とある3人のデート・ア・ライブ
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第五章 楽園
第2話 不可解な現象
前書き
せっかくなので2話連続で投稿しました
バン!
という爆発音に似た音があった。
士道と上条は屋上へと続く階段を駆け上がり、そこにあるドアをドンと勢いよく開け放った。
そこはもう始まっていた。
張り詰めた空気の中、1人の少女がたたずんでいた。
十香「し、シドー……当麻……」
夜刀神十香だ。
士道「十香ッ!?」
まばゆく輝く奇妙なドレスーー霊装を纏った十香の身体から紫色の光がゆらゆらと立ち上っている。
十香「シドー……当麻……逃、げろ……ッ!」
士道「んなわけに行くか!!」
上条「くそっ!」
まだ間に合う。そう思い、走り出そうとした時、
士道「っ!?」
身体が思うように前に進まなかった。
上条「士道!?」
士道「俺は、いいから……早く、十香、を……」
上条「くっ……分かった!」
士道は十香から何か吸い寄せられるような錯覚に陥った。それと同時に足に重い鉄枷をつけられたみたいに思うように前に進まなかった。
上条は十香の元へと駆け出す。
その時、
上条「ーーっ!?」
突如、右腕が『龍の顎』に変化した。自分は何も意識もしていないはずなのに……
だが、その『龍の顎』は意思を持っているかのように十香を襲おうとしている。
上条「くっ……!」
上条にも訳が分からなかった。こんなことは修行の時でもなかったはずだ。
理由は分からないが、とりあえず『龍の顎』を引っ込めようと全力を注ぐ。
上条「あああぁぁぁぁッ!!!」
引っ込めようとすればするほど、身体の神経がマヒしそうな痛みが右腕を中心に襲いかかった。
身体の魔力の流れが一気におかしくなった。
頭と身体の処理が追いつかず、上条はその場に倒れてしまった。
士道「上条!?」
呼んでも返事はない。右腕は『龍の顎』のままだった。
上条が倒れた以上、ここで立ち止まるわけにはいかない。
一歩、一歩確実に、十香の方へ向かう。
十香「来ては、ダメだ……シドー……!きては、シドーまで……!」
士道「お前を、1人に……なん、か……」
地を這いつくばるように、歩いていく。
十香「シドー……!おま、え、を……こ……した、く……ない……ッ!!」
声にならない声で叫ぶ。身体からのオーラは大きくなっている。
少しでも気を抜けば吹き飛ばされそうだ。それを懸命に堪える。
刹那、
士道の身体の中から、得体の知れない『力』が一気に流れ出した。
それに呼応するかのように〈サンダルフォン〉が輝きだした。
士道「(このままじゃ十香が……)」
士道は懸命に手を前に出す。
士道「十香ぁぁぁぁぁッッ!!!」
十香「シドォォォォーーーッ!!」
十香が絶叫する中、視界が白く塗りつぶされ、士道の意識は途絶えた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
夢の中
?「……始まる」
そう聞こえた。
ピンク色の長い髪に青と白と黄色でデザインされたドレス、冠のような帽子にも似たものを被り、それは両肩を覆えるぐらいまで布が伸びていて赤色の目をしていた。
?「閉じられた日々が再び……全ては、もう一度繰り返す……私は〈凶禍楽園〉での幸福な日々を……守り続けなければならない……」
?「けして……〈凶禍楽園〉の管理に問題があってはならない……夢を終わらせてはならない。それだけは、許されない……」
?「始まった……全てを振り出しに戻して……」
え?……誰の声だ……?知っているような……全然知らないような……
でも1つだけ分かることがある。
その声はとても温かくてーー優しさに満ちていた……
そして
夢は途絶えた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
上条「(何だったんだ……今のは……)」
目の前が暗い中でそう思っていた。
上条「(あいつは……何者だ……?)」
少しずつ意識が覚醒していく。
まぶたをゆっくり開くと、眩しい光が入ってきた。
上条「っ!?」
上条は反射的に目を腕で抑えてしまう。
?「よォ……起きたか……」
光に目が慣れて、顔だけ振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
上条「一方通行か……」
学習用のイスに座り、腕を組んでこちらを見ている。
上条「みんなは……?」
一方「五河士道の方に行ってやがる。あいつは熱を出してるみてェだしな」
上条「そっか…….」
一方通行から視線を外して、見慣れた天井を見ていた。
上条「あの後俺はどうなったんだ?」
一方「さァな。ま、言えるとしたらテメェは3日間寝てたってことだ」
上条「そっか……って3日も!!?」
一方「ま、そォいうことだ。俺は一階に行ってくる。詳しい事情は五河琴里にでも聞いとけ」
一方通行はイスからすくっと立ち上がると、そのままドアを開けて出て行った。
上条「(あの夢……あれは一体……それに、あの時どうしちまったんだ……俺の『右手』は……)」
上条はゆっくりとベッドから出て、パジャマ姿だったが、そのまま部屋を出て行こうとした。
その時に本棚の角に小指をぶつけたというのはまた別の話……
ーーーー
ーーー
ーー
ー
それは突然起こった。
いつものように十香と士道と上条はたわいもない話をしていた。
普通だった。
食堂でパン屋さんが新しいメニューを出したりとか、最近上条の不幸が一層増してるような気がするとか。
その日、少し違うとすれば士道が風邪気味だったことだろう。
だが、休むほどのことではなかったので普通に学校に来ていた。
その、はずだった。
昼休みに急に十香が苦しそうな表情をしたと思うと、教室を飛び出し、屋上へと向かった。
そこにはさっきの光景。
十香の完全なる霊装姿。
あれは一体……
ーーーー
ーーー
ーー
ー
上条は目の前のドアを無意識に開ける。そこには目を疑う光景があった。
士道がベットの上で上半身裸になり、その近くで体温を測っている明らかに寝不足な顔をしている令音、頬を赤く染めながら士道の身体を拭いている十香、それを後ろで恥ずかしそうに見ている四糸乃、そして琴里がいた。
上条「……悪い、まだ上条さんは寝ぼけてるみたいですよっと。では、これで失礼」
士道「っおい!ちょっと待て!この状況をなんとかしれくれよ!」
上条「いや〜、上条さんも暇ではないんでね」
そう言って、バタンとドアを閉めた。最後に見た上条の顔は……笑っていたが、その中には呆れが入っているような気がした。
士道「また変な誤解を生んだ!っていうかあいつは何しに来たんだ?」
十香「っ……シドー、じっとするのだ」
士道「あ、ゴメン……」
十香に困った顔でそう言われると素直に従うしかなかった士道であった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
佐天「あ、上条さん。コーヒーでも飲みます?」
上条「ん、じゃあもらうとするよ」
あの後、階段を降りて1階のリビングへと向かった上条は、佐天が沸かしたコーヒーを飲んでいた。一方通行も飲んでいることから少し多めに作って余ってしまったのだろう。
砂糖とミルクを入れてズズッとコーヒーを飲む。それはコーヒーしては少し甘い味だった。今度からミルクと砂糖の入れる量を調節しようか、そう思っていると、急に佐天が話しかけてきた。
佐天「上条さん、身体の方は大丈夫ですか?」
上条「俺は大丈夫だけど……士道がいろんな意味でやべぇと思うぜ?」
佐天「あ〜……それはなんとなく分かります……」
一方「お前ら、話すのもいいがもう夜遅ェからさっさと寝ろよ」
上条「へいへい」
佐天「はーい」
上条と佐天はおとなしく自分の寝室へと向かった。
佐天は琴里の部屋が今日の寝場所なので2階へ向かう。上条は一方通行と同じ部屋で居間に布団が引いてある。
上条「っていうか、一方通行のやつは寝ないのかよ……ま、いっか。明日も学校あるし、寝るとするか」
電球を消して布団の中に潜り込んで、静かに、おやすみ、と呟いてそこで上条の意識が途絶えた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
一方「(なンか2階から物音がするなァ……)」
深夜、コーヒーを片手にテレビを見ていた一方通行は静かなはずのこの家に違和感を覚えた。それが物音。
テレビを消して、耳を澄ませる。
一方「(音源は……この位置は五河士道の部屋か。また面倒なことを起こしやがって……)」
そばに置いていた杖を右手で持ち、リビングのドアを開ける。階段を登ろうとしたところで、ふと人の姿が見えた。
一方「オイ、何してンだ?」
その子に声を掛ける。
琴里「何か士道の部屋から物音がするから確かめにきただけ。話したいこともあったしね。あくせられーたはどうしたの?」
明らかに寝ぼけているが、琴里に同じ目的だということを伝えると、納得してくれた。
ちなみに琴里のリボンは黒である。
士道の部屋の前までくると、明らかに士道の声とまた別の声が聞こえる。
琴里はそれに気づいていないのか、躊躇なく開けてしまった。
一方「(ま、不審者がいても俺がいれば返り討ちには出来るだろ……)」
と、不審者がいると思っていた一方通行の考えはすぐに間違いだと証明される。
琴里が電気をつけ、視界が明るくなる。
琴里「随分騒がしいけど……士道、起きてるの?厄介なことになーー」
途中で言葉を止めた。一方通行は不審に思い士道の部屋に入る。
一方「オイ、どうしーー」
一方通行も琴里と同じく、目の前の光景に黙り込んでしまった。
なぜならーー
鳶一折紙がそこにいたのだ。
それも士道のベッドの中に、下着姿の状態で。
琴里「…………」
一方「…………」
驚きと呆れと怒りが混じると、声がでないものである。
琴里「……何してるの?さっさと士道から離れなさいよ」
怒りを込めて言う。折紙は無言で士道から離れ、そばに脱ぎ捨ててあった服を着た。
琴里「…………」
折紙「…………」
士道「お、落ち着けよ。な!?」
琴里「どういう状況なの?」
士道「お、お見舞いだよ!お見舞い!ずっと休んでたからって駆けつけてくれたんだ!」
折紙「そう。士道のいう通り」
琴里「ヘェ〜……最近のお見舞いっめ泥棒猫みたいにベランダからベッドに潜り込むことを言うのね。知らなかったわ……」
一方「いや、ねェだろ」
そりゃそうだ。安全な国、日本が見舞いごときで犯罪を起こしていては警察が忙しすぎるっていうものだ。っていうか何より危ない。
折紙と琴里はまだ睨み合っている。お互いに士道のことを思っているはずなのに、どうしてこう敵対するのか。男2人には分からないことだった。
士道「お、折紙!今日はもう遅いから帰れ!」
とはいえ今は深夜だ。ワイワイ騒いでいい時間ではない。この話は一旦お開きにするのがベストであろう、と士道は考え、折紙にそう言った。
折紙はまだ不満そうだったが士道が無理矢理外に連れて行き、お礼を言って鍵をかけた。
琴里「全く……どうしようもない愚兄ね……」
士道「や……だから、何もやましいことはしてないって!」
琴里「ふーん……ま、信じるわ」
琴里の言葉に安堵の息を吐く士道だった。完全に蚊帳の外にされた一方通行だったがここでやっと口を開いた。
一方「そォいや、お前の話したいことってのは何だ?」
琴里「あぁ、そのことね。士道。よーく聞いて」
士道「あ、あぁ」
琴里「どうやら思いの外、厄介なことに巻き込まれたみたいなのよ。この天宮市自体が」
士道「天宮市が……?どういう……」
琴里「天宮市全域に及ぶ範囲でとても強い霊波を察知したの」
士道「それって……」
一方「……」
琴里「精霊が絡んでる。その可能性が高いわ。だけどーー」
一方「まだ確信は持てねェ……って訳か……」
琴里「そういうこと。ASTの顕現装置の実験かもしれないし……でもこれだけの霊波を出すのは難しいのよね……」
士道「そっか……」
琴里「ほっとしてる暇はないわよ?何かが起きているのは確かなんだから……それに、士道の身体から霊力が逆流している現象とも何らかの関係があると思ってるしね……」
士道「そんな、まさか……」
一方「偶然が良すぎる。お前には異常はねェみてェだしな。ま、これは予想にすぎねェけどな……」
琴里「私も一方通行と同意見よ。上と連絡が取れない以上、簡単に結論は出せないし……」
不可解な現象。
上層部と連絡が取れない。
どういう訳かは分からない。
琴里は士道に最後に精霊の安心させるように言った。それは暴走したときに被害を最小限に抑えるため。
夜も遅いので琴里と一方通行は自分の寝室へと戻って行った。
今日は、6月24日。
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