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小さいのは嫌いじゃない

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第一章


第一章

                     小さいのは嫌いじゃない
 南城幸恵は小さい。その背は一四五もない。
 高校ではダントツで小さい。あまりに小さくて全校集会で欠席にされそうになったり入学式で本当に小学生と間違えられたりしてきた。当然そのことにコンプレックスを抱いている。
 そんな彼女だが髪は長く伸ばし膝まである。しかもまだ伸ばしている。大きな丸い目に眼鏡をしている。顔立ちも童顔だがその髪の毛がとにかく目立っている。
 その彼女にだ。クラスメイトの柊大樹が問うのだった。黒髪のはっきりとした目の少年で背はかなり高い。特撮俳優の中に掃いてもまだ高い、そんな高さである。
 その彼がだ。幸恵に問うのである。
「何で髪の毛伸ばしてるの?」
「だって。私背が低いじゃない」
 その大樹、殆ど一九〇ある彼を見上げての言葉だ。本当に首が直角になってしまっている。そこまで見上げて話をしている幸恵だった。
「だからね。こうして伸ばして」
「髪の毛を伸ばしたら背が伸びるとかいうのかな」
「そうよ。頭が引っ張られてね」
 それでだというのだ。
「背もって。どうかな」
「それ関係ないと思うよ」
 大樹もまた首を直角にしている。ただし彼の場合は見下ろしている。そのうえで自分の真下にいる幸恵と話をしているのである。
 
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