ロックマンX~5つの希望~
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第一話 アクセルSIDE1
前書き
X7始動。
アクセルSideから行きます。
星1つ見えぬ夜であった。
月はなく、代わりに輝いているのは高層ビルの照明であった。
青白い光が街を包み、ぼうっと浮かび上がるように見せている。
そのビル街を縦断せんと造られたハイウェイがある。
かつて史上最強のイレギュラーハンターが反乱を起こした時、壊滅的な被害を受け、今ではすっかり元通りの高速道路だ。
その道路の下には厳重な関門があった。
序盤はレイ・トラップ。
次にランナーボム(爆破任務用レプリロイド)が控えている。
最後には堅固な扉が侵入者を阻んでいた。
誰も突破出来ないと思われる関門。
その入り口に1人の少年がいた。
漆黒のアーマーと胸部とヘッドパーツに大きなコアを宿していた。
少年はバレットを構え、前を見据えた。
「さようなら、レッド…絶対にハンターになってやる!!」
数秒後、夜の帳に銃声が響き渡った。
手榴弾が炸裂する一瞬の間を走り抜けた。
爆弾の放たれた方向から敵の場所を見抜き、銃弾を放つ。
短い悲鳴がしたかと思うと、手榴弾の攻撃が手緩くなる。
少年の銃弾が確実に敵を撃破している証拠だ。
だが、敵の数は多い。
「数に物言わせて倒すつもり?無駄だよそんなの!!」
少年は不敵に笑う。
窮地に追いやられても屈しない意志、不敵な笑み。
敵の真っ只中に突っ込む度胸。
子供であるにも関わらず、並の戦士ではない。
破壊したレプリロイドが破片を落とす。
レプリロイドの精製情報の塊、DNAコアである。
「使わせてもらうよ!!」
コアを掴む。
少年の身体は発光し、次の瞬間ランナーボムへと姿を変えた。
ランナーボムは爆破任務用レプリロイド。
それゆえに高い耐久性と耐熱性を有している。
「これで爆弾なんかへっちゃらだね!!」
猛火を潜り抜け、強固なる扉を破り、少年はハイウェイに辿り着いた。
ビルの照明に明らむ主幹道路だ。
「はあっ…はあっ……流石にここまで来れば…大丈夫かな…?」
流石に突き抜けるのはきつかった。
鼓動が速い。
乱れた息のまま、彼は辺りを見回し、歩き始める。
直後、後方で大きな“音”がした。
驚いて振り返った彼は、すぐさま前を向き、全速力で走りだした。
「(レッドが差し向けた刺客…!?)」
バレットを連射しながら、少年はそんなことを考えた。
かつては兄とも父とも慕った戦士。
彼はどこまでも自分を利用しようというのか。
ならば抗うだけだ。
「やっ!!」
銃弾を浴びせる。
メカニロイドの装甲はそれをたやすく弾いた。
「嘘!?」
メカニロイド、メガ・スコルピオがお返しだと言わんばかりに尻尾から赤い光弾を放った。
「くそ!!」
少年は地面に雪崩れ込むようにかわし、バレットを構えた。
スコルピオは咆哮を上げ、鋏を天に掲げている。
戦いに歓喜しているかのようだ。
「いい気にならないでよね?」
不敵に構えたが、同時に自身の不利を悟った。
ここはハイウェイ。
地上とは100mも離れている。
いくらレプリロイドでも落ちればただではすまない。
先程の赤い光弾が道路に穴を開けてしまっている。
「(ここはまずいな…。もっと安全な場所、この先に避難しなきゃ!!)」
ハイウェイの奥には確か地上に通じる道がある。
そこまで行けばまともに戦えるだろうて判断し、身を翻した。
「さあ、鬼ごっこの始まりだよ。」
恐怖はない。
“どんな時にも揺るがない心を持て”
昔慕った戦士の言葉だ。
メガ・スコルピオは少年の後を追い掛ける。
全力疾走しようとした時、朱色のアーマーを纏う、少年よりも年上だろう少女がいた。
「え!?お姉さんどいてどいてー!?」
名前を知らないために少年は少女をお姉さんと呼び、避難させようとする。
「え!?君、ちょっと待って!!」
「何やってるの!!そんな所でじっとしてると危ないよ!!早く逃げて!!」
「えっと…君、この事件の関係者かな?」
「事件?何言ってるの?」
脈絡のない会話にイライラが募る。
こうしている間にも敵は来るのであった。
測ったようなタイミングでスコルピオが出現した。
「こいつ!!最新型戦闘用メカニロイド、メガ・スコルピオ!!?どうしてこんなのが!?」
「やば…っ、じゃあ僕行くね!!お姉さんも早く逃げるんだよ!!」
「あ、君!!」
可変翼を展開し、空中に。
少女を避難させるためにスコルピオを牽制するつもりだったが、路上の少女に目を凝らすとその必要がないことに気づいた。
「はあああ…!!」
少女は武器をセイバーに可変させ、果敢にスコルピオに斬撃を見舞い、フルチャージショットを浴びせる。
高出力のセイバーとバスターの能力を併せ持つ複合武器を持つ存在は戦いに身を置く者なら誰もが知る所であった。
朱いアーマーと舞うような戦い方から朱き舞姫とも謳われる戦士。
「(あれがイレギュラーハンター・ルイン!!?)」
胸が熱くなった。
ずっと憧れていた戦士が目の前にいる。
彼女を追い掛けて先へ。
行き止まりに着く。
ルイン「えっと…事情を説明してもらえるかな?一体何がなんだか……」
困ったように笑う彼女に少年も思わず笑う。
「分かった。後で必ず話すよ。あいつを倒したら…僕は“アクセル”よろしくね。さあ、やっつけちゃおうよルイン!!」
ルイン「え?あ、うん。よろしくねアクセル」
アクセル「うん!!ルインは腕を壊して、僕が…」
ルイン「尻尾壊すんでしょ?任せて…」
セイバーによる一撃の元、スコルピオの両腕を両断した。
アクセル「まだまだ!!」
バレットを連射すると攻撃の術を奪われ敵は悲鳴を上げた。
ルイン「行くよ!!」
アクセルとシンクロすると同時にセイバーの光を巨大化させ、スコルピオに斬り掛かる。
アクセル「OK!!」
そしてアクセルもルインに続くようにバレットを超連射する。
ルインとアクセルの合体攻撃の前にスコルピオは断末魔の悲鳴を上げて爆散する。
ルイン「今の攻撃…名付けて“コンビネーションアサルト”っとこかな?」
アクセル「いいねそれ!!にしても流石。朱き舞姫の名は伊達じゃないよね。僕が思ってた通りだよ」
ルイン「アクセルだったね?君はこの事件…というか騒動の関係者…なのかな?」
視線を合わせて、優しく問い掛けるルインにアクセルは内心で綺麗な人だなと思いつつ口を開いた。
アクセル「あ~、うん。そうみたい。ルインは自警集団レッドアラートって知ってる?」
ルイン「…ジャパニーズ・ヤクザか何か?」
アクセル「違うよそれ絶対違うよ!!ハンターだけには任せておけないから自分達で倒そうって集団なんだけど……」
ルイン「ああ…あの自警集団ね…最近イレギュラーハンターの代わりに人々を守っている……君はレッドアラートの関係者なの?」
アクセル「そうだよ。元がつくけどね」
ルイン「…?どういうことか分からないけど、アクセル。悪いけどハンターベースまで来てくれないかな?事情聴取したいから…大丈夫、酷いことはしないから」
アクセル「あ、うん…僕もハンターベースに行こうとしてたから…」
ルイン「決まりだね」
ハンターベースに簡単な報告を送信すると、簡易転送装置でハンターベースに転送された。
ルインとアクセルはハンターベースの通路を歩いていた。
アクセルは辺りを見回しながらルインについて来る。
アクセル「そういえばエックスはどうしちゃったの?ルインはエックスと一緒の任務が多いって聞いてたんだけど…」
ルイン「え?あ…すぐに分かるよ」
向かった視線先は見上げる程に高い真っ白の扉であった。
赤文字で“集中治療室”と書かれている。
アクセル「(医務室!?)」
それを見たアクセルが驚く。
ルインが室内の人物と短い言葉を交わすとドアが開いた。
そこから…。
ルイン「エックス…、大丈夫?」
エックス「ああ…大丈夫だ。君がアクセルなのか?」
身体に入った痛々しい傷を負いながらもそれを感じさせない表情でエックスはアクセルに声をかけたが、今のアクセルにはエックスの声は届かなかった。
アクセルが初めて見たエックスは大人びた雰囲気と少年の幼さが同居しており、瞳の色が自分と同じで嬉しかった。
しかし、歴戦のハンターが何故医務室に、という事実がアクセルを現実に引き戻した。
アクセル「エックス…!!何があったの?医務室なんて…何でそんな酷い怪我してるのさ!?」
その問いにエックスは微かに笑う事情を説明する。
エックス「バスターが壊れていたらしくてね…それでイレギュラーから攻撃を受けてこのザマだ」
アクセル「…大丈夫なの?」
エックス「…大丈夫だ。バスターさえ修理すれば今まで通り戦えるはず」
アクセルの口から出た言葉にエックスは大丈夫と答えた。
その声はとても力強く、自信に満ちていた。
ゼロ「おい」
今まで黙っていたゼロが口を開く。
ルイン「何?」
ゼロ「何?じゃない。そいつは今回の騒動の関係者だろう。何者だ?」
ルイン「あ、うん…この子はアクセル。元はレッドアラートの戦士で、最新型の戦闘用メカニロイド、メガ・スコルピオに追われていたの」
ルナ「メガ・スコルピオだって?何でレッドアラートがそんなもんを…」
アクセル「誰?」
エックス「彼女はルナ。つい最近正式にイレギュラーハンターとなった特A級ハンターだ。」
ルナ「よろしくなアクセル」
豪快に笑いながら言うと彼女はアクセルに問う。
ルナ「それにしても追われてるってのはどういうことだ?」
アクセル「…逃げ出して来たんだ。レッドが…レッドアラートが変わっちゃったんだ。昔は悪い奴にしか手を出さなかったのに、今はただの殺し屋集団…もう耐えられなかったんだ。」
悲しみと怒りで拳が震える。
握り締めた親指が痛くて、しかしアクセルはずっと拳を固くしていた。
こんな痛みで根を上げぬ程にアクセルの苦しみは大きかった。
その時、モニタがザッと音を出し、全員がモニタに視線を向ける。
エックス「何が起こった!?」
エイリア『発信源不明の通信よ。画像全モニタに出力するわ』
即座にエイリアから通信が入ると、砂嵐の画面に画像が映し出された。
右目に深い傷が走り、精悍で堂々とした戦士。
その男の名は誰もが知る所。
ルナ「レッドアラートのリーダー…」
アクセル「レッド!!」
忘れるはずがない。
兄とも父とも慕った戦士である。
彼は堂々とハンター達に宣告する。
レッド『聞こえているかハンター共、俺はレッド。ご存知の通り、レッドアラートのリーダーだ。わざわざ表に出て来たのは他でもない。逃げ出しやがった俺達の仲間が、事もあろうにお前らの所に転がり込みやがった。そう、そこにいるアクセルだ』
レッドはアクセルをぞっとする目で見て、少年の心中を見出だそうとした。
アクセルは毅と見据える。
アクセル「レッド、僕は帰らないよ。レッドとレッドアラートが変わった今、もう僕の居場所はない。僕は僕の心に従ってここに来たんだ。絶対に戻らない!!」
迷いなき眼で言い放った。
心は既に決まっている。
レッド『そうか。帰らない、か…ならばハンター対決ってのはどうだ?真のイレギュラーハンターを決めてみないか?最後まで生き残った方が勝ちだ。悪いがこっちは、今まで捕まえてきたイレギュラーを仲間として使わせてもらうぜ、文句は無しだ。俺達が負けたら、アクセルはお前らにくれてやる。当然だが、俺達が勝てば…』
エックス「ふざけるな!!彼の意思を無視した挙げ句、そんな理由で戦いを引き起こすつもりか!!?」
怒りの表情と共に全身から吹き荒れる闘気にアクセルは密かに戦慄する。
レッド『そんな理由か…』
彼は遠い目でぼそりと言う。
普段の彼をよく知るアクセルは普段とは違う彼に目を丸くした。
レッド『俺にとっちゃ、大事なことなんだがな…』
ゼロ「…?」
アクセルにはレッドの真意が分からない。
何故このような戦いを挑んだのか。
何故レッドアラートが変わってしまったのか。
レッド『とにかく、アクセルは意地でも取り返す…絶対にな!!』
レッドは一同を見遣ると、笑って通信を切った。
エイリア『早速動き出したようね。各地でイレギュラー発生!被害の出たエリアを調べてみるわ。』
即座にモニターに世界地図が映し出された。
被災地が赤くポイントされている。
アクセル「ごめん、僕のせいで…」
ゼロ「面倒なことになったな。ハンターも人手不足でまともに機能していない。奴らを止められる実力者も少ない…」
ルナ「だな、さて…どうするかねえ…」
アクセル「(人手不足!!)」
彼の頭に名案が閃く。
アクセル「そうだ、僕をイレギュラーハンターにしてよ!!ルインとのコンビネーションもバッチリだし、なんと言ってもレッドアラートのことなら任せてよ!!」
エックス「ルインとのコンビネーション?」
ゼロ「どういうことだ?」
ルイン「ああ、そういえば言ってなかったね。メガ・スコルピオは私とアクセルの2人掛かりで倒したんだ」
ルナ「へえ、ルインと2人掛かりとはいえよく倒せたな。特A級ハンターでも苦戦は免れないのに」
ルイン「うん、部隊制があった頃なら17部隊入りは確実だね」
第17番精鋭部隊は、このエックス、ゼロ、ルインが以前所属していた部隊だ。
読んで字の如く、腕利き揃いだった。
エックスは隊長を勤めた時期もある。
余談だが、ゼロは17を抜けた後、第0特殊部隊、通称忍び部隊の隊長になっていた。
ハンターの激減で部隊制が解体された今となっては、3人共“元”がつくが。
エックス「………」
エックスはアクセルを見定めるように見ると口を開いた。
エックス「そう、だな…彼はとてもいい目をしている。」
アクセル「エックス…!!」
エックス「だが、アクセル。ハンターというのは簡単に務まるような仕事じゃない。非常時にも最善の判断が出来る冷静さと敵に屈しない強さ。そして命をかけて人々を守る心が無ければ務まらない。君にそれがあるか?」
鋭い視線で言うエックスにアクセルも強い視線で返す。
アクセル「分からないよ…でも、僕はエックス達に憧れてここまで来たんだ。僕の罪滅ぼしのためにもイレギュラーハンターになりたいんだ!!」
アクセルの言葉に彼の強さを見出だしたエックスは溜め息を1つすると苦笑を見せた。
エックス「覚悟はあるか…分かった。シグナスに掛け合ってみる。ただし今はイレギュラーハンターにしようにも試験を受けさせる暇がないから保留の形にして民間協力者という立場になるけど、構わないな?」
アクセル「勿論!!エックスはバスターが直るまでゆっくり寝てていいよ!!」
無邪気に喜ぶ、アクセルにルインは苦笑しながらもエックスに歩み寄る。
ルイン「エックス…今は私達に任せてゆっくり休んで…今の君に必要なのは休養なんだから……」
エックス「…分かっているよルイン。君も気をつけてな」
ルイン「うん…」
ゼロ「…そろそろ行くぞ」
ルナ「はいはい。イチャイチャしてるバカップルは放って行こうぜ」
アクセル「え?え?エックスとルインって恋人同士って奴なの?」
ルナ「そうだぜ?周りを憚らずイチャイチャして甘ったるいオーラを撒き散らす。ある意味シグマウィルスやナイトメアウィルスよりも遥かに厄介なレプリロイド破壊砂糖製造機だ。耐性がないハンター達が何人も犠牲になっている。ブラックコーヒーは必需品だぜ…」
ゼロ「それからあいつはエイリアとも恋仲だ。ハンターベースの危険地帯は指令室とエックスの部屋だということを覚えておけ、耐性がつかないうちに近寄ると胸焼けを起こすか砂糖を吐くことになるぞ」
アクセル「うわあ、エックスって大人なんだね」
尊敬の視線をエックスに向けるアクセル。
ルナ「さあ、行こうぜ。お喋りの時間はここまでだ」
格納庫に向かうとダグラスがライドチェイサーを用意して待っていた。
ダグラス「来たか。準備は万端だ。いつでも行けるぞ」
ゼロ「分かった。俺はルインと共に行く。お前はルナと共に行け、ダグラス。こいつにもライドチェイサーを支給してやってくれ。俺達と同じタイプの奴だ」
ダグラス「分かった。待っていろ」
ダグラスがライドチェイサーをもう1台出しに向かう。
ゼロ「俺がしてやれるのはここまでだ。後はお前が何とかしろ…あいつはたった1人で戦いを潜り抜けてきた頃もあった。あいつに憧れるなら昔のあいつがやれたことくらいやってみせろ」
アクセル「…上等だよ。この戦いが終わったら僕がイレギュラーハンターになるのを認めてよ!!」
不敵な笑みを浮かべると漆黒のカラーのライドチェイサーに跨がり、ルナの紺色のライドチェイサーと共にミッションに向かう。
後書き
アクセルSide終了。
次回はエックスSide
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