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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第79話 六式聖剣術

 
前書き
アルミヤさんが禁手化(バランス・ブレイク)して無双します。 

 
「……あれ、お前死んだんじゃなかったのか?」
「ご覧の通り、生きているが」
ドレイクの苦笑混じりの問いにアルミヤさんは何事も無かったかの様な顔で答えた。
「やはり、生きていましたか」
「やはり?おい、ゾンビメガネ、お前こいつは死んだって言ってなかったか?」
「ええ、そう言いました。ですが、少々腑に落ちなかったもので、生きているのではないかと疑問に思いましてね。一応、考え過ぎかと思いまして、先程はああ言いました。結果、生きていた訳ですが」
カリスはドレイクの問いに淡々と答えた。
「ちなみにどのような方法で?」
「ふ、すでにあらかた把握しているのではないのかね?」
「一応です」
「単純な事だ。爆煙に紛れて擬態能力を持つ聖剣と入れ替わっただけの事だ。もっとも、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)と比べるまでもない程の粗悪な聖剣だったので並の手練れならすぐに違和感を覚えるのだが…」
「……いろいろと強化されているとは言え、所詮は死人、そのような違和感に気付くはずもありませんか。うん、大方予想通りですね」
「ならば聞く必要性は無かったのではないのかね?」
「いえいえ、他人の証言も重要ですからね」
「つくづく君は厄介な男だと思うよ私は」
アルミヤさんとカリスはお互いに笑みを混ぜた応対を繰り返す。
「ところでお前、生きてたんだったら何でこんなに来るのおせえんだ?」
ドレイクが笑み混じりに問う。
「少々手傷を負ってしまったのでね、その回復とあの巨人の対策を練るのに随分と時間が掛かってしまったのだよ」
「ふ~ん。んで、回復はともかく、対策は役に立つのか?見ての通り、現時点じゃ六体もいるぜ。もし一体分の対策しかしてねえのなら徒労に終わってるぜ」
「フッ、それなら問題は無い」
「ヘッ、そうかよ」
「さて、遅刻した分は取り戻さねばなるまい。ここから先は私が引き受けよう。君はそのボロボロの体をアーシア・アルジェントに治してもらうといい」
「ほ~、随分な自信だな?策はありってか?」
「好きに取りたまえ」
「んじゃ、お言葉に甘えさせてもらうぜ♪」
ドレイクはそう言うなり、緋色のオーラの翼を羽ばたかせ、俺達の下まで飛んできた。
「お、ちょうど起きたみたいだな。後は自分で頑張りな…………ガフッ…!…ぐっ……」
「っ!?明日夏なのか!」
「……ああ…」
どうやら、人格が明日夏の物に戻ったようだ。
「……クソっ…あの野郎…!……人の体を酷使しやがって…!」
「大丈夫かよ!?」
「……とりあえずな。それよりも…」
明日夏は視線をアルミヤさんの方に向ける。
アルミヤさんは両手に剣を持って、大男達を見据えていた。
すると、木場とゼノヴィアがアルミヤさんの隣に 降り立った。
「……アルさん、こいつらはあの動く死体達やフリード・セルゼンと違って強敵だ」
「無論、把握している」
「……さっきの様子から察するに、何か策があるんですか?」
「策と言える程上等な物ではないがね」
「私達にできることは?」
「ふむ、ならば君達は下がっていたまえ」
『なっ!?』
アルミヤさんの提案に二人とも絶句していた。
無論、俺達も同様に唖然としてしまっていた。
「何を言ってるんだアルさん!?」
「あの巨人達の強さは…」
「把握していると言ったはずだが」
『……………』
「なに、一人の方が御し易いと言う話なだけだ」
「……任せても大丈夫なんですか?」
「期待してもらって構わんよ。君達はコカビエルに備えて力を温存しておきたまえ。あれはそこの巨人共とは比べ物にならん程の存在なのだからね」
『…………』
二人は渋々と俺達の下まで下がってきた。
「……大丈夫なのかよあの人…」
「……あの様子だ、何かあるんだろう。一応、ここにいるメンツの中じゃあ、一番の実力の持ち主だしな…」
「えぇ!?そうなのか!?」
「……実力を測る目には自信ある方だ…」
それってつまり、部長よりも強いってこと事かよ!?
俺は唖然としながらも、アルミヤさんの方を見る。
「う~ん、一体ならまだしも、六体を相手に戦えるのですか?」
カリスが顎に手をやり、首を傾げながら聞いた。
「フッ、遠慮無く来てくれて構わない…ただし…」
「?」
「……全部倒される事を覚悟はしておけ」
「それは少し困りますが、ま、できるのならやってみてください」
「フッ…なら…遠慮無くやらせてもらう!」
アルミヤさんは一度フッと笑うと、笑みを消し、眼光を鋭くした。
『グゥオォォォォォッ!!!!!!』
それと同時に大男達が一斉にアルミヤさんに襲い掛かる。
「フッ!」
「っ!」
「速い!」
明日夏と木場が驚嘆しだした。
アルミヤさんは一気に駆け出し、そのままの勢いで大男達の武器の猛攻を掻い潜りながら、すれ違い様に大男二体の首を斬りつけていた!
斬られた首は無傷だったけど、スゲェ…。
俺は思わず明日夏や木場に質問しだしていた。
「なあ明日夏、木場、お前らあんな事できるか?」
「……いや無理だ」
「……まず、あの猛攻の中に突っ込もうなんて普通は考えないよ」
あっさりとできないと即答してしまった。
つまり、二人にとってはそれほどスゴい事をあの人はやってのけたって事になる。
だけど、ダメージが無いんじゃ…。
ブシュ!
『っ!?』
斬られた大男の首から血が微量だけど吹き出た!
「……僅かだけど、斬られてたみたいだね…」
だけど、すぐに治ったのか、血が出なくなっていた。
「……………」
「明日夏?」
明日夏が難しい顔をして、大男ではなくカリスの方を見ていた。
「……野郎、急に様子が変わった…?」
「え?」
「さっきまであった余裕が急に消えたんだ」
「それって、さっきのアルミヤさんの動きに驚いたからじゃ…」
「いや、その後…首から血が吹き出た瞬間にだ…」
え、それって、どう言う事だ?
あの大男達は傷を負ってもすぐに治っちまうはずだから、血がちょっと出るくらい大した事なんて無いはずなのに。
俺達は疑問を抱きながらも、アルミヤさんと大男達の戦いを見る。
「………」
アルミヤさんは無言で再び両手の剣を静かに構える。
それから大分時間が経過した。
大男達は嵐の様な激しい攻撃を繰り出すが、アルミヤさんはその全てを回避し、その合間を縫って大男達を斬り付けていった。
斬り付ける度に斬り傷が徐々に大きくなっていてはいたが、大男達が持つ再生力であっという間に塞がってしまっていた。
パキン!
……まただ。
アルミヤさんが持つ聖剣が刃こぼれしてしまった。
大男達の皮膚が異様に硬いのか、ああやって刃こぼれする事が多々あった。
たまに斬り付けた時に砕ける事もあった。
「ふん、それで何回目であろうな?」
バルパーが嫌らしい笑みを浮かべていた。
「聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)。作られる聖剣はエクスカリバー等に比べれば大いに見劣りはするが、担い手次第では強力な聖剣を作れるのだが、貴殿が未熟な為かできは大した事はない様だ」
バルパーはアルミヤさんを見下した目で見ながら言う。
「……………。……フッ…」
アルミヤさんはバルパーの言葉に耳を貸さず、刃こぼれした剣を長々と見つめた後、瞑目しながらフッと笑い、刃こぼれしていない方の剣共々刃こぼれした剣を投げ捨ててしまった。
「……諦めたのですか?」
「いやなに…準備運動を終わらせただけの事だ」
そう言い、目を開いた瞬間…。
『ッ!?』
アルミヤさんから凄まじい重圧と気配が発せられた!?
「……なるほど…すでに至っていましたか」
至っていた…まさか!
アルミヤさんは再び瞑目した後、静かに口を開いた。
「………禁手化(バランス・ブレイク)…!……」
その単語を口にした瞬間、アルミヤさんから濃密な聖なる波動が静かに発せられた!
いつの間にかアルミヤさんは両手に剣が握られていた。
でも、正直言って、今までの聖剣と大して変化が見られなかった。
「……聖剣には特にこれと言った変化は見られませんね……ですが、貴方の神器(セイクリッド・ギア)は何かが変わりましたね…」
「フッ、せいぜい悩め。その間に……君の自信作とやらはやらせてもらう!」
そう言うと同時にアルミヤさんは駆け出した。
『グォアァァァァッ!!!!』
大男達もアルミヤさんを迎え撃とうとするが、アルミヤさんは大男達の猛攻を意図も容易くかわし…。
ズバァ!
一体の大男の腕を斬り飛ばしてしまった!
「ハァッ!」
ズバババッ!
さらに他の三体の大男の腕、脚、首をすれ違い様に切り裂いてしまう。
バキャァン!
だけど、それと同時に持っている剣が砕け散ってしまった。
『ゴォアァァァァッ!!!!』
無傷の大男二体が背後からアルミヤさんに襲い掛かる!?
ヒュッ。
ザシュ!
『ゴアッ!?』
が、アルミヤさんは背を向けたまま、またもやいつの間にか持っていた二本の剣を投げ付け、二本の剣はそれぞれの大男の片目に突き刺ささり、大男は怯んでしまう。
その隙にアルミヤさんは高々と見事なバク宙で大男の背後に回り…。
「ハァ!」
ズバァ!
そのまま、既に再び握られていた剣でそれぞれの首を深々と切り裂いた。
『グォアァァァァッ!!!!』
斬られながらも、まだ動ける大男二体がアルミヤさんに追撃しようとする。
「……単純なものだ」
そう呟くアルミヤさんの両手にはそれぞれ三本づつの剣が握られており…。
ドス!ドス!ドス!
『グォアッ!?』
それを先程と同じ様に投げ付け、全て手足に命中し、大男は動きを止める。
「ハァァァァ…」
アルミヤさんは振り返ると同時に駆け出し…。
「フッ!!」
ズバァァァッ!
先程の二体同様、首を切り裂いた。
一体だけでも明日夏達があれ程苦戦を強いられていた大男六体がたった一人の男に手も足も出ずに斬り伏せられていた。
ピシッ。ピシピシ。パキッ。
また剣に亀裂が走り、刃こぼれを起こしてしまったが、アルミヤさんは特に気にした様子も無く、刃こぼれした剣を投げ捨て、大男達の方を見る。
その手には既に別の剣が握られていた。
大男達は何体かは既に傷が再生しており、動ける様になっていた。
「バルパーさん」
カリスが唐突にバルパーを呼ぶ。
「少し聞きたい事があるのですが…」
「な、何だ?」
「聖剣を扱うには特殊な因子が必要…つまり聖剣使いには必ずその因子を持っていると言う事ですよね」
「そうだが、それがどうした?」
「そして、因子を刀身に込める事で聖剣の力を強める事ができる…」
「だから、それがどうした事だと言うのだ!」
カリスの要領を得ない尋ね方にバルパーはイラついていた。
「では…その因子が聖剣の負担になる事はあるのですか?」
「……何…?」
「ですから、因子を刀身に込める行為が聖剣の負担になるのかと聞いているのですよ?」
「バカな!ありえん!因子はあくまで聖剣を扱う為に必要な要素であり、聖剣の力を強める要素は所詮は副産物で微々たる物だ。それが聖剣を破壊するなどありえん!フン、その男が作った聖剣が頻繁に破損するのは、その男の作る聖剣が脆弱で戦闘に耐えられていないだけだ。貴様も聖剣の事をよくも知らぬくせにありもしない事で聖剣を語るな!」
バルパーはカリスの仮説を怒気を孕ませながら否定した。
カリスはバルパーの怒声を聞いても飄々とし…。
「では、彼は例外な存在と言う訳ですか」
と、口にした。
「な、なんだと!?」
驚くバルパーに目もくれず…。
「ですよね…アルミヤ・A・エトリアさん?」
アルミヤさんを見据えて言う。
「……フルネームを名乗った覚えは無い筈だが?」
「それはアンドセルさんから聞きました」
「なるほど」
カリスの答えにアルミヤさんは肩を竦めた。
「カリス!?例外とはどう言う事だ!」
バルパーが捲し立てる。
「先程貴方が否定した事そのままですよ。彼の因子は聖剣に多大な強化をすると同時に多大な負担を与える物だと言う事です」
「ですよね?」と問い掛ける様にカリスはアルミヤさんに視線を向けた。
「ふぅ…なるべく勘づかれないように努めたつもりなのだが…」
アルミヤさんは肩を竦めながら、溜め息を吐いた。
「……君の目は誤魔化せなかった様だ…」
アルミヤさんの言葉にカリスは首を振って否定した。
「いえいえ。せいぜい疑問を持った程度で、今の今まで全く理解していませんでしたよ。そして、先程まで研究者らしく頭の中で試行錯誤した結果、今ようやく確信に至ったのですよ。ですから、貴方の努力は無駄ではないと思いますよ?」
「フッ…疑問を持たれた時点で徒労だと思うがね」
さっきから二人の会話の内容が何が何だかさっぱりだ。
アルミヤさんの因子がなんだってんだ?
「疑問に思ってる方が沢山いますから、説明したらどうですか?」
カリスがアルミヤさんに説明を促す。
「ふぅ…」
アルミヤさんは再び溜め息を吐き、口を開き、俺達はその言葉に耳を傾ける。
「まず、私はゼノヴィア同様、天然の因子の所有者だ」
それはなんとなく察していた。
「ただ、私の持つ因子は普通ではなくてね。噛み砕いて言ってしまえば、どうにも攻撃的なのだよ。故に刀身に込めた時の力の上昇は通常より高い…だが…」
「それと同時に聖剣に多大な負担を掛けると言う訳か」
アルミヤさんとゼノヴィアの言った事を聞いて、なんとか納得した。
つまり、アルミヤさんの持つ因子は聖剣をとてつもなく強くする事ができるけど、それと同時に聖剣に負担を掛けると言う事。
今まで剣が刃こぼれしたり、砕けたりしたのは負担で剣に限界が来た為に起こった事と言う訳か。
でも、その攻撃力はあの大男の頑強な皮膚を容易に切り裂く事ができる程だ。
つまり、アルミヤさんは聖剣を犠牲にする事で圧倒的な攻撃力を得ていたのだ。
「なるほど。最初のやり取りは込める因子の調節が目的だった訳か」
「どう言う意味だ明日夏?」
「おそらく込める因子を調節する事で切れ味と負担を調整できるんだ。切れ味が高ければ高い程負担もでかくなり、剣が脆くなる。だからこそ、無駄な切れ味を落とす事で剣を長持ちさせる為に最初のやり取りで少しずつ因子を込めながら調節していったんだ」
「無駄な切れ味って?」
「例えばだよイッセー君。50込めた剣で確実に相手を斬れるのならわざわざ60、70って込める必要はないよね」
なるほど、込める程剣が脆くなる訳だから、余分に込めない様にしてるって訳か。
「そしてたぶん、あの人の禁手(バランス・ブレイカー)は…」
「その攻撃的な因子を最大限に活かす為の能力を持った物だろう」
木場と明日夏の言葉にアルミヤさんはフッと笑う。
「剣聖の六式聖剣術(カルミネーション・セクスタプル・ブレイドワークス)、それが私の禁手(バランス・ブレイカー)の名だ」
「六式…つまり、聖剣に突出した六つの能力を持つ禁手(バランス・ブレイカー)と言う事ですか」
「一つ目の能力名は剣製(アイン)、これは元の聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)の能力とそう変わらない。違いがあるとしたら、作られる聖剣の質が高いと言う点ぐらいな物だ。そして二つ目、貯蔵(ツヴァイ)、先程から使用している能力だ。なに、能力は単純な物だ。ただ、作った聖剣を保存し、いつでも使える様にするだけだ。だが、これは私の戦闘方と相性が良くてね。既に存在する聖剣を使用する為、聖剣の精製の際の手間も負担も全く無く、取り出す際のタイムラグも無いに等しいのでね」
「なるほど、確かにそれは相性が良いですね。貴方の戦闘方の穴を完全に埋めていますから」
カリスは途端に思案顔になる。
「さて、困りましたね。貴方のその卓越した剣技と戦闘方と禁手(バランス・ブレイカー)の能力は三位一体の如く見事にマッチして、戦闘力は相当な物になっている。そんな貴方に彼らは手も足も出ず、未知の能力がまだ四つも控えていると来ましたか」
カリスはう~んっと時間を掛けて唸り…。
「うん、後処理が面倒ですが…ま、良いですか」
そう言い、指を鳴らす。
『グォォォォォッオオオオオッアアァァアアアッ!!!!!!!!』
突然、大男達の足下に魔方陣が出現したかと思ったら、大男達が今までに無い程の雄叫びを上げ出した!?
「なっ、なんだっ!?」
思わず耳を塞ぐ。
正直、鼓膜が破れるんじゃないかって程だ!
「……これはっ…!」
『っ!?』
雄叫びを上げている大男達の身体が隆起しだし、手足が太くなり、さらに一回りでかくなってしまった!?
「制限(リミッター)を外しました」
カリスが淡々と告げる。
リミッターって!?
「さらに強くなるってのかよ!?」
「正確には本来の性能(スペック)に戻るって言いますね」
「……つまり、意図的に性能を落としていたと言う事か?」
「ええ。そうでもしないと私の言う事を聞いてくれませんし、とことん暴れて、挙げ句の果てに相手を原型を留めない程になるまで徹底的に叩き潰してしまいますからね。なるべく原型を留めた遺体や言う事を聞いてくれる存在を要求する私としては性能を落とせざる得ません。ですが、貴方相手に贅沢は言えません。やってみてくださいとは言いましたが、全滅は避けたいですからね」
そう言うと同時に大男達が一斉にアルミヤさんに襲い掛かろうとしていた!
もうただ暴れようとしているだけなのか、他の大男を押し退けながらでたらめに得物を振るっていた。
「ちっ…」
アルミヤさんは破壊そのものと言える猛攻をなんとか掻い潜っていた。
だが、大男達の攻撃が他の大男に当たろうが構わないと言った猛攻に次第に回避が危うくなってきていた。
「ッ!?」
危うく当たりそうになった攻撃を無理矢理身体を倒してかわし、そのまま転がり、転がりながら立ちながら勢いそのままバック転、バック宙を数回繰り返し、大男達から大分距離を取った。
「……なるほど…まさしく、狂戦士(バーサーカー)だな…」
アルミヤさんは持っていた剣を捨て…。
「……出し惜しみしている余裕は無いか」
そう言い、瞑目した。
たぶん、まだ使っていない禁手(バランス・ブレイカー)の能力を使うんだろう。
必要以上に距離を取ったのも、大男達からの妨害を避ける為だろう。
「投影(ドライ)、開始(オン)」
アルミヤさんが呪文らしき物を詠唱し始めた。
一方で大男達がアルミヤさんに迫っていた。
「骨子想定(ファーストプロセス)、完了(クリア)。外装想定(セカンドプロセス)、完了(クリア)。能力想定(サードプロセス)、完了(クリア)。強度想定(フォースプロセス)、完了(クリア)。重量想定(フィフスプロセス)、完了(クリア)」
大男達が迫り来る中でもアルミヤさんは落ち着いて詠唱を続ける。
「想定(プロセス)、統合(インテグレート)。工程(イメージング)、完了(コンプリート)」
そしてついに大男達がアルミヤさんの眼前に迫り、その矛が振り下ろされようとしていた!?
「複製(トレース)、開始(オン)」
ドゴォォォォォン!
『っ!?』
とうとう、アルミヤさんは何の抵抗もできないまま大男達に得物を振り下ろされてしまった!?
「何をするつもりかは分かりませんでしたが、時間が掛かり過ぎて間に合いませんでしたか。気になる所でしたが、彼らには関係ありま…?」
な、なんだ、大男達が急にキョロキョロしだしたぞ?
ズバババババァ!
「フッ、問題無く、間に合ったよ」
大男達の身体のあっちこっちが切り裂かれ、大男達の背後にアルミヤさんが現れた!?
「バッ、バカな!?な、何故!?あり得ん!!」
バルパーが木場の聖魔剣を見た時と同等の驚きようでアルミヤさんを見ていた。
いや、正確には、見ていたのはアルミヤさんではなく、アルミヤさんが手に持つ二本の剣だった。
無理も無いだろう。
俺達でさえ驚いているんだから。
だって、アルミヤさんが持っている剣は…。
「投影(ドライ)、完了(クリア)。投影聖剣(トレース・ブレイド)、破壊(デストラクション)、天閃(ラピッドリィ)」
七種類で一本ずつしか無い筈のエクスカリバーの内の二本を持っていたのだから。


戦場が驚愕で包まれた。
無理も無い。
アルミヤさんが持っているのは見間違い無く、破壊と天閃の二本のエクスカリバーだからだ。
そして、あの人の事だ、見た目だけ何て言う無駄な事はしない。
おそらく、能力までも同じなのだろう。
さっきのも天閃のエクスカリバーの力による高速移動だろう。
だが、破壊のエクスカリバーは今もゼノヴィアが所持しているし、天閃のエクスカリバーはバルパーによって他の三本のエクスカリバーと統合され、その剣は木場が叩き折った。
だから、破壊と天閃のエクスカリバー二本をあの人が持ち得ている事など無い筈なのである。
だが、実際にアルミヤさんの手にはその二本が握られている。
考えられるとすると、あの人が呟いていた詠唱から察するに…。
「……エクスカリバーを複製したのですか?」
カリスが俺の内心を代弁した。
「第三の能力、投影(ドライ)、現存する聖剣の複製能力だ」
「あり得ん!?あり得ない!!いかに聖剣を作り出す神器(セイクリッド・ギア)の禁手(バランス・ブレイカー)と言えど、伝承に残るほどの聖剣を無(ゼロ)から複製するなど!?」
バルパーはあり得ない物を見るかの様に慌てふためいていた。
「フッ、禁手(バランス・ブレイカー)とはその名の通り、禁じられし忌々しい外法と呼ばれる他、世界の均衡を崩す力と言う意味でも呼ばれる物だ。貴様も言っていただろう。聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)は使い手によっては無類の力を発揮すると。なら使い手によってはその禁手(バランス・ブレイカー)も化けるだろう。木場裕斗の聖魔剣に比べれば充分可能な事だと思うがね」
確かに木場の聖魔剣は本来なら交わる事が無い聖と魔の融合と言う規格外な物だ。
それに比べれば確かに他愛無いかもしれないが、充分規格外だと思う。
「だが、どんな物だろうと複製品はオリジナルより価値が下がるものだ。これも例外ではない」
と言う事は複製は可能だが、その性能はオリジナルより劣る訳か。
だが、そんな差は使い手の技量で充分埋められる程度じゃないのか?
現にオリジナルを持っていたフリードと同等、それ以上の速度で巨人達を切り裂いていた。
ましてやあの人は多大な負担を掛ける代わりに多大な性能向上を促す因子の所有者だ。
総合的には優にフリードを上まっているだろう。
「……バランス?待てよ…」
突然、バルパーが思案しだした。
何かを察したのか?
「さて、いい加減けりを着けるとするか」
アルミヤさんは巨人達と対峙する。
斬り付けられた巨人達は既に斬り傷が消えていた。
『グォアアァァァアアアッ!!!!!!』
巨人達が己のが矛でアルミヤさんを攻め立てるが、神速の速度を得たアルミヤさんには掠りもせず、ただアルミヤさんに為す術も無く切り裂かれていった。
負った傷はすぐに塞がってしまうが、徐々にだが、治りが遅くなっていた!
カリス自身が言っていた、回復の制限が迫っているのだろう。
このまま行けば、アルミヤさんの勝利は揺るがない物になるだろう。
だが、その考えは甘かった…。
『グォオオォォオオオッ!!!!』
ドゴォォォォォン!
『っ!?』
もう二体だと!?
突如二体の同型の巨人が頭上からアルミヤさんを襲った。
俺達はカリスの方を向く。
カリスは醜悪な笑みを浮かべ…。
「念を入れておいて良かったです」
と、ほざいた!
迂闊だった!
何で奴の言葉をそのまま鵜呑みしてしまったんだ!?
そんな後悔に駆られる中…。
「やはりまだ温存していたか」
『っ!?』
カリスも含め、再び驚愕に襲われた俺達は慌てて声の発生源を見る。
そこには煙の様になって揺らいで不敵な笑みを浮かべているアルミヤさんがいた。
あれは!
「幻影!?夢幻のエクスカリバーの力だと!?」
カリスが今までに無い程の狼狽しだしていた。
そこには演技の欠片も無い、正真正銘の焦りだった。
アルミヤさんは最初からカリスの奴が巨人を温存していた事を想定していたのだ。
だから罠を張っていた。
幻影の自分を不意討ちさせる事で温存されている巨人を引っ張り出したのだ。
幻影のアルミヤさんが消え、本来のアルミヤさんが出現した。
その手にあった破壊のエクスカリバーが別の物になっていた。
あれが夢幻のエクスカリバー。
アルミヤさんは破壊のエクスカリバーと偽って夢幻のエクスカリバーを作り出していた。
ご丁寧に幻覚で破壊のエクスカリバーに擬装して。
そして、戦いながら罠用の幻影と自分を誰にも悟らせない様に入れ替えた。
アルミヤさんは天閃の力でその場から一気に離れ、距離を取った。
それと同時に二本のエクスカリバーが砕け散った。
因子による負担が限界に達したのだろう。
「掃射(フィーア)、開始(スタンバイ)」
複製エクスカリバーが砕け散る事は把握していたのか、アルミヤさんは新たな言霊を口にする。
「聖剣(ブレイド)、装填(セット)」
アルミヤさんの背後に無数の剣が展開された!?
「停止(フリーズ)、解除(キャンセル)。装填聖剣(ブレット)、一斉掃射(フルバースト)!」
無数の剣が一斉に撃ち出され、八体の巨人達に雨の様に放り注いだ。
巨人達は無数の剣に串刺しにされ、行動不能に陥っていた。
それでも傷が塞がろうとしていた為、すぐにでも動き出すだろう。
「投影(ドライ)、開始(オン)。複製(トレース)、開始(オン)。投影(ドライ)、完了(クリア)。破壊(デストラクション)」
アルミヤさんは新たに今度こそ本当の破壊のエクスカリバーを複製した。
そしてアルミヤさんは別の言霊を呟く。
「射出(ヒュンフ)、開始(スタンバイ)」
アルミヤさんの手に黒塗りの弓が出現した。
弓?まさか!
「This sword is an arrow(我が剣は災厄へと飛翔する)」
詠唱した瞬間、複製エクスカリバーが収束し、一筋の光となり、アルミヤさんは弓に光をつがえる。
つがえられた光は一層と輝きが増した。
「剣よ(セット)、翔べ(シュート)!」
矢として撃ち出された光は剣に戻り、巨人達へと飛翔する。
カッ!
ドゴォォォォォン!
巨人達へと飛来した剣が光の爆発と化し、巨人達を包み込んだ!
「ぐっ…」
あまりの光量に思わず目を瞑ってしまう!?
光が止み、目を見開くと、巨人達は跡形も無く消し飛んでおり、その場所には巨大なクレーターが出来上がっていた。
「ふぅ…」
アルミヤさんは弓を消し、一息ついた。
「さて、まだいるかね」
アルミヤさんは片目だけ開き、カリスに嫌な笑みを向ける。
「……っ…」
カリスは癪に触ったのか、その表情は憤怒で歪んでいた。
「フッ、良い表情を表情をする様になったな」
アルミヤさんは周りから見れば良い、向けられた相手から見れば屈辱的な笑顔で言う。
あの人…良い性格してるぜ……同感だけどな。 
 

 
後書き
次回は原作通り、明日夏達オリキャラを交えてのコカビエル戦です。 
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