜けないといったところか。


 ……ようやく準備が終わったらしい。燐夜はアミタに呼ばれてアースラの管制室から海鳴市の高台に転移する。そこにはもうすでに全員そろっていた。どうやらぼっとしているうちに置いて行かれていたらしい。
 アミタについていく形で魔法陣の上に乗る。あとは転送するだけになったところでなのはたち三人が寄ってくる。


「ねえ、燐夜君。……ここの燐夜君はね、どこかに消えちゃったんだけど……帰ってくると思う?」


 真剣な表情をされてこう問われた。そんなこと聞かれてとも思いもしたが、考えてみれば自分のことである。そう捉えるとこれも当然のことだ。


「さあな、それは分からねえよ。でも言えることは、待ち続けてれば会えるさ。俺はどこかで生きているだろうさ」
「……うん、そっか。そうだよね」
「私たちも待つことにしてみるよ」
「ありがとな、燐夜君。……そんじゃあね、バイバイ」


 口元に笑みを浮かべると燐夜は転送されていった。そしてそれに続くようにしてアミタたちも故郷であるエルトリアに帰っていった。見送ったアースラメンバーも戻って行く。はやてもヴォルケンリッターに連れられて家に帰っていた。今ここにいるのはなのはとフェイトの二人である。


「私たちも帰ろう」
「そうだね、フェイトちゃん」


 二人は並んで高台を後にする。


 十二月も終わりに近く大晦日直前の今日。朝日が照らす海鳴市はとても静かだった。冬空は十二月にしては珍しく、雲一つない快晴。
 これからまだまだ寒さが厳しくなるような予感を乗せた冷ややかな風が誰もいなくなった高台を吹き抜けていく。
 未来のことはまだ分からない。それでもきっと楽しいものになるだろう。
 いくつもの出会いと別れを経験した彼女たちならきっとできる筈。


 ――――。


 また高台に風が吹き抜けた。今度は、さっきよりも暖かいようなそんな気がした。











   Third story~Originally,meeting of those who that you meet does not come ture~Fin.







 
 

 
後書き


GOD編完結。

長かったです。これが一番長い。
これからはなのは、はやてと投稿している番外でフェイトを投稿してからで新しくでしょうかね。
これからもよろしくお願いします。
 
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